Big Pipe:ブロードバンドのアクセス回線,その市場規模は?(2/2)

無線,衛星,携帯電話

 また,固定型の無線系システムも注目されている(図5)。免許のいらない2.4GHz帯を利用した無線LANである。スピードネットがこれに当たる。現在は,5GHz帯の割り当てを申請中。ここは周波数帯が気象レーダーと重なっているが,実現すれば30Mbpsの高速無線インターネットが実現する。NTT地域会社やKDDIが実験を開始している。また,免許を必要とし,15GHz〜30GHz帯の周波数を利用しP-Pで最大156Mbps,P-MPで最大6〜10Mbpsを実現するFWAもある。ソニーの「Bitdrive」,CWCなどが事業展開中だが,今のところは企業間通信サービスのみである。

 衛星を利用したIPマルチキャストによって全国にコンテンツを一斉に同報配信するサービスも注目されている。コンテンツデリバリ配信サービスとして外資系の企業も含め参入が多い。ISPのストリーミングコンテンツのバックボーンサービスとして利用されようとしている。

【図5 固定無線】




無線LAN 1M〜4Mbps
・ 免許の要らない2.4GHz帯を利用。
・ 基地局から半径300メートル〜3キロ以内、見通せる場所という制限がある。
・ 1基地局200ユーザー程度まで。
・5GHz帯の割り当てを申請中。
・ ユーザーにとって手間、コスト面で導入が容易。
・ 設置場所に制約が多い。
・ ビル街では電波干渉が起こりやすくなる。
・ 準ミリ波帯のFWAに比べ、伝送速度は遅いものの端末コストは圧倒的に安く普及の進展が見込まれる。また2002年頃は機器コストを抑えたままで50〜60Mbpsが実現される見通し。
FWA(WLL)

P-Pで最大156Mbps、P-MPで最大6〜10Mbps
・ 15GHz〜30GHz帯の周波数を利用。電波干渉の心配はない。直進性が強く降雨などによる減衰が大きい。2キロ以内であれば伝送品質は有線と同等かそれ以上。但し2拠点間に障害物があると提供が難しい。
・ 降雨減衰に強い次世代WLLを開発中。

・ 敷設コストが安い。そのため新規参入が相次ぐ。
・ 2拠点間を1対1でつなぐP-P方式は主に事業者向け。1対多接続のP-MPはSOHOや一般家庭向け。
・ 加入者側機器がまだ高く、現時点では企業向けの専用線サービス、インターネット接続のみである。但し機器コストは2002年頃までに急速に下がると見られる。
衛星波 CS 「MegaWave Pro」
「ターボインターネット」:下り400Kbps・衛星IPマルチキャストによって全国にコンテンツを一斉に同胞配信する。
・ 他のアクセス回線のエリアが都市部に集中する中、全国でブロードバンドが提供できる。
・ 上り方向には電話回線を利用する必要があり、また配信コンテンツが限られるという擬似的双方向サービスなので人気コンテンツの配信サービスなどに向く。

 最後に,移動体無線として3Gがある。NTTドコモとJ-フォンが提供するW-CDMAと,KDDIのHDR。とくに,NTTドコモとしては既存のPDCでは既に周波数帯の不足が深刻化しており,否が応でも事業を展開しなければならない。

【図6 移動体無線】







IMT-2000 高速移動時144Kbps、歩行時384Kbps、静止時2Mbps
IMT-2000はITUが標準規格策定時に募集した第3世代システムの総称。無線方式にW-CDMA、UWC-136、cdma2000がある。
・ 日本で2001年5月よりIMT-2000(W-CDMA方式)開始で移動通信環境でのブロードバンド・データ通信が可能になる。スタート時は384Kbpsまで。但し当面はエリアが狭い。
cdmaOne
(IS-95B)
〜115.5Kbps 日本では旧DDIが採用。既にサービス提供中のcdmaOneを拡張し、高速化していく予定。データ通信専用システムIX-EVは電話網と切り離して基地局から直接ルータ網に接続した、インターネットに則した構成。既存インフラを利用でき、かつIMT-2000よりも高速化できるため、IX-EVを強化する方向。帯域を拡大した3XEVを開発中。
cdma 1X 〜144Kbps
IX-EV
(HDR)
下り最大2.4M、平均600Kbps、上り最大307K、平均220Kbps
IS-95Bシステムにデータ通信専用ネットワークとして付加。携帯電話網ではなくIP網へ直結。Cdma2000(3X)でも導入と見られる。
PHS 64K/128Kbps→384Kbps 携帯電話の低廉化により移動電話としてはシェアを奪われたが、現時点で手に入るワイヤレスの高速通信としての利用で契約数は微増傾向。今後は企業の特定業務ネットワークなど目的特化した分野で活用されていくと見られる。DDIポケットは携帯電話に真っ向勝負の戦略もとる方向。


LEO 数Kbps(固定利用で数10Mbps)
低軌道衛星を利用した衛星通信サービス。高コスト。
DDIが手掛けていたイリジウムはLEOを利用(現在営業停止)。開発費のかさむ 大型LEOに代わって、小型の静止軌道(GEO)衛星やMEOによる移動衛星通信システムが登場。通信衛星は世界市場では地域インフラが整備されていない国では効率がよいといえる。

市場規模は?

 ではアクセス回線事業者数は今後2005年まで,どのくらい規模になるのであろうか? 総務省と筆者の予測を掲載した。 (図7・図8)

【図7 ブロードバンド加入世帯数予測】(単位:万世帯)
  2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年
FTTH 0 202 404 606 755 904
CATV 50 121 231 322 473 625
DSL 0 281 562 843 796 749
FWA 0 0 0 0 108 216
総計 50 604 1197 1771 2132 2494

総務省郵政事業庁(旧郵政省)「2005年へ向けたe-Japan超高速ネットワークイニシアティブ」

【図8 ブロードバンド系インターネット接続世帯数推移・予測】
Photo

 総務省の加入世帯数の推移・予測はIT戦略会議で決められた目標値の試算例である。2005年の超高速インターネット網のFTTHの加入世帯数は900万世帯,CATV,DSL,FWAの高速インターネットが1590万世帯であり,総計2494万世帯がブロードバンド加入世帯数となる。IT戦略会議の2005年の目標に比べ,超高速インターネットが100万世帯,高速インターネットが410万世帯少ない。しかし,ここではFTTHが加入者系光ファイバー整備率の推移で特別融資や税制優遇等の政府支援があり,2005年までに全国整備が完了する場合の前提において試算されている。従って,実際には2005年の全国整備の完了は実現困難と想定し,経済合理性で考えれば,今後整備率が下がった場合,それに応じて加入世帯数は上記数値よりも減少するものと考えられる。この点から言えば,IT戦略会議で唱えられている数値はあくまでも目標にしか過ぎない。

 ただし,政府は料金設定が低くなればブロードバンド加入世帯数は増加するとしており,この試算は大きく上方修正されるとしている。FTTHの場合,4〜12Mbpsで月額3000〜6000円,DSLが0.5〜3Mbpsで月額1000〜3000円,CATVが4〜6Mbpsで1000〜3000円としている。有線ブロードのFTTHは更に低価格だが,全国整備を行なう体力はないし,NTTについては全国で敷くものの,コストが高く,料金を高めに設定せざるを得ない,従って,低価格化と2005年の全国整備完了は難しいため,上方修正は政府の支援がない限り難しいといえよう。赤字財政が続く中,どこまでできるか注目される。

筆者の場合は,ブロードバンド加入世帯数予測を政府の試算よりシビアに見ている。2005年でFTTH加入者が391.4万世帯,ブロードバンド接続加入世帯が1470万世帯とし,国内総世帯数に占める割合は29.3%である。これは政府予測よりもFTTHで500万,ブロードバンド全体で900万世帯も少ない予測である。これはNTTの接続料金が高いこと,光ファイバー加入者網の全国整備率を2010年で100%という,現段階では現実的な数値に基づいて試算したためである(政府は2005年で整備率100%としている)。2005年の米国でもブロードバンド加入者数が2880万世帯であり,加入者比率も40%前後と考えると,妥当な数値であると思われる。政府の目標値を実現可能数値と考え,夢を見て誤った方向に陥らないで頂きたい。とはいえ,筆者でさえ,ブロードバンドはわずか5年で1000万メディアに到達するスピードを持つと予測しているのだ。

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[根本昌彦,ITmedia]

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