ハンバーガーと無線LAN

モスフードサービスとNTTコミュニケーションズが店舗での無線LANの実験サービス「HI-FIBE」を開始して一週間。トラブルもなく順調な滑り出しにみえるが,モニターの利用状況も気になるところだ。果たして,ハンバーガーと無線LANの食べ合わせは如何に? モスバーガー門前仲町店からレポート。

【国内記事】 2001年7月12日更新

 いきなり私事で恐縮だが,ハンバーガーにはトマトとレタスが必須だと思っている。パテとパンズが美味しいのは当然として,その濃厚さだけでは真のハンバーガーとはいえない。肉の脂を中和してくれる野菜の存在があって,はじめて旨味が増すというものだ。こんなこだわりがあるので,お気に入りはモスバーガーの「フレッシュバーガー」であった。

 そのモスが,NTTコミュニケーションズと手を組み,店内で無線LANを利用するための実験サービス「HI-FIBE」を開始した。店内に無線基地局を設置し,IEEE 802.11b準拠の無線LANカードを使えば,誰でもインターネットに接続できるというものだ。食事をしながらメールやWebを利用できる環境は,外食の機会が多い人にとっては非常にありがたいもの。残念ながら,既に第1回のモニター募集は終わってしまったが,取材という名目で,モスバーガー門前仲町店にお邪魔した。サービス開始から約1週間が経ち,お客の動向も見えてきた頃だ。モスフードサービス管理本部情報システムグループの永井正彦リーダーと,NTTコミュニケーションズ経営企画部の加納貴司課長代理に話を聞いた。

門前仲町店は2階建て。1階が喫煙可,2階は禁煙と分けられているのが有り難い。無線LANの基地局は,厨房や事務室内に設置し,お客の目に触れないように配慮している

 まず,HI-FIBEの概要を説明しておこう。モスフードの「IT化推進店舗」実験は,都内にある7つの店舗で行われている。ただし,このうち川越山田店と国分寺南口店は50インチPDP(プラズマディスプレイ)のみの設置で,無線LANサービスを提供しているのは,神田北口店,銀座6丁目店,門前仲町店,茅場町店,渋谷道玄坂店の5店舗。Webサイトで募集した1000人のモニターは,対象店舗に自分のPCを持ち込んで無料でインターネット接続を利用できる。

2階には,静岡パイオニアの50インチPDPも設置。ゲームや環境映像などのコンテンツに加え,メニューを選択すると値段やカロリーを表示する機能も持つ。「待合い席に設置すれば,お客を退屈させないですむ」(永井氏)。また,横にプリンタを設置し,選んだメニューをレジに持っていけばそのまま注文できるサービスも検討しているそうだ

モデルになってくれたのは,同じ日に取材に来ていた「あちゃら」の記者さん。カメラ目線,ありがとう

で,メニューを選択するとこんな画面に。取ったカロリーまで計算してくれる

「モニターには約5000の応募があった。繁忙期の終わる9月くらいには対象店舗を2〜3店増やし,2次募集を行いたい。人数は未定だが,前回の抽選で漏れてしまった方に向けた優先枠なども検討している」(永井氏)。モニターのプロフィールはさまざまだが,やはり技術系の職に就いている人が目立つという。無線LAN対応で先行したアップルのユーザーが多いのも特徴で,「店舗で見ている限り,利用者の半分近くがMacユーザー」というから,完全に市場シェアを覆している。また,門前仲町店をはじめ,いくつかの店舗には複数台のノートPCが置かれているため,パソコンを持たない人でも無線LANを体験できる。

門前仲町店の2階には3台のWindows PCが置かれている

 各店舗には,アッカ・ネットワークス提供のADSL回線が引かれ,大手町のデータセンターと接続している。ただし,NTTコムの加納氏によると,DSLにこだわる意思はないという。「実験を通じて,需要のある場所を特定したい。アクセス回線は,場所によってFWAや専用線を使うことも考えられる」(加納氏)。

モスにマックを持ち込んで体験(某競合ではなく,PowerBookのほう)。暗号化は40ビットWEPを使用。ネットワークに入るときとWebブラウザ立ち上げ時(画面)の2回にわたってユーザー認証が行われるのが少し煩雑だ

 しかしながら,インターネットサービスを提供することで長居する客が増えたら,店の収益に悪影響を及ぼさないのだろうか? 永井氏も実験スタート前はこの点を危惧していたというが,実際には影響なかったという。「一週間,動向をみてきたが,お昼時などの混雑する時間帯には,お客もあまり長居はしない傾向にある。多く利用される時間帯は午後2時から夜にかけて。比較的,暇な時間帯に使われる傾向にあり,その点ではうまく(戦略に)あてはまった」(同氏)。たしかに,考えてみれば,すぐ横に他人がいる状況でノートPCを開こうとする人はあまりいない。そんなことを日常的にやっているのは,締めきりに追われる記者くらいのものだ(ごめんなさい)。

 モスフードでは,この無線LANサービスを店の付加価値として提供しようとしている。実用化は来年以降になるというが,「広い地域での展開も視野に入れている。全国の主要都市レベルなら可能だろう」(永井氏)という。モスバーガーは,直営/フランチャイズを含めて1566(3月末現在)の店舗を持つ。米国のスターバックスのように,広く展開してほしいものだ。「工事自体は簡単だが,ニーズを見極めて進めなければならない。PHSを使ってモバイルしているお客などが多い店から導入することになるだろう」(永井氏)。なお,本格サービスの際には,有料化が検討される模様だ。これは,ビジネスというよりもシステム維持のため。

「一般の家庭にも複数のPCがあるようになり,将来的には無線LANで使われるようになる。例えば,家族で食事やお茶を飲みに行くとき,PCを1台持っていけば,店のなかでレジャーの計画を立てたりできる。われわれとしては,利益よりもお客が店を利用するための動機付けとして捉えている」(永井氏)。

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関連リンク
▼ HI-FIBE公式サイト

[芹澤隆徳,ITmedia]

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