Big Pipe:コンテンツ・アグリゲータって何?(3)〜SCEIの野望

昨年末から今年1月にかけ,SCEIは「PlayStation 2」を利用したブロードバンド・ビジネスに関するアライアンスを相次いで発表した。その内容から,SCEIのビジネスモデルを読み解いてみよう。

【国内記事】 2002年1月16日更新

 今回はコンテンツアグリゲーターの具体的事例としてソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI)の「PlayStation 2」(以下PS2)を取り上げる。昨年12月から本年1月にかけ,SCEIはPS2を利用したブロードバンド・ビジネスに関するアライアンスを相次いで発表した(関連記事1234を参照)。

 2000年3月4日に国内で発売されたPS2は,一時はその性能の高さ故にソフト開発が困難といわれ,タイトル不足も伝えられた。しかし,その後は順調に推移し,2001年12月末現在で国内出荷台数が800万台を突破,現在週23万台というスピードで普及している。

 PS2は,ゲームソフトとDVD-Video,音楽CDなどを視聴可能なエンタテイメントプレイヤーであり,単なるゲーム機という位置付けのシロモノではない。ブロードバンド・ネットワークに接続することで,PCに代わる家庭の中核情報マシンという位置付けを目指している。もともと,PlayStation自体がWorkstationというビジネスマシンの対抗概念から作られた名称である。

オンライン配信の仕組み

 SCEIの手掛けるブロードバンド・ネットワーク配信では,PS2本体に加えてハードディスクドライブユニットが必要である。このユニットには40GバイトのHDD,イーサネットポート,ブラウザが搭載されている。SCEIは,それをネットワーク配信を手掛けるISP事業者,あるいはコンテンツデリバリーネットワーク(CDN)事業で提携した委託事業者に販売し,その委託先がエンドユーザーに販売もしくはレンタルする。

 今回,SCEIは自らCDN事業や接続事業には関与せず,提携によって顧客拡大を図った。まずNTT-BB(BROBA),ヤフー(Yahoo!BB),AII,So-net,有線ブロードネットワークスと提携。さらに,富士通とソニーの間でニフティを巡ってM&A交渉が行なわれており,仮に国内最大のISPであるニフティがPS2対応となれば,まさに鬼に金棒だ。


クリックで拡大

 SCEIは,コンテンツデリバリーシステムの中においてDNAS(Dynamic Network Authentication System)という認証サーバシステムを提供することにより,ブロードバンド事業の基盤をおさえる。DNASは,コンテンツの著作権保護システムであり,本体・周辺メディア,DVD統合認証,ハードディスクインストール,期限機能付き利用許諾,ペアレンタルロック(年齢などによる視聴制限)を可能にする。

 ユーザーは,DNAS付きコンテンツをダウンロードもしくはパッケージ購入後,サーバにアクセスして鍵を貰い,はじめてプレイできる。もともとPS2本体には個別IDが付与されており,個人間の不正取り引きなどを阻止することも可能だ。

SCEIの収入源は?

 SCEIの収益源は4つある。1つは本体の販売だ。CPUなど半導体の歩留まりが改善されて製造原価が落ち,現状では若干だが黒字となってきた。しかし,競合の任天堂「GAMECUBE」やマイクロソフト「Xbox」に対抗するため,低価格競争の泥沼に陥る可能性もある。

 2つめは,ブロードバンドに対応する周辺機器だ。ネットワーク対戦でチャットを行なうためにキーボードもしくはVoIP対応のヘッドフォン+マイクなどが必要になる。周辺機器は,本体価格の低収益性を補うだろう。

 3つめは,ハードディスクドライブユニットのISP向け販売だ。そして4つめが,DNASのコンテンツ販売に対するロイヤリティ(DNASライセンス)収入である。これは,コンテンツが購入されるとロイヤリティが発生するレベニューシェアモデルであり,従来のパッケージプレスに応じたロイヤリティ徴収とは異なるモデルとなる。

 SCEIのコンテンツアグリゲートに関しては,当面はPlayStationおよびPlayStation 2のゲームに絞り込む予定だ。理由は,ネットワークゲームのヘビーユーザーが対象であること,そしてゲーム以外コンテンツ調達に関する権利処理の問題が考えられるが,音楽コンテンツに関しては目処がついているという。

 一方,映画に関してはもう少し時間が掛かりそうだ。SCEIは,SME(Sony Music Entertainment),SPE(Sony Pictures Entertainment),Movieflyの協力を得て,今後音楽と映画の配信事業を強化して行くだろう(9月28日の記事を参照)。

 詳細は,2月に開催される「Playstation Meeting 2002」で発表されるが,キラーコンテンツとして,昨年出資したスクウェアの「ファイナルファンタジーXI」(FFXI)が期待されている。FFXIは,現在ベータ版のテスト稼動をしており,3月から本格的に事業を展開する予定だ。

 FFシリーズは,毎回最低でも280万本の出荷を見込めるビッグタイトルだが,今回は未知のネットワーク対応サービスに備えてか,目標は100万本,「PlayOnline」(スクウェアのオンラインサービス)での損益分岐点は20万会員(年間平均)としている。FFXIがトリガーとなり,どれだけPS2のブロードバンドユーザーを広げるかが注目される。

 ターゲットは20代後半〜30代前半男性であり,既にPCでブロードバンド体験しているユーザー層と重なる。しかし,PS2でしかできない魅力あるコンテンツが登場すれば,この層はハードディスクドライブニットと周辺機器を買いそろえてでも飛びついてくるだろう。

 SCEIでは,HDDユニットの販売目標を「年間数百万台」としている。その数値が実現するか否かは,コンテンツ(Product),ネットワーク(Place),HDDユニットのプライシング(Price)戦略,プロモーション(Promotion)戦略の4Pマーケティングの確立と,ファーストアタックのターゲット戦略の成功にかっていることは間違いない。

 その鍵となるのは,PC+ブロードバンドに対抗できるコンテンツの調達であり,SCEIのコンテンツアグリゲート能力によるところが大きい。

関連記事
▼ 有線ブロードもPS2向けサービス SCEIと提携
▼ SCEIとAII,PS2向けネットワークサービスで提携
▼ Yahoo! BBにプレステ2がつながる日
▼ プレステ2のブロードバンドサービス,いよいよ本格展開へ

関連リンク
▼ ソニー・コンピュータエンタテインメント

[根本昌彦,ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


モバイルショップ

最新CPU搭載パソコンはドスパラで!!
第3世代インテルCoreプロセッサー搭載PC ドスパラはスピード出荷でお届けします!!

最新スペック搭載ゲームパソコン
高性能でゲームが快適なのは
ドスパラゲームパソコンガレリア!