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第7回:MPEG-4プレイヤーを検証する

【国内記事】 2001年9月26日更新

 以前,ここでMPEG-4ファイルフォーマットの話を書いたが,徐々にMPEG-4に対するソリューションが登場しつつある。そこで今回は,MPEG-4再生ツールを紹介しよう(「MPEG-4ファイルとは,Windows Mediaでいう単なるMPEG-4ビデオコーデックの話とは違う」という話は,いろいろなところでさんざんしているので,もうしないことにする)。まあ,先が期待できるともいえるが,まだまだ不透明な部分も多いのは確かだ。

PhilipsのWebCine Player

 まず,MPEG-4に積極的に取り組んでいるのがPhilipsである。Philipsでは,エンコーダー「WebCine Encoder」「WebCine Server」「WebCine Player」と,MPEG-4の送受信の全てに関わる製品を開発している。このうち,WebCine Playerはダウンロードできる。現在のバージョンは1.1RC1で,プレイヤーのデザインも1.0の時よりも良くなっている。実はいろいろと問題があるようなのだが,それは後ほど述べたい。

 残念ながらWindows版しか存在しておらず,300MHzクラスのCPUが必要となる。

EnvivioのEnvivioTV

 私が注目しているのがEnvivioである。France Telecomのスピンアウトで,かなり真面目にMPEG-4の規格を研究している会社のようだ。この会社もやはり,「Envivio Broadcast Studio」「Envivio Media Server」「EnvivioTV」と,制作から再生まで,すべてのソリューションを開発している。

 注目すべきはEnvivioTVである。これは独自のアプリケーションではなく,QuickTimeとRealのプラグインという形で提供されている。つまり,Envivioのプラグインによって,MPEG-4ファイルをQuickTime PlayerやReal Playerで再生できるようになるのだ。こちらはβ版をダウンロードできるが,Windowsのみの対応で,350MHz以上のCPUが必須となっている。

 既存のプレイヤーで再生できるというのはありがたい。が,こちらもちょっと問題がある……。

実はMPEG-4に潜む互換性の問題

 まあ,MPEG-4を再生するツールが複数出てきたワケで,それはそれでめでたいことだ。「MPEG-4ファイルは複数のプレイヤーで再生できる」という状況がようやく整った……と,私は思っていたが,調べてみると,いくつか問題点が浮上してきた。

 まず,Philipsのプレイヤーだが,1.0では再生できていたPhilipsサイトのMPEG-4ファイルが,1.1で再生できなくなってしまっていたりする。うーむ,不思議。御丁寧に「旧バージョンのファイルだからファイルをアップデートしましょう」というアラートダイアログが出てくるものまである。でも,MPEG-4ファイルとしてきちんとしていれば別に関係ないんじゃないの? だって,その旧バージョンのMPEGファイルが,EnvivioTVを使うと,きちんと再生できるんだから……。

 Envivio TVのほうは,Realバージョンについては何とか再生できるが,QuickTimeについては,デフォルトではきちんと再生できなかった。ところが,Preferencesで「Envivio optimized rendering」というのを外すと再生可能になった。このあたりも良く分からないのだが……。

 それからもう一つ。MPEG-4といえば,PacketVideoを思い出す。「オオ! PacketVideoのMPEG-4コンテンツはこれらのプレイヤーで再生できるのか!」と思い,再生しようと思っても,実はこれができない。

 これは,「PacketVideoのフォーマットで使われている音声のGSMコーデックを両プレイヤーがサポートしていない」ことによるものである。実は,MPEG-4の規格の中には,「携帯端末用の仕様」というものもあり,PacketVideoのMPEG-4ファイルはそれに該当しているというワケだ。

 ウーム。……というワケで,残念ながら,今のところ,「MPEG-4フォーマットで配信すればあらゆる環境で再生できる」ということにはなっていない。さらに,MPEG-4には,クリックによって再生したりするというインタラクティブな要素を組み込むことができるのだが,まだ,このインタラクティブ型コンテンツを見ることはできない。Envivioのサイトを見ると,インタラクティブ型のサンプルコンテンツを準備しているようなので,おそらくEnvivioTVはインタラクティブ型のコンテンツもサポートしているのだろう。いずれにしても,「MPEG-4対応プレイヤー」といっても,ビデオと音声しかサポートしていないもの,つまりインタラクティブ型をサポートしていないというものも存在するのだ。

 というワケで,ここでまとめてみよう。

  1. MPEG-4といっても,コーデックの種類の問題などがあり,互換性についてまだはっきりしたことは言えない
  2. 「MPEG-4ではインタラクティブなコンテンツが可能」といっても,プレイヤー側がそのインタラクティブ型に対応していなければ,意味をなさない

といったところだ。要するに,MPEG-4にもいろいろな段階のサポートがあるため,まだ混沌としているのだ。アラアラ,やーねぇ。

さて,アップルはどう出るか?

 そこで期待したいのがアップルコンピュータのQuickTimeである。そもそも,MPEG-4ファイルフォーマットのベースとなっているのはQuickTimeファイルフォーマットである。それを考えると,アップルが「これだ!」というものを示してくれさえすれば,少しは状況が変わるのではないかという気がするのだ。

 そもそも,QuickTimeにはインタラクティブな仕組みが既に搭載されている。さらに,コーデックなど,足りない要素のコンポーネントを,再生時に自動的にダウンロードする仕組みがある。例えば,誰かがQuickTime用の「GSMコーデック・プラグイン」を開発してくれさえすれば,PacketVideoのコンテンツもQuickTimeで受けられるようになるハズなのだ。NTTドコモもFOMAの映像配信でPacketVideoのフォーマットを採用することを考えると,これはなかなか良いことである。携帯電話向けに作成したコンテンツがパソコンで再生できることになるのだ。

 ……ということが,本当にうまくいくのだろうか? 私は,アップルの出方をうかがうべく,10月8日からビバリーヒルズで行われるアップルの「QuickTime Live !」というイベントを取材する予定である。

 次回はここで「いいレポート」ができることを願っているが,果たしてどうなることやら……。そもそも,イベントそのものや飛行機がどうなることやら……。

アア!

 ……と,書き終えたところでMacWIREの松尾編集長からメールが……。QuickTime Live !が延期だそうだ。ヤレヤレ。

[姉歯康ITmedia]

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