CEATEC:日本版サイバーマンションを模索する大京

「CEATEC JAPAN 2001」で,大手マンションデベロッパー大京の鈴木徳之ネット戦略室長がマンションのIT化を語った。ADSLの価格競争が激しさを増す中,既存マンションへのサービスは岐路に立たされている。

【国内記事】 2001年10月3日更新

 ブロードバンドの急速な発展は,集合住宅のあり方にも影響を与えている。従来の「インターネットマンション」は既に過去のものとなり,より高速かつさまざまなソフトサービスを包含したものに変わりつつある。「CEATEC JAPAN 2001」で,大手マンションデベロッパー,大京の鈴木徳之ネット戦略室長が「ブロードバンドによって変わる集合住宅」と題する講演を行い,同社のビジョンを語った。

 大京は,昨年10月にNTT-MEとの合弁でファミリーネット・ジャパンを設立し,マンション向けにHomePNAFWAを使った常時接続サービス「CyberHome」を提供している。鈴木氏によると,2001年9月時点での累積受託件数は200棟弱(既存マンション)。「過去1年間で約200棟のマンションにHomePNAを導入した。とくにマンションでは管理組合の賛同を得る必要があるため,1年に1回の定期総会にあわせる形で提案できるように配慮している」(鈴木氏)という。

 しかし,電話線に重畳する形のHomePNAでは,棟内MDFのないマンションには対応できないうえ,あってもその周囲にラックを置くスペースや電源が確保できないケースもあり,「必ずしも万能ではないことが分かった」(鈴木氏)という。これらの条件に合わない物件が,実に5割以上に上った。大京では,HomePNAを導入できない場合,無線LANやイーサネットケーブルの新規敷設といった手段を用意しているものの,こちらはまだ導入例も少ない。

 そのうえ,最大1MbpsというHomePNAの仕様も最近では見劣りするようになってしまった。Yahoo! BBに代表されるADSL事業者の低価格攻勢も激しさを増し,状況は芳しくない。「以前は,管理組合に決議を求めても否決されることはなかったのだが……」(鈴木氏)。

既に新築マンションでは「A」までの光化とイーサネットの敷設を標準としている。また,各フロアまで光ファイバーを敷設した初めてのケース「ライオンズマンション西葛西マリーナ」はただいま分譲中

サイバーホームからサイバータウンへ

 戦略の建て直しを余儀なくされた大京だが,あえてADSLに価格で対抗することはしないという。カギを握るのは,構内ネットワークを利用したコミュニケーションサービスと捉え,マンション内に掲示板やチャットといったツールを順次用意する方針だ。「管理組合のWebページを作り,集会所の予約やお知らせ掲示板などを提供するサービスを秋〜冬に提供する。将来的には,ビデオチャットによる理事会なども検討したい」(鈴木氏)。また,ファミリーネット・ジャパンに出資するNTT-MEは,一般加入者電話に乗り入れることもできるVoIPサービス「WAKWAKコール」を提供しており,「これと(マンションのネットワークを)組み合わせた電話サービスも考えている」という。

 さらに,同社の物件が駅周辺に多いというメリットを生かし,マンション間をつないだ地域イントラネット網を構築,地域情報を核としたコンテンツサービスを提供する。たとえば,近隣の商店と協力してHPを作り,サイトを訪れた人が割引券をプリントアウトできるようにするといった具合だ。既に府中市内の一部マンションでこうした地域サービスを提供しており,これを全国に拡大していく方針だという。

ネットとリアルの両面から

 一方,大京は新しいサービスを可能にするハードウェアの導入にも積極的だ。たとえば,不在中に来客があると写真を撮影して携帯電話にメールしてくれるカメラ付きのドアホン,携帯電話で操作可能なエアコンや照明,ドアのマグネットセンサーと連動し,不審者がドアを開けると自動的に撮影するセキュリティシステムなど。これらは,2002年の商品化を目指しているが,マンションの標準装備となるか,オプション設定とするかは未定だという。このほか,宅配業者が集荷するとメールで知らせてくれる宅配ロッカー,遠隔監視カメラ,遠隔操作可能なキーボックスなど,共有部にも新しいサービスが設けられる。こちらは11月にも試行を開始する予定。

マンション共用部に設けられる設備

 鈴木氏は,「インターネット=PCユーザーという認識は変えた」と述懐する。ブロードバンドインフラがマンションでも当たり前の設備となった現在,競争力を確保するには他社よりも一歩進んだサービスが必要だ。「マンション生活のあらゆるシーンでインターネットを活用する。管理人やフロントによる身近なサービスとあわせ,ネットとリアルの両面から居住者をフォローアップする体制を作る」(鈴木氏)。

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▼ 大京
▼ ファミリーネット・ジャパン

[芹澤隆徳,ITmedia]

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