IPv6――普及の条件

IPv6が取り沙汰されて既に数年が経つが,いまだニュースの内容は「実験」ばかり。実際はどこまで進んでいるのだろうか? NTT,IIJ,日立製作所がそれぞれの立場からIPv6の未来を語った。

【国内記事】 2002年3月6日更新

 ほぼ無限といえるアドレス空間は,端末個々の識別を容易にし,それぞれの機器に適したネットワークアプリケーションの提供を可能にする。IPsecの標準実装はセキュリティを高め,1対多/多対多の通信が放送・コミュニケーション分野のアプリケーションを進化させるだろう。

 IPv6に関するバラ色の予測なら,いくらでも書き連ねることができる。しかし,IPv6が取り沙汰されて既に数年が経つが,いまだニュースの内容は「実験」ばかり。実際はどこまで進んでいるのだろうか? NTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)主催のセミナーでは,NTT,IIJ,日立製作所がそれぞれの立場からIPv6の未来を語った。

普及の条件は3つ

 仕様としてのIPv6は,既にIETFでDraft Standard化されている。1999年にはアドレスの割り当てが正式に開始され,モバイル端末に対応する「Mobile-IPv6」やDNS,ヘッダ圧縮など,関連する重要な拡張機能もほぼ骨子は固まった状態だ。

 IPv6の実用化に向けた研究は世界各地で進められている。とくに,日立製作所ネットワークソリューション事業部キャリアソリューション本部長の武居徹氏によると,「日本が突出している」状況だという。実際,日本では産官学一体となってIPv6の研究・啓蒙活動を行い,通信事業者やISPも一部で接続サービスを開始している(下記の関連記事を参照)。

 ただし,その多くは実験サービスであり,たとえ商用と銘打っていても,「ユーザーは研究のために導入している」のが実状。やはり,研究と実験の域は出ていない。

 インターネットイニシアティブ(IIJ)技術本部運用部の三膳孝通部長は,日本のインターネットを黎明期から見てきた経験をもとに,IPv6移行の条件を分析した。

「1994年頃まで,インターネットは一部の限られた人たち(=組織)しか使っていなかった。当時は専用線で接続し,端末はワークステーションに近いものがメイン。ネットワークを流れるトラフィックはFTPやネットニュースがほとんどを占めていた」。

 ところが,1995年頃に状況は急変する。端末は安価なPCとなり,一般ユーザーが電話回線を利用してインターネットに接続しはじめた。アプリケーションはWebが主流になり,トラフィック全体の実に9割を占めるようになる。

「契機は,WebとPPP(=公衆回線で接続する技術),そしてWindows 95の登場だ」(同氏)。回線,端末,アプリケーションがそろったとき,インターネットは姿を変える。これが三膳氏の提示した条件だ。

回線はいつでも広がる

 回線という点では,既にいくつかのIPv6実験ネットワークが存在する。とくにNTT研究所の持つものは,国内外63の組織が接続する世界最大規模だ。

 国内をカバーする大規模バックボーンこそ欠けているが,NTT情報流通プラットフォーム研究所次世代情報ネットワークプロジェクトマネージャの市川晴久氏は,「IPv6の商用サービス開始に加えて,国家的なIT強化施策により,非営利の大規模IPv6バックボーンが出現するだろう」と予測した。

 e-JAPAN戦略では,国内のインターネットをIPv6に移行させることを基本姿勢としている。目玉の1つである電子政府の具体像は未だ明らかにされていないものの,2月28日には総務省が地方自治体向けのIPv6対応データセンター構築に無利子の貸付を行うと発表。少なくとも,着々と準備が進められているのは事実だ。

 また,ネットワークの移行手順は既に示されている。

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[芹澤隆徳,ITmedia]

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