Big Pipe:コンテンツビジネスを優位に運ぶキーワード
ブロードバンドサービスのユーザーは,まだアクセス回線の高速化を望む“スピード狂”が中心であり,現状ではまだリッチコンテンツを必要としていない。だが,今から2〜3年後には“リッチコンテンツ待望者”がユーザーの中心となる。従ってコンテンツアグリゲーターは,先行してリッチコンテンツ待望者を囲い込むことが,今後のブロードバンド・コンテンツビジネスを優位に運ぶカギとなるだろう。 では“リッチコンテンツ”のサービスとしてどのようなものが立ちあがるのか? それに対応したターゲットセグメンテーションは如何なるものか? 今,いくつものコンテンツアグリゲーターが立ち上がっているが,それらはみな総括的にさまざまなコンテンツを載せようとしている。その理由の1つは,現段階のターゲットをアーリーアドプターとして,とりあえず,コンテンツに餓えているユーザーを対象にしているためである。その捉え方は間違ってはいないものの,ユーザーを考慮している作りとは言えない。また,コンテンツアグリゲーターはコンテンツデリバリサービスプロバイダー事業も兼務しているところが多く,コンテンツ供給者から収益を得る仕組みになっていることも,こうした傾向の要因である。 だが,本来のコンテンツアグリゲーターの目的は,ある特定ユーザーのために数多くの情報を編集・加工しすることだ。その意味で,コンテンツアグリゲーターは想定される顧客セグメンテーションを定め,その顧客に対して如何なるコンテンツを提供して行くべきなのかということを検討することが必要である。アーリーアドプターを確立することで市場は創出され,逆にターゲット戦略の誤算は事業の失敗を意味する。 では,どのようなターゲッティング戦略が考えられるのか? まず,現状のターゲットセグメンテーションの問題点を挙げてみよう。
都会派エグゼクティブのためのコンテンツ配信そこで提案したいのが,都会派エグゼクティブのためのブロードバンド情報提供サービス事業である。 提案する背景としては,4つの要因が考えられる。
では,都会派エグゼクティブとは具体的にはどのような対象なのか? 所得年収1000万円以上,30代〜50代の男性と女性(キャリア,マダム),都市在住の450万世帯(地方も含めて840万世帯)。都会でエグゼクティブ&エクセレントに生きていきたいが,そのために有用な情報がなく,欲しているユーザー。また,1つ下の所得クラスの層も,エグゼクティブ予備軍として対象顧客となり得る。 一方,エコノミー層(一般娯楽層)は,デフレ経済の牽引役である。収入が伸び悩み,価格破壊商品に飛びつく。ただし,こうした人たちも中流家庭意識が根強く,全ての生活様式をランクダウンさせることはない。自分のこだわりをもって生活する一点豪華主義,オタク傾向が加速するものと思われる。したがって,この層に対し,専門性を追求したコンテンツを配信すれば成功する可能性が高い。だが,ニッチな市場であるが故に,規模の拡大は望めないだろう。 都会派エグゼクティブのための専門番組では,通常のTV番組では味わえなかったエグゼクティブライフスタイル情報をPCを通じて提供する。高所得者向け金融サービス,政治討論番組,それぞれの嗜好にあったホテルやレストランの情報,ビジネスパーティ主催情報,ビジネスクラス旅券販売など。そして,コンテンツサービスを高額有料化にする。カネを支払うことが,エグゼクティブの仲間入りだという認識を顧客に植え付けることができれば,高い料金設定も可能になる。競合他社に対する差別化と価格の弾力性が競争優位を誘う。 成長プロセスとしては,まず都会派エグゼクティブ市場を開拓し,その後,女性エグゼクティブ層に波及,更にライトユーザーの獲得という方式で市場を拡大することが可能だと思われる。 第4回でコンテンツの「勝ち組」と「負け組」そして「賭け組」,ニッチャーを解説したが,きちんと高額所得者を対象にし情報料を頂くというモデルは賭け組にならず,ニッチャーから勝ち組に行く方程式になるのではなかろうか。このような枠組みも,放送事業とは異なり許認可を必要としないブロードバンド事業だからこそできるのだ。 [根本昌彦,ITmedia] Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved. モバイルショップ
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