Streaming Now!〜流れをつかめ!
第10回:放送業界とMPEGとストリーミング

【国内記事】 2001年11月15日更新

 「InterBEE」というイベント,かつてはゴツくて男らしいイベントであった。本当に放送業界で使われる高価なものばかりが置かれているイベント……。いや,今もそうなのだが,ここ1〜2年でちょっとずつ変わりつつあるのだ。PCを使ったノンリニアビデオ編集が浸透し,さらにはストリーミングを使ったソリューションが見られるようになってきたの。今年は去年と比較しても,はっきりと「放送業界のストリーミングに対する関心」が見てとれた。会場にはさまざまなストリーミング・ソリューションが……と言いたいところだが,皆さんが思っているのとはちょっと違う。というのも,InterBEEというのは,業務用のソリューションが中心なわけで,そこが大きなポイントなのである。そんななか,私なりに見つけたテーマは……MPEGである。

なぜMPEG-2ストリーミングなのか?

 最近,ストリーミング系のイベントばかり見ている私にとって,コンシューマー向けの製品が少ないというのはちょっと寂しかったのだが,それはストリーミング野郎としての視点から見ているから。「業務用のストリーミング」がこれだけ登場しているのかと冷静に考えると,ちょっとした驚きであった。

 特に,「ワンソース・マルチユース」と謳い,1つの素材を高画質で放送し,それを圧縮して後でストリーミングまで展開してしまう,といったソリューションの展示が目立った。ここでいう「ストリーミング」とは,いわゆるインターネット系のストリーミングのことではない。普通のブロードバンドで流すわけではなく,企業内外で専用回線を通じて,もしくは衛星を使って送り込むというものである。フォーマットとしては,QuickTimeでもRealでもWindows Mediaでもない,MPEG-2がメインで考えられているようだ。DVDでも使われている,あのMPEG-2。

 これはどういうことか? 放送業界の多くの人達は,今のインターネットを使ったストリーミングを「技術として面白い」とは見ているのだが,そのクオリティに対しては誰も満足していないのだ。なので,われわれがよく言うような,「放送で使ったものをそのままストリーミング放送!」というベタなことを今の時期から導入しようとは考えていない。あくまでも,限定された用途でしっかりした映像を出すのを目的とすれば,やはりMPEG-2ということになるのである。

 ちょっと目を引いたのは,「ポータブルなMPEG-2エンコーダ」類である。これは,単なるエンコーダではなく,映像を入力すると,それをイーサネットを通じて発信してくれる,というデバイスである。つまり,カメラを直接つなぐエンコーダ兼ストリーミング送信機であり,IPアドレスを持ったデバイスとなるのだ。  これは便利だ。ストリーミングのためにわざわざパソコンを準備しなくてもいい。どこにいても(は大げさだが)美しい画像を送信できるのである。定点観測には十分のソリューションといえよう。

おお,MPEG-4カメラが!(ASFだけど)

 と,思ってMPEGを求めて歩いていると,メガフュージョンに素晴らしいデバイス「P's caster」が……。なんと,カメラ兼配信機なのである。カメラで撮影した画像をそのまま圧縮し,先に述べたMPEG-2系と同じような要領で圧縮した画像を送る。手軽に配信できて,すばらしい。しかも,圧縮はMPEG-4!  と思って話を聞いたのだが,ここで配信されるフォーマットは,実はWindows Mediaなのである。そう,お馴染み,MPEG-4の動画圧縮を使ったASF。実は,同社はMPEG-4のチップを自社で持っているのである。

 今はWindows Mediaという特定フォーマットにしか対応していないが,将来的には他形式に対応する可能性もあるとのこと。是非,期待したい。価格も6万円を切るくらいとの噂も耳にした。

 さらに,送信機とユーザーの間にフォーマットのコンバータのようなサーバをかますことで,Packet Videoのフォーマットにして受信することも可能になる。フォーマット変換とはいうものの,動画コーデックは同じなので,それほど難しいことではないそうだ。

MPEG-4フォーマット採用系もボチボチ

 では,MPEG-4ファイルフォーマットを使ったソリューションはなかったのか? ありました,なんとTDKに。同社はイスラエルのOptibaseという会社のシステムを使ったMPEG-4のレイヤーをうまく活用したシステム。複数のカメラの映像を1つの映像として重ねて表示したり,クリックによって並びを変えたりするというものである。例えば,同じ定点観測であっても複数のカメラで面白い活用が期待できる。

 ストリーミングではないが,そして,KDD研究所でもやはりMPEG-4をオーサリング……という展示があった。……しかし,よく見るとMac OS X上で動いているQuickTime Playerなのである。アレ? と思って聞いてみると, 「いや,こういうことができるようになるというデモで,今は開発中です。MPEG-4のプレイヤーもまだまだありませんし……」 とのことであった。アー,びっくりした。

 そしてもう1つ,アイ・ビー・イー。こちらではMPEG-4を使ったプレビューを目的としたソフトウェアエンコード/デコードの環境である。「MPEG-2を使うと,何せ,再生が重かった。かといってMPEG-1を使うと汚かった。そこで期待できるのはMPEG-4」というわけである。ちなみに同社はプレイヤーも展示していた。というか,全部含めたソリューションの展示なのである。

素晴らしいMPEG-4ファイル(でもプレイヤーは?)

 こういったブースの皆さんにお話を聞いてわかったのは,どなたも「ファイルフォーマットとしてのMPEG-4」と,「動画コーデックとしてのMPEG-4」(Windows Mediaなどで使われているヤツ)の違いを,しっかり理解しているということ。いや,出展者だから当たり前なんだけど,浸透してきています。そして,誰も理解していないフリもしなかったということ。

 一様に,「いやー,来る方はWindows Media Playerで再生できると思っているんですよね……」と悲しそうな顔をしていた。そういった現場レベルの方々に,MPEG-4が注目されているかというのを,聞いてみると,

  1. 軽いのにMPEG-2に近いクオリティであるから……
  2. いろいろなレイヤー(トラック)が使えて編集しやすいから……。
  3. インタラクティブにできるから……
  4. ISO標準だから……
といった回答を得ることができた。

 いいこと尽くしでしょ? QuickTimeがベースだし。問題は……プレイヤーがまだそろっていないことである(笑)。

 でも,存在しないわけではないのだ! 私のおすすめは,以前も紹介したEnvivioのQuickTimeプラグイン,RealPlayerプラグインといったところである。現在は,これが正式なバージョンになっている。とりあえず,これで「放送業界におけるストリーミング」の明日を見よう!

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[姉歯康ITmedia]

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