光通信による“世界初”の研究ネットワーク「スーパーSINET」きょう開通式

文部科学省国立情報学研究所はWDMと光クロスコネクトの技術を用いた,研究ネットワークの運用を開始した。現時点で世界最高クラスの通信速度をうたっている。

【国内記事】 2002年1月9日更新

 文部科学省国立情報学研究所は1月4日より,光通信の技術を用いた学術研究基盤となるネットワーク「スーパーSINET」(さいねっと:Science Infomation Networkの略)の運用を開始した。1月9日には報道向けの発表とともに,開通式が行われた。


会場ではテープカットが行われた。一番左が日本テレコム最高顧問の坂田浩一氏,左から2番目が文部科学大臣政務官の加納時男氏

 スーパーSINETとは,大学等の研究拠点をWDMと光クロスコネクト(OXC)技術を用いて接続した,10Gbpsの通信速度を持つネットワーク。研究パートナーには入札によって日本テレコムが選ばれており,同社が提供する約30波長の光伝送システムが利用される。

「2005年のネットワーク」

 従来,国立情報学研究所は研究用の情報通信基盤として,数百Mbpsレベルの通信速度を持つネットワーク「SINET」を運用してきた。これは北海道から沖縄に至る約750機関を接続するための,インターネットの基幹網。しかし近年,技術の進歩もあり,より高度なネットワーク整備が求められていた。

 今回開通したスーパーSINETは,全国に展開されるSINETの中の,東名阪のネットワーク部分に置き換わるかたちで運用される。バックボーンは10Gbpsで,研究機関を1Gbpsでつなぐ。

 光クロスコネクトによりネットワーク内で“光―電気”の変換の必要がなく,すべて光信号のまま切り替えられる高品質な伝送が特徴。動的制御が可能なため,柔軟なネットワークが実現するという。国立情報学研究所長の末松安晴氏は「世界で最初に光クロスコネクトを使用するインターネット。2005年ごろのネットワークを先取りした」と胸を張る。

 今後,具体的には遺伝子情報解析(バイオインフォマティクス),高エネルギー物理学・核融合科学,宇宙化学・天文学,スーパーコンピューターなどと連動した分散コンピューティング(GRID)などの分野で,データのやりとりに利用される。

 スーパーSINET推進協議会委員長の浅野正一郎氏によれば,「たとえば宇宙からの電波信号をアンテナで受信する際,複数の地点で受信したデータをリアルタイムで集合することで惑星・恒星の形状究明に役立つ」。研究現場では多地点のデータを瞬時に集める必要が出てくるため,こうした機会にギガビットクラスのネットワークが役立つという。

“科学立国日本”を目指して

 SINETは平成13年3月にIT戦略本部が発表した「e-Japan 重点計画」にも取り上げられており,予算も平成13年度で68億円(うちスーパーSINET分が15億円)投下された国家プロジェクト。国立情報学研究所長の末松安晴氏も「これで世界的な大きな成果が上がれば」と期待しており,周囲の視線は熱い。

 会場では文部科学大臣政務官の加納時男氏が登壇し,スーパーSINETが「世界でも最高レベル」の技術であるとアピール。併せて現在の日本の状況にも触れ,科学立国として再生できることを力説した。


文部科学大臣政務官の加納時男氏

 「日本は科学技術の貿易収支で黒字だ。あの米国相手でも黒字となっている。最近では日本の悪いところばかりが指摘されるが,科学技術ではトップをいく分野がいくつかある。日本は必ず立ち上がれる」(加納氏)

 産官学の連携により,運用が開始されたスーパーSINET。国立情報学研究所の報道資料では,「日本の学術研究の発展を大きく促すものとして注目されるであろう」とその思いをつづっている。

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[杉浦正武,ITmedia]

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