放送と通信の融合,ネックは著作権処理?

ハイパーメディア・コンソーシアムのフォーラムで,有線ブロードネットワークスの藤本篤志取締役は,法制度・著作権法・感覚という,3つの視点から“放送と通信の融合”を論じた。

【国内記事】 2001年7月27日更新

 BSデジタル放送を契機に噴出した「放送と通信の融合論」。7月26日に催されたハイパーメディア・コンソーシアムのフォーラムでは,この議論がテーマになった。講師として壇上に立った有線ブロードネットワークスの藤本篤志取締役は,法制度,著作権法,(ユーザーの見た目の)感覚という,3つの視点から“放送と通信の融合”を論じた。

 長年有線放送を手掛け,かつFTTHの動画配信サービスを開始した同社は,事業者として“融合”の最先端にいる。しかし,藤本氏は「放送はユーザーが受け身でも良い,通信は時間に縛られないという,それぞれのメリットがある」として,両者が完全に融合するという論調には否定的だ。ただ,放送と同レベルのコンテンツサービスを目指す有線ブロードは,2つの事業が接近することを願わずにはいられないらしい。動画や楽曲といったコンテンツが絡むと,通信事業者は途端に不利になるからだ。

 先に挙げた3つの視点のうち,感覚面での融合は,ある程度果たされた。同社が提供している2Mbpsのストリーミングビデオは,TV放送に近い画質を実現しており,他社もインフラが整えば追随するだろう。一方,法制度の面でいえば,放送と通信は全く別モノだ。放送事業者は放送法,通信は通信事業者法が拠り所となっている。

 これに絡み,厄介になるのが著作権の問題だ。コンテンツ事業者と著作権は切っても切れない関係にあるが,通信事業者と放送事業者では,実務の上で大きな違いがあるという。

 著作権法では,著作権者と著作隣接権者(著作物に付随する権利を有する者。TVドラマなら,脚本家や出演者など)に,公衆からアクセス可能なサーバにアップロードする権利である送信可能化権と,公衆回線へのネットワーク送信を行う権利である公衆送信権の2つが与えられている。逆にいえば,権利を有するすべての個人,団体に許可を得ない限り,公衆からアクセスできるサーバにアップロードして2次利用することはできない。

 ただし,放送事業者は,事前に許諾を受ける必要がない。もちろん,使用料は後から請求されるのだが,問い合わせにかかる時間と手間を省くことができるという。これに対して,通信事業者は事前にすべての許諾を得なければならず,コンテンツ事業を行う上での大きな足枷となっている。

 「たとえば,通常のラジオなら,FAXやメールのリクエストですぐに楽曲をかけることができる。しかし,インターネットラジオの多くは,コンテンツをそろえることができず,赤字を出している」(藤本氏)。

 実際,有線ブロードネットワークスでも,FTTHサービスのコンテンツとして既に200本ほどの映画をそろえているが,映像ソフトの権利処理は「煩雑極まりない作業」だという。藤本氏は,規制緩和によって状況が変わるのは間違いないとしつつも,「日本も米国のような契約社会になるべき」と強調していた。

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[芹澤隆徳 ,ITmedia]

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