ホームネットワーク構築は「ワイヤレス1394」が注目株?

ホームネットワークを構築する技術として,有望なのがワイヤレス1394。電灯線や無線LANより優れた面を持つという同技術の,概要を見てみよう。

【国内記事】 2002年1月30日更新

 ホームネットワーク構築に利用できる技術として,現状ではいくつかを考えることができる。有線ネットワークの技術なら,普及が進んでいる「イーサネット」や,家電を制御するのに有利な「電灯線」など。無線ネットワーク技術なら,省電力のためモバイルデバイスに向く「Bluetooth」もあるし,54Mbpsもの通信速度を実現する「IEEE802.11a」も有力だ。だが,その中の1つとして「ワイヤレス1394」も忘れてはならない。

 東京ドームで開催された「MATLAB&Partner Expo 2002」のメインカンファレンスでは,同技術について通信・放送機構 新川崎リサーチセンターの有田武美氏が講演を行った。


新川崎リサーチセンターの有田武美氏

 ワイヤレス1394とは,最大400Mbpsの伝送速度を持ち,主に映像機器の接続に利用されている「IEEE1394」を無線化する技術。新川崎リサーチセンターと慶応義塾大学で共同研究が行われており,1998年からはMMAC(マルチメディア移動アクセス推進協議会)の無線ホームリンク特別部会で検討が進んでいる。


各種無線ネットワーク技術の比較(クリックすると拡大)

 標準規格では変調方式にOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)を採用し,5.2GHzを中心に4チャネルを配置,最大70Mbpsの伝送速度を実現する。1対1もしくは1対多の伝送モードでIsochronous(同期)転送に対応しているため,リアルタイムの通信が可能だ。このためIEEE1394同様,画像・音声といったストリームデータのやりとりに向いている。もちろんIP伝送も可能。

 OFDM方式を採用して5.2GHz帯を利用するというと,IEEE802.1aも思い浮かぶが(上図参照),こちらはリアルタイム伝送に対応していない。最大伝送速度もワイヤレス1394の方が,より高速だ。

 プロトコルスタックとしては物理層,MAC層の上に1394CLが乗ってくるかたち。CL層では登録・認証機能を備えているほか,PC側が周辺機器に対する番号振り直しを行う「バスリセット」機能を抑止している。このため電源のオンオフにとらわれない,柔軟な接続が可能だ。

 ワイヤレス1394のトポロジーは,中心に「ハブステーション」があって,複数の「ワイヤレス1394ステーション」端末を管理する形式(下図参照)。どのワイヤレス1394ステーションがデータを伝送するか,ハブステーションが一元管理する。データはワイヤレス1394ステーション同士が,P2Pでやり取りできる。


 ネットワーク上に「ワイヤレス1394ブリッジ」を用意すれば,有線のIEEE1394と相互接続することも可能になる。ハブなどを経由した中継伝送,ブロードキャスト機能もサポートしており,ネットワーク全体で最大63(1バスあたり)×1024のノード数が実現されることになる。

昨年3月にARIB標準規格に

 新川崎リサーチセンターでは現在,ワイヤレス1394のプロトタイプによって実験・評価を進めている。ETSI-BRAN(欧州電気通信標準化機構-広帯域無線アクセス網)と「リエゾン関係」(liason:連携役)を締結しており,共同して標準化活動を進めている。

 昨年3月27日には社団法人電波産業界(ARIB)で「STD-T72」として,標準規格が制定された。ただし,まだ「IEEE1394.1」(ブリッジの仕様)が確定していないため,ブリッジに対応したワイヤレス1394については,今後さらなる検討を行う余地がある。

 同様の技術としてワイヤレスLANが普及していることもあり,今後はワイヤレスLANをベースに1394機能を追加した規格へ方向修正される可能性もある。有田氏によれば「ヨーロッパはそちらの方になびいているようだ」という。

 有田氏の予想では,今後ホームネットワークは「単なる制御ツールでないエンタテインメント・ツールに」変化するという。「動画像の高速リアルタイム伝送が中心」となり,インフラは「有線・無線を組み合わせた」ものになる。これらの用件を満たす技術として登場してくるのがワイヤレス1394。同技術は今後も,動画像通信方式の改良などでさらなる応用研究が進められていく。

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関連リンク
▼ マルチメディア移動アクセス推進協議会(MMAC)
▼ 通信・放送機構

[杉浦正武,ITmedia]

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