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茶の間ストリーミング考〜アップル新製品を見て思う

新しい「iMac」とデジカメ用ソフトの「iPhoto」は,私にとって,ストリーミングのことを考えるための良い材料となった。iMacは「茶の間ストリーミング専用機」として使えるように見えたのだ。

【国内記事】 2002年1月9日更新

 「Macworld Expo/San Francisco」で,アップルは数々の新製品を発表した。個人的にMacをメインで使っているため,非常に興味深い内容であった。欲しいのは14インチ液晶の「iBook」だが,考えさせられたのは新しい「iMac」とデジカメ用ソフトの「iPhoto」だ。これらは私にとって,ストリーミングのことを考えるための良い材料となったのである。

新iMacは茶の間ストリーミング向き?

 新iMacを見た時の感想は,「なるほど,その手があったか」である。液晶ディスプレイを本体にくっつけて,それでいてパソコンっぽくない。これはリビングルームに置いてもいいだろうし,別に寝室にあってもいいだろう。


液晶ディスプレイになった新iMac。大福もち”“のように愛らしい?

 実は,私は以前から,リビングルームで扱うことができる「茶の間ストリーミング専用機」のようなデバイスを歓迎している(ストリーミングというメディアが「茶の間ストリーミング」というジャンルを目指しているのだとしたら,それ専用のデバイスがあるべきだと思っている,というだけの話。今の時点での向き,不向きは無視している)のだが,このiMacのデザインは,十分に「鑑賞するための機器」として使えるように見えた。「ひょっとして,これこそが茶の間ストリーミング専用機では?」と一瞬,思った。

 デザイン以外の面でもそう思った。無線LANカード(AirMac)を内蔵できるという点が,非常にストリーミング向きなのである。テレビは基本的に家の中で固定して楽しむものだ。いや,携帯用テレビのアンテナを立てて家の中を走り回ってもいいのだが,一応,固定されたものとして定着している。ストリーミングがテレビとは別のメディアとして定着するためには,テレビに接続するのではなく,家の中を駆けずり回って,パーソナルに使ったり,「ホラ,ここ見て,見て!」とか言いながら人に見せたりする手軽さがあってもいいのではないかと思う。

 その点,無線LANは非常に優れていると思うのだ。といっても,iMacはバッテリーを内蔵しているワケではないのだが……。でも,アンテナ線を引っ張り回したり,テレビに接続するよりはスマートではないだろうか?

いやいや,iMacは実はDVD向き

 しかしながら,「茶の間ストリーミング」はかっこよくなければならない。何せ,みんなテレビに慣れているのだから,現存のストリーミングコンテンツのクオリティではサマにならない。だからこそ,今,私は「本当のブロードバンド時代」を見越して話している(そもそも,Mac OS X上で動くWindows Media Playerには英語版しかないし,RealPlayerもまだXに対応していない)。今のストリーミングのレベルでは「ながら作業」をするにも安心できないと思う。

 では,このiMacをDVD再生機として考えるとどうだろうか? これは間違いなく使える。映画や音楽コンテンツを流して「適当に見る」という感じで扱えそうなのだ。DVD再生専用機としては少々高いが,それでインターネットなどがワイヤレスで使えてしまうんだから,世の奥様方は喜ぶだろう(どうして奥様方なのか,自分でもよくわからないが……)。ここで一旦,強引に結論。「新iMacはDVD再生機と成り得る」。

iPhotoのプリントサービスが意味するもの

 もう1つ,私が注目したのは「iPhoto」だ。これはデジカメ用の「連携ソフト」で,デジカメからの画像取込み,画像編集のほか,アルバムなども作成できてしまうソフトである。が,一番スゴいところは,コダックのサイトに接続して,プリントアウトするサービスを受けられるところだ(ただしこれは今のところ米国のみのサービス)。こういったサービス自体は以前からあったが,ソフトウェアと連携してやられると,単純に「ナルホド」と納得してしまうではないか。



iPhotoの画面と出来上がったアルバム

 で,これがどうストリーミングと関係するか……。まずは,アップルが何故このような機能をつけたのか,ということを考えよう。さまざまなリサーチがあったかどうかは知らないが,「画像ファイルは,確実にユーザーのハードディスクにある。プリンタもおそらくは持っている。それでも多くのユーザーは,クオリティの高い印刷物を手にしたいという欲求を持っている。そう,やっぱりみんな,『モノ』が欲しいんだ!『モノ信仰』の根は深いんだ!」という結論に達したということなのだろうか?

とするとストリーミングよりDVD?

 その考えが正解か間違いかは別として(私は正解だと思うが),そういった「モノ信仰」の対極にあるのがストリーミングである。データは常にサーバの中で,決して触れることができない……。

 このiPhotoのサービスをストリーミングに置き換えると,「映像をアップロードするとストリーミングしてくれます」ということになる。そういうサービスは既にあるし,大いに「アリ」だと思う。が,私はどうしても簡単にお金を払えない……。

 もし,同じような形で,「映像をアップロードするとDVDにしてくれます」(容量の話は抜きにして)というサービスがあったとすれば,お金を払うかもしれない。自分が作った作品を「モノ」として置いておけるし,持ち歩けるからだ。

 そして,そのDVDを先のiMacのようなもので気軽に楽しむ(なんとなく,パーソナルなものをDVD再生機+デカいテレビで見るのは気恥ずかしいような気がしているのだ)。仮にこういう世界が実現するとしたら,自分の結婚式や子どもの運動会を見せるためのメディアというのは,やっぱりストリーミングではなく,DVDだと思うのだ。

結局ストリーミングはどこへ行く?

 では,そういう世の中になった時,ストリーミングの役割はどうなるのか? 「ひたすらリアルタイムに,ひたすらニッチに」という方向に行かざるを得ない。それでいて,「茶の間ストリーミング」の場合,画像クオリティも,番組としてのクオリティも求められることになる。となると,テレビ局や映像制作会社の手によるものでないとしんどいのかもしれない。そうなってくると,茶の間ストリーミングは,

1.テレビ番組のアーカイブ 2.ワールドカップのテレビで放送されない対戦の生中継 3.××県人の高体連県大会中継 4.花火大会中継 5.リオのカーニバル多元中継

といったものに限定されてしまうような気がする。何か,寂しいが……。ストリーミング推進派の私だが,どうも,最近はそんなことばかり考えてしまうのだ。

 昔,ある人に言われたことがある。

「アンタねぇ,昔,CDが出たころ,『あんなチッコいジャケットじゃダメだよ。やっぱりLPレコードじゃなきゃ』って言ってなかった? 今はどう? CDで平気でしょ? それと同じで,慣れちゃうもんなんだよ。これからの若い人達はパッケージなんてものにこだわんないよ」

 確かに,ごもっともな意見である。実際,音楽のダウンロード販売という商売は存在している。そして,この先には,「これからの人は,データがどこにあるかなんてことにこだわんないよ」という言葉が続くのかもしれない。そうなれば,ストリーミングは「アリ」である。

 だけど,本当にそういう時代が来るのだろうか? 私はどうしても思えない。そんな私は,やっぱり古い人間なのだろうか?

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[姉歯康ITmedia]

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