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第12回:「MS対MPEG-4連合」時代へ突入か?

RealNetworksがMPEG-4を採用する。他社と足並みをそろえ,Microsoftに対抗しようという戦略だ。ただ,ここには,Realにとって非常に危険な要素が含まれている。

【国内記事】 2001年12月13日更新

 あまり大きく報じられてはいないようだが,米RealNetworksがMPEG-4を採用するという英断を下した(12日の記事を参照)。これは,今後のストリーミングについて考える上で注目すべきニュースであるし,野次馬的にも面白いネタである。「Microsoft 対 MPEG-4連合」時代の幕開けととらえることができるからである。これまでのReal System,Windows Media Technology,QuickTimeという「御三家による競合」時代は終わろうとしているのだ。

RealのMPEG-4サポートとは何か

 まず,今回のRealの発表の中身だが,「ネットワークシステムRealSystem iQがMPEG-4をサポートする」というものである。というと,何かスゴい技術を開発したように思えるかもしれないが,そうでもない。同社の発表をよく読むと,基本的には「Real ServerでMPEG-4をサポートした」ということのようだ。このサーバは,すでにQuickTimeもサポートしていたので,そう驚くことでもないだろう。

 では,プレイヤー側はどうするのか? これについては,「Envivioのプラグインを使って再生しなさい」ということである。そう,MPEG-4ストーカーの私がたびたび触れてきた,あのEnvivioである(9月26日の記事を参照)。

 EnvivioのプラグインにはQuickTime Player用のものもあるので,当然,Real Serverから発信したMPEG-4ファイルは,QuickTimeでも受信できるということになる(ただし,現段階ではQuickTime,RealともWindowsバージョンしか用意されていない)。すでにEnvivioがクオリティの高いプラグインをリリースしているので,これは賢明な選択といえよう。

Realにとって「危険な賭け」かも?

 この発表については,「RealはこれまでもQuickTimeをサポートするなど,もともとサーバ側で多くのフォーマットをサポートしていこう,という戦略を持っていた。その一貫である」というのが,まあ,正解だと思う。が,「一貫として」というレベルでは済まされないほど大きなステップなのである。

 AppleのQuickTimeをサポートしたときには,わざわざそのことを強力にプッシュはしなかった。が,MPEG-4という企業色のない標準技術であれば,推奨する価値がある。しかも,Packet Videoをはじめとして,携帯端末の分野でMPEG-4を標準採用しようという気運が高まっている。これを早速サポートして,業界リーダーとしての貫禄を示すだけでなく,商売の意味でも先手を打ったということだろう。

 さらに,Microsoftに立ち向かうためには,Realだけでは無理がある。多くの会社を巻き込んで足並みをそろえようと考えたのではないだろうか? だとすれば,エラい! だから冒頭で「英断」と書いたのだ。

 ただ,この英断には,Realにとって非常に危険な要素が含まれている。御存じのとおり,Realはサーバ及びネットワーク技術,サポートによって成り立っている会社である。その会社のシステムでMPEG-4がサポートされていれば,多くのRealユーザーがMPEG-4フォーマットへと移行していくことが予想される。

 そうやってMPEG-4が普及する中で,さまざまなサーバ環境,再生環境が整い,「MPEG-4対応サーバであればどのサーバを使っても配信はできるし,MPEG-4対応プレイヤーであればを使っても再生できる」という世界が出来上がったとき,Realの立場はどうなるのか? ということがちょっとだけ心配なワケである。

 もちろん,今の段階ではそれほど気にすることではない。が,後々,「いやー,今となっては,Realが自社フォーマットへのこだわりを捨てて,MPEG-4に切り替えたのはあの時期だったね」と言われることになるかもしれないと思っている。

Apple,MS,それぞれの思惑

 この発表を,Appleは,Microsoftは,どう考えているのだろうか? まず,Appleは間違いなく「大歓迎」だろう。一段高いところにいるつもりで,「われわれのMPEG-4の世界へようこそ」くらいに思っているだろう。

 Appleは,MPEG-4のファイルフォーマットのベースがQuickTimeであることをたびたび強調している。MPEG-4が広まれば,そのデータをオーサリングする上で,間違いなくQuickTimeの重要性が認識されるハズだ。QuickTimeというのは,「作るための技術」としては,ズバ抜けて高いレベルを持っている。なので,「別に何を使って再生してもいいですが,オーサリングはQuickTimeを使ったほうが便利ですよ,ホッホッホ」と言える。すでにさまざまなQuickTime対応ムービーオーサリングツールが存在している,というのがAppleの大きな強みである。

 興味深いのはMicrosoftだ。彼等はどう考えているだろうか? さすがに「Windows標準搭載プレイヤー」だけあって,Windows Mediaのシェアはどんどん伸びてきているように見える。だから安心していたところ,世の中に「MPEG-4が標準だ」説が広まっていった。これまでは「MPEG-4コーデックを搭載してるよーん」と言ってさり気なくゴマ化してきたが,そろそろ,人々もファイルフォーマットが独自であることには気付いてしまった。その上,ほかの会社がすべてMPEG-4連合としてまとまってかかってくるとなると,さすがに焦るだろう。

 では,対抗して「Windows Media TechnologyでMPEG-4をサポート」というのはアリか? いや,可能だが,それはないだろう。サーバ環境がWindowsしかないというのはデメリットになってしまうし,力を見せつけたい分野でほかの技術サポートに走ってしまうと,なんだかよくわからなくなってしまう……。

 ただ,Appleにせよ,Microsoftにせよ,ストリーミング技術をメインの商売として展開している会社ではない。その分,余裕を持って展開することができるのだけは確かだ。

頑張れEnvivio!

 もう1つ,番外編的に面白いのが,envivioという会社がどうやって儲けるか,というところだ。プラグインを見た限りでは,彼等の技術は間違いなく優秀である。これが無料で配付されているのはとても嬉しいのだが,会社としてそれでいいのか? という疑問もある。

 彼等は優秀なオーサリングソフトも持っているようなので,そこで儲けようとしているようだが,それだけではもったいない。

 そこで,例えばAppleとRealにそれぞれのプラグインの技術を売ってしまうという展開もあるかもしれないし,ライセンス供与するという方法もアリだ。

 RealもAppleも,一からこの技術を開発するというのは大変だ。Envivioには,大いに儲けてほしいところである。

 と,いうように,今回のRealの発表は,いろいろと膨らませて考えるとなかなか楽しい。が,私が述べたのはかなり先のことを考えた上での話。MPEG-4陣営にはしなければいけないことが山積みだ。たとえば,同じMPEG-4でも,Envivioの技術ではPacket Videoなどの携帯端末系の音声コーデックをサポートできていないといった問題がある。そういったプロファイルを整理するのが先決だろう。で,AppleとRealが手を結んでMPEG-4の普及に努める。というストーリーがいいと思うのだが,いかが?

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[姉歯康ITmedia]

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