e-ラーニング,ブロードバンド時代に流行らせる方法「教えます」

ブロードバンド時代のキラーコンテンツ候補の1つであるe-ラーニング。成功するにはどうすればよいか,ANJOインターナショナルの具体的な運営方法を聞いた。

【国内記事】 2001年11月19日更新

 ブロードバンド時代のキラーコンテンツは何か? 1つには,「e-ラーニング」という意見がある。e-ラーニングとは,インターネット経由で学習に役立つ教育コンテンツを提供するサービスだ。しかし,具体的なサービスの運営方法はシステム面も含め,今ひとつ見えてこない。成功するには,どうすればよいのか? 他社に先駆けてe-ラーニングに取り組む国際資格の専門学校「ANJOインターナショナル」の社長,安生浩太郎氏に,同社の取り組みについて聞いた。

ANJOインターナショナルの安生浩太郎社長。「第21回デジタルコンテンツ産業研究会」より

 ANJOインターナショナルは,CPA(米国公認会計士)やCFA(米国証券アナリスト)など,さまざまなビジネス資格を取得するための専門学校を経営している。教室での通常の講義のほかに,1999年にはインターネットを使ったオンライン講義も開始した。

 同社のウリの1つは,“米国の大学講義と同水準”の授業を提供していること。米モンタナ州立大学と提携しており,ANJOインターナショナルで学べばモンタナ州立大学の単位を取得することもできる。これはインターネット講座の場合も同様で,留学して取得した単位と同様に扱われるという。

ビデオ通信の延長としてのe-ラーニング

 同社の提供する授業の形態は多様だ。教室で開かれる通常の講義のほかに,その授業風景を撮影したビデオを別室の個別ブースで視聴,1人で時間を気にせず勉強することもできる。ビデオを家庭に送付してもらい,通信教育として勉強することが可能なほか,ビデオと同じ内容の映像をインターネットでも配信しているので,テキストを送ってもらえば,PCから授業を視聴,勉強することもできるという。

 安生社長は現在,生徒の65%がビデオによる通信講座の受講生であることを紹介。「今のインフラではビデオのほうが見やすいが,そのうち(高速通信のインフラが整って)e-ラーニングが増えるだろう」と,今後ビデオユーザー層がe-ラーニングへ移行することを予想した。

テキストを開き,ビデオを見ながら勉強する。e-ラーニングの場合はテレビがPCに変わるだけ

 ポイントは,インターネットで教育コンテンツを配信するからといって,変に編集したり,動きをつけたものにする必要はないということ。

 「教育に必要なのは安心感。(ビデオと同様)教室と全く同じ内容の授業を配信することで,講師が臨場感,安心感を与えることができる。エンターテイメントなら画質や編集作業が要求されるかもしれないが,教育では必要ない」(安生社長)

 ユーザーはテキストを読み,講師の説明を聞きながら授業を進める。重要なポイントは解説ページにリンクするなど工夫する可能性はあるが,基本的には“音質重視”の授業風景が主役になるという。

 「ネットでは画像が小さく,長時間の視聴に耐えないと思われがちだが,実際の授業でも講師の顔ばかり見ている人などいない」(安生社長)。画像のクオリティにはこだわらず,PowerPointで表やグラフを表示する程度に留める。実際の授業を再現したこの形式に,安生氏は自信を見せている。

「資格の勉強はe-ラーニング向き」

 同氏は,そもそも資格試験の勉強が,e-ラーニング向きであると力強く語る。資格を目指すユーザーはしっかりした目的を持っているため,1人で時間を気にせず勉強することができるという。

 「主婦のお稽古事や大学のゼミのような,対人関係も重要なウェイトを占めるコンテンツには向いていないかもしれないが,資格を目指すユーザーには適している」(安生社長)

 同氏はほかに,税についていくつか用意されたコースのうち,特に「法人税」だけ学ぶようなユーザーも想定する。資格に至らなくても,会社の実際の仕事に役立つ“スキル”獲得のためのニーズがあると見込んでいるからだ。

これまでのe-ラーニングの失敗

 安生氏は,これまでe-ラーニングで成功した企業が少なかったことについて,運営方法に難があったと指摘する。

 「既存の大手専門学校は,リアルな“学校”に来てもらうためのシステムを作り上げてきた。このため,マーケティングや運営が固定化してしまい,インターネットのように施設を必要としない,今までと勝手が違う事業に積極的に取り組むことができなかった」

 「一方で新興の専門学校は独自のシステムを作り,ネットのみで事業を進めようとした。しかし,教育業界で一番重要なブランド力が足りず,結局たいていのところが上手くいっていない」(安生社長)

 ANJOインターナショナルの強みは,リアルの世界とインターネットの世界をゆるやかに結びつけたところにある。実際の授業も行い,安心感のあるコンテンツを,インターネットでも提供する。これからはネットだけでも,教室だけでもだめで,新たな受講形態が必要なのだという。

 「IT革命の時代に,事業者はリスクを恐れていてはいけない。いまや何もしないでいることのほうが,かえってリスクになるのだ」(安生社長)。ブロードバンド化の時代に,ANJOインターナショナルは時流をつかまえようと挑戦を続ける。

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▼ ANJOインターナショナル

[杉浦正武,ITmedia]

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