幻となった最大108Mbps〜プロキシム

プロキシムのIEEE 802.11a無線LAN製品「Harmony 802.11a」シリーズには,最大108Mbpsの通信を可能にする独自モードが実装されている。しかし,同社のカタログには何も書かれていない。

【国内記事】 2001年11月21日更新

 11月8日に発表されたプロキシムのIEEE 802.11a無線LAN製品「Harmony 802.11a」シリーズには,最大108Mbpsの通信を可能にする独自機能「Proxim 2X mode」が採用されている。しかし,同社の松本重継社長によると,国内でこの機能を使うことはできないという。理由は“規制”だ。

 IEEE 802.11aの仕様には,最大値の54Mbpsにくわえ,48M/36M/24M/18M/12M/9M/6Mbpsの各転送レートが規定されている(実効値とは異なる)。これは,電波の受信状態が悪く,54Mbpsのリンクが無理だった場合に,速度を落とすことで通信を保つためだ。

 一方,現在主流の802.11bの場合は,11/5.5/2Mbpsの3種類のみ。このため,同じ条件でアクセスポイントからクライアントを離していくと,IEEE 802.11aのほうがスピードの落ちかたは緩やかになる。「802.11bが11Mbpsのところで802.11aを使えば36Mbps,(802.11bが)2Mbpsの場所なら12Mbpsで通信できる」(松本氏)。

 ただし,同氏によれば「54Mbpsで使えるのは,アクセスポイントから,せいぜい7〜10メートルの範囲」。それ以上の距離になると,前述のように段階的にスピードは落ちていく。

距離と速度の関係を図で示したもの。出典はプロキシム

 件のProxim 2X modeは,チャンネルを同時に2つ使うことで,最大108Mbpsを実現する技術だ。IDSNを2本束ねて128Kbpsにするバルク転送をイメージすれば分かりやすいだろう。

 IEEE 802.11aのチャンネルがベースになっているため,転送レートはIEEE 802.11a標準のそれぞれ2倍にあたる,108M/96M/72M/48M/36M/24M/18M/12Mbps。最大転送速度もさることながら,離れた場所でも従来より高いレベルの通信速度を保てる点が最大のメリットだ。「オフィス環境でテストした場合,Proxim 2X modeはIEEE 802.11bの2〜10倍に相当する速度でリンクを確立できた」(同氏)。

 しかし,いくら便利な機能でも,日本の通信事情まで左右することはできない。

 IEEE 802.11の場合,1つのチャンネルは54(48のキャリーデータと4のパイロット信号)のキャリア(搬送波)で構成されており,それぞれのキャリアは常時300KHzの帯域を使用する。チャンネル全体では約16MHzだ。2チャンネルを同時に使うProxim 2X modeの場合,その帯域幅は30MHzを超える。

 「日本には,1回の通信に使う帯域幅は18MHz以下という規定がある」(同氏)。このため,国内では利用することができず,カタログなどにも全く記述されていない。

 他社製品との互換性を持つ54Mbpsモードに最大108Mbpsの独自モードをくわえ,企業内のさまざまなニーズに対応できると見込んでいたプロキシム。明確な他社との差別化要素を持ちながら,活用できない無念さが,松本社長の「日本では使えません」という素っ気ない一言に現れている。

HarmonyのAPコントローラは,APを一括管理する機能を持っているため,企業のニーズに合った柔軟なシステム構成が可能だ(11月8日の記事を参照

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[芹澤隆徳,ITmedia]

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