リネージュは国境を越える――エヌ・シー・ジャパン野辺社長

4カ月にわたるテストサービスを終えたリネージュ。その中で,日本でのオンラインゲームのあり方が,少しずつ見えてきた。

【国内記事】 2002年1月29日更新

 昨年からのテストサービスも終了し,2月12日から正式サービスへ移行する多人数同時接続型オンラインRPG,「Lineage」(リネージュ)。オンラインゲームのゆくえを占う上でも,その有料化が成功するか,注目される。同ゲームの日本版を提供するエヌ・シー・ジャパンの野辺継男社長に,テストサービスの手ごたえと今後の展望について聞いた。


エヌ・シー・ジャパンの野辺継男社長

 野辺社長はテスト期間中,4カ月で15万ユーザーの登録を獲得したことについて「予想を上回る結果だった」と話す。同社は2001年9月27日より無料サービスを提供開始。「年内に10万人を目標にしていたが,12月中旬にはこれを達成した」という。

日本ユーザーは礼儀正しい?

 オンラインゲームで懸念されるのは,ネット上のコミュニティで最低限の“規律”が守られるかどうかということ。プレーヤー同士で雰囲気が悪くなってしまったり,風紀を乱す悪質なプレーヤーが多数存在するようでは,この種のMMORPGは立ち行かなくなる。

 この点について野辺社長は,「現時点の日本のユーザーは(リネージュが開発され,ヒットしている)韓国と比べて,良くも悪くも礼儀正しいようだ」と言う。「一定の距離を保ってプレイしている。人のアカウントをハッキングしてアイテムを奪うような悪質ユーザーも,特に見られない」。

 いっぽう韓国では,一部の悪質なユーザーが卑劣なやり方で他のプレーヤーやペットの犬を殺したり,ハッキングしてアイテムを盗んだ上,それをオフラインで売買するといったことが起き,一種の社会問題にまでなったりしている。野辺社長はこれを,アカウントの多さに起因すると見る。

 「韓国の人口は4700万人程度だが,同国内のアカウントは約270万。単純に考えて,実に人口の5%以上のユーザーがいることになる。このような状況では,予想もつかないことをするユーザーが出てくる」。

 言い換えれば,日本でもユーザー人口が増え,ゲームに熱中する人が増えれば増えるほど,こうしたトラブルが増加してくる可能性があるわけだ。

 こうしたことに備え,エヌ・シー・ジャパンでは今後,匿名性の高さから犯罪に悪用される可能性があるネットカフェ・漫画喫茶などに,ハッキング防止用ソフトを導入してもらう考え。エヌ・シー・ジャパンとしてもアカウントIDをしっかり管理するなど,対策を練るという。

ネットワークの安定性が重要

 野辺社長によれば,テストによってよく分かったのは,サーバおよびネットワークを安定させることが非常に重要であること。ネットワーク面が不調だと,たちまちユーザー数の伸びが鈍り,クレームの数が増えるという。

 「オンラインゲームは,最先端の技術を使用している。何千人というプレーヤーの同時アクセスを受け入れ,リアルタイムでデータを統合し,各プレーヤーに配信し直さなければならない」。改めて技術面の難しさを認識させられたかたちだ。

 エヌ・シー・ジャパンではユーザーアクセスの経路として,オープンなネットワークのほか,特定のIDC(インターネット・データ・センター)事業者が管理するネットワークを使用する。事業者は,IX(インターネット・エクスチェンジ)などでほかの通信事業者とも多く接続しているところを選定しているという。

 今後はIDC事業者に対してネットワークの改善要求を出していくとともに,ユーザー数の増加に合わせて随時,サーバを増強する予定。現在,上限5000人がアクセスできるサーバを3つ用意しているが,過去には1万4000人が同時アクセスしたケースもあったという。

日本における「プレステ2」の存在

 今後,オンラインゲームが普及していく際に,既存の家庭用ゲーム機と競合するのではないかとの意見がある。“いくら韓国でヒットしたといっても,向こうにはプレイステーション2(のような競合)はない(先日2月からの現地販売が発表された)”と,日本での成功を疑問視する声も聞かれる。

 これに対し野辺社長は「確かに韓国では正規ルートでPS2が販売されていないが,現実にプレイしているユーザーはいる。韓国のCATVでは,PS2のソフトの案内までしているところもある。また,台湾でもリネージュの登録ユーザーが230万人いるが,こちらはコンソールタイプの家庭用ゲーム機が普及している環境だ」と指摘。家庭用ゲーム機の普及が,オンラインゲームの普及を妨げない例だとした。

 その上で野辺社長は,「オンラインゲームとコンソールタイプのゲームは,そもそも性格的に異なる」と話す。

 「コンソールタイプのゲームは,製作者により予めシナリオと結末が与えられている。だがオンラインゲームは,リアルタイムで状況が変化するもの。構造だけが埋め込まれていて,ネット上の人間関係によってその場その場で全く新しい楽しみ方ができる」。

「リネージュは文化の違いを越える」

 野辺社長はリネージュについて,「人間の本能的な部分につながるおもしろさがある」と話す。

 たとえば初心者としてゲームに参加し,やり方が分からず途方にくれていると,上級のプレーヤーが効率的なプレイを教えてくれるといった人間関係が生まれる。また自分が上級者になったときには,逆に教える側にまわることができるという。

 「ゲーム内のプレーヤー同士の協力には,文化的な違いなど関係がない。テストサービスを見る限り,日本でも受け入れられたと考えている」。

 ブロードバンドの普及で,オンラインゲームもブレイクするのか。エヌ・シー・ジャパンではネットカフェや各プロバイダーと連携しながら,2002年度内に30万人の個人ユーザー(家庭でプレイするユーザー)を獲得することを目標にあげている。

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[杉浦正武,ITmedia]

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