ホームサーバに対する期待と不安──WORLD PC EXPO 2001レポート

「WORLD PC EXPO 2001」では,各社が提案するホームサーバを見ることができる。NECは,キューブ型に近いシルバーのきょう体を持つ「NetCruiser」を展示した。

【国内記事】 2001年9月19日更新

 ブロードバンドの普及とともに本格化するといわれるホームネットワーク。その中心に位置するのがホームサーバだ。幕張メッセで19日に開幕した「WORLD PC EXPO 2001」では,各社が家庭向けに提案するホームサーバを見ることができる。ただし,ホームサーバ自体がこれから立ち上がるジャンルだけに,各社とも需要が読めず,まだ市場性を計りかねているといった印象も受けた。

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NECの「NetCruiser」。本体前面にはB-CASカードのスロットも設けられた

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NetCruiserの利用イメージ

 NECは,キューブ型に近いシルバーのきょう体を持つ「NetCruiser」(仮称)を展示した。地上波およびBSデジタルチューナーを搭載し,HDD録画,メール受信,ストリーミング再生といった機能を持つ。ホームネットワークのゲートウェイとして機能するのはもちろんだが,各種メディアを統合するSTB(セットトップボックス)といった色合いも濃い。そのコンセプトは,「リビングで家族が使える」サーバだ。

 中身は完全なPCアーキテクチャで,CPUは米TransmetaのCrusoe(600MHz)。録画用のHDDは80Gバイトだ(いずれも製品化の際には変更される可能性がある)。MPEG2のエンコーダ/デコーダチップは専用チップを装備。ビデオの入出力として,コンポジットとS端子があるが,D1端子についても検討中だという。ただし,デジタル出力端子は著作権問題がクリアになるまでおあずけとなっており,BSデジタル放送のHDD録画もできない。

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背面にはLAN/WANのイーサネットポートのほか,USB×2とPCカードスロットなどを装備

 OSはLinuxベースだが,RealPlayerをプリインストールしており,ストリーミングの動画をTVで楽しむことができる。「今後,ストリーミングの需要が拡大すれば,居間のTVで楽しみたいという要求が必ず出てくるだろう」(NEC)。このほか,受信メールの添付画像などをTV画面に表示するといった機能もある。

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TVを見ているときでもメールが届くと分かる仕組み(上)
メールの添付画像を開いたところ(下)

 一方,個人の作業に偏りがちなメールの作成および送信の機能は盛り込まれず,Webブラウザについても「頻繁なアップグレードが必要なものはPCに任せるべき」との判断から搭載が見送られたという。このため,ストリーミング動画をWebで探すことはできないが,「専用の配信システムを構築するか,どこかにメニューとなるサイトを作ることが前提となる。しかし,ブロードバンドによる動画配信が当たり前になるには,こうしたシステムが必要だと考えている」(同社)という。

 デモンストレーションでは,2台のPCにストリーミング動画を配信。同時にTVにも出力してみせた。ストリーミング動画はもちろん,地上波放送もMPEG2にリアルタイムでエンコードしたうえで転送する。展示機には無線LANの機能がなかったが,内蔵することも検討中だという。その際は,「IEEE 802.11bでは3Mbps程度で頭打ちになってしまうため,IEEE 802.11aになる可能性がある」(NEC)。

 このNetCruiserは来年中に出荷される予定。価格などの詳細は決まっていない。

家庭向け? SOHO向け?

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イーヤマのホームサーバ

 イーヤマが参考出展していたのは,「まだ企画段階」というLinuxベースのサーバ。機能としては,インターネットゲートウェイ(ルーティング+ファイアウォール),Webサーバ,メールサーバ,ファイルサーバなどが挙げられている。簡単な設定でLANを構築する点に主眼を置いており,どちらかというと,家庭よりもSOHOや企業のワークグループレベルに向いたThinサーバといった趣だ。「アドオンで設置できるサーバは家庭でも受け入れられるはず」(同社)。無線LANのアクセスポイントが内蔵されているため,隣に展示されていたWebPadやPDA(別記事を参照)を組み合わせると,ソニー「エアボード」のようにも利用できる。

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WebPadは500MHzのCrusoeとMidori Linuxを搭載

 しかしながら,これらの製品について同社は「まだ市場が読み切れていない」と慎重な構え。ホームサーバが先陣を切って普及すれば,非PCクライアントの市場も広がると見ているようだ。

PCをホームサーバにするソフト

 DVD再生ソフト「WinDVD」などでお馴染みのインタービデオが展示していたのは,PC同士をつないで各種データのやりとりができるソフトウェアだ。名称は「WinCinemaメディアサーバーソフトウェア」。TCP/IPベースのネットワークを介してファイルを共有,あるいは1台のPCをサーバとして実行することができる。

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利用イメージ

 デモンストレーションでは,IEEE 802.11a無線LANのPCカードを装備した2台のノートPCでDVD-Videoを伝送,再生していた。「1台のPCをサーバとして楽曲やビデオを置いておけば,ほかの部屋にあるパソコンやWebPadで再生できる。ネットワークは通常のイーサネットや無線LANをはじめ,HomePNAなど,TCP/IPベースのものなら何でもOKだ」(同社)。

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デモ風景。IEEE 802.11a無線LANを利用していた

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「CONTENT BROWSER」で利用するメディアを指定する。TVチューナーを内蔵しているPCがあれば,TVも伝送可能

 WinCinemaメディアサーバは,パッケージソフトとしての販売は予定しておらず,ホームサーバメーカーにOEM供給する方針だという。「早ければ来年の冬頃には,このソフトを搭載したホームサーバが市場に登場する見込みだ」(同社)。

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[芹澤隆徳,ITmedia]

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