Big Pipe:FWA事業申請が示すNTT地域会社の再々編問題

【国内記事】 2001年7月19日更新

 NTT地域会社は,加入者系無線アクセス・システム(FWA)を開始するため,総務省に対して事業申請を行った。FWAとは,準ミリ波/ミリ波帯(22GHz,26GHz,38GHz)の電波を利用した固定型無線通信システムである。これにより,NTT地域会社は,ブロードバンドのアクセス回線事業としてADSLFTTHとともにFWAを展開することが可能となる。

 FWA事業の狙いは,FTTHサービスなど有線インフラの敷設工事が遅れる地域に無線インフラを整備することで,地域としてのブロードバンド・デバイドを解消すること。それとともに,全国の敷設済み光ファイバーの利用率を向上させることでコストパフォーマンスを向上させ,ひいてはFTTHサービス「Bフレッツ」の価格競争力を高める効果もある。

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NTT-BBは事業の柱に

 NTT持ち株会社は,6月29日にNTTブロードバンドイニシアティブ(NTT-BB)を設立した。NTT-BBはブロードバンドでの映像のオンデマンド・ストリーム,オンデマンド・ダウンロードなどリッチコンテンツ配信事業(コンテンツ・マーケットプレイス・プロバイダー)を展開する会社である。コンテンツ流通に必要な,コンテンツ・ナビゲーションなどのポータル運営やネットワーク環境及びビジネス環境の提供というコンテンツ・デリバリ・ネットワーク事業を展開する。NTT持株会社の100%出資子会社,資本金35億円,ということからも,NTT持株会社はNTT-BBをNTT地域会社,NTTコミュニケーションズ,NTTドコモ,NTTデータと並ぶ,NTTの新たな柱として育成して行く考えである。

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 NTT持株会社の1999年度の戦略ビジョンとして「情報流通企業」というものがあった。ここでいう情報流通とは,回線インフラ事業をベースに,アクセス回線,接続サービス事業,コンテンツ基盤事業を構築し,その上でコンテンツ流通事業が展開されるというもの。NTTはそのコンテンツ流通の基盤を作り,提供していくことを目標としている。そして,設立されたコンテンツ流通会社がNTT-BBである。

 しかし,一方のNTT東日本でも持株会社のビジョンを受け,自社内でのインフラ事業の上にインターネット事業を確立し,その上でコンテンツ配信事業,課金・決済,著作権処理,データセンター等のコンテンツ配信支援事業(コンテンツアグリゲーター,コンテンツデリバリネツトワーク事業)を構築しようと動き,事業と収益の拡大を目指している。

 またNTTコミュニケーションズも「e-theater」という自社ビジョンのもと,OCN事業やArcstar事業の上でコンテンツ配信事業を展開しており,自社内で情報流通企業化を目指している。

持株会社の狙い

 これらの動きは,NTT内での競合関係を生み出すのではないだろうか? ここからは私見になるが,NTT-BBの設立は,持株会社のNTT地域会社の再々編問題に絡んだ布石の1つではないかと考えられる。というのも,NTT-BBの設立から見ると,NTTの事業再々編は階層別になる可能性が見えてくるからだ。

 音声通信・従量制課金サービス時代は,エリア別に市内網,長距離・国際網,有線網,移動網で区分することに意味があったというよりも理屈の1つになっていた。その結果,NTT東西,NTTコミュニケーションズ,NTTドコモという分割・再編となった。しかし,今後のブロードバンド・定額制・IPビジネス時代には,エリア別の区分は意味がなくなる。ここで考えられるのが,インフラサービス,接続サービス,コンテンツ流通事業という事業階層別での再編である。この理屈でいけば,アクセス回線提供と回線接続サービスはNTT地域会社が,バックボーン回線とISPはNTTコムが,コンテンツ流通事業はNTT-BBが担当することになる。

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 そして,これらの動きの中で,NTT東西は地域IP網の統合と同時に一緒になるかもしれない。ただし,このような再々編に対しては地域会社からの反発も大いにあるとは考えられ,一枚岩では上手くいくとは思えない。実際,持株会社と地域会社の思惑の違いが随所で浮き彫りになっている。例えば,NTT-BBは,4月に「光サービス会社」として設立を発表された当初,有線ブロードネットワークスに対抗するべく,FTTHサービス全般を担う会社として出発するはずであった。しかし,そうなるとNTT地域会社からFTTH事業を取りあげることになってしまい,これに地域会社が猛反発したため,新会社の機能をコンテンツ流通事業に特化したという経緯がある。

 だが,持株会社としては,地域会社にはFWA事業も含めインフラ提供会社に終始してもらい,ほかの収益拡大事業は別会社化し,全体の収益を向上させる狙いがあるのかも知れない。そのために,NTTブロードバンドイニシアティブの設立と,FWA事業化申請を行ったのではないだろうか。

[根本昌彦,ITmedia]

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