好調なブロードバンド,そのわけは――イー・アクセス千本社長

昨年から大きく発展を始めたブロードバンド業界。イー・アクセスの千本氏はその好調ぶりをアピールするとともに,成長の継続にはある要因が欠かせないと主張する。

【国内記事】 2002年1月24日更新

 「最近は新聞を読んでも,不況の話題ばかり。だがそんな日本の産業界にあって,ブロードバンドだけは世界に誇れる状況だ」――。1月24日からパシフィコ横浜で開催された「Electronic Design and Solution Fair 2002 」では,イー・アクセスの千本倖生社長がこんな出だしから講演を始めた。


イー・アクセスの千本倖生社長

 千本氏が紹介したのは,昨年1年間でADSL回線が大きく増加し,150万回線に達したこと(1月11日の記事参照)。同氏はさらに,今年末にはADSL回線が600万,CATVなども合わせたブロードバンドが1000万回線に達すると予測する。

 「アメリカや韓国は2001年初めにすでに300万人近いADSL加入者がおり,世界のブロードバンド大国だった。だが日本は,アメリカ産業界のトップが目をむくような伸びを見せている」(同)。

 同氏は今年中には日本が両国を追い抜き,“世界最大のブロードバンド国家”になると予想。「予想があたる確率は9割」と,見通しの明るさを強調した。


会場で示されたグラフ。青がアメリカ,紫が韓国,赤が日本

DSL業界は「健全な競争状況」

 好調の理由として千本氏は,日本のブロードバンド業界が“健全な競争状態”にあることを指摘する。通信事業者が市場原理に基づき,厳しい競争にさらされている。結果,消費者に利益がもたらされ,業界が活性化しているという。

 「昨年,孫さん(=ソフトバンク社長)がYahoo! BBで,ADSL事業に参入してきた。おかげで我々は苦労したが,マーケット全体にとっては非常によかった」(同)。

 逆にそれまで普及が遅れていたのは,「NTTグループが市場を支配し,反競争的な行為をしたためだ」と千本氏は言う。NTT東西が昨年12月から8MbpsのADSLサービスを開始した(10月25日の記事参照)ことについても,「新進のベンチャーが新しいサービスを生み出したのに,古い大企業が出てきて市場を荒らす。これは日本の典型的な悪い例」と,批判した。

 同氏が紹介するのは,米国のADSL業界。同国ではネットバブルの崩壊とともにベンチャー系の通信事業者が倒産し,「ISPはAOLぐらいしか残っていないし,通信事業は日本のNTTにあたるBell Operating Company(BOC)各社が独占している」(同)。BOCはライバル企業の倒産後すぐに,月額40ドルの通信費を50ドルに値上げしたという。

ベンチャーの力でさらなる発展を

 現存する通信事業者を,千本氏は大きく3つに分類した。

 1つめはNTTグループの“第1世代通信事業者”で,「社会でいうと60歳ぐらい」。2つめはKDDI,日本テレコムといった“第2世代通信事業者”で,「これは40〜50歳代といったところ」。3つめがイー・アクセス,ヤフー,有線ブロードネットワークス,スピードネットといった“第3世代通信事業者”で,「若手の企業だ」。

 同氏は米国でトップ10の企業の4〜5割がMicrosoft,Cisco,Intelといった比較的若い企業であることをひきあいに出しながら,会場にこう問いかけた。「ベンチャーと古い企業と,どっちが成長力があるか? どっちが社会環境にフレキシブルに対応できるか? 答えは明らかだ」(同)。

 ブロードバンドは日本の産業で好調な分野。そしてそのさらなる進展には,企業の新規参入や競争的通信市場の実現が欠かせない。それが千本氏の主張というわけだ。千本氏は「60,70の高齢企業にサロンパスを貼ったって,ダイナミズムは生まれない」と,辛辣だった。

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[杉浦正武,ITmedia]

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