キラーコンテンツ? やっぱアダルトでしょ

誰もが感じているけれど,なかなか言い出さないことを,今回は敢えて書いてみよう。

【国内記事】 2002年3月13日更新

 誰もが感じているけれど,なかなか言い出さないことを,今回は敢えて書いてみよう。ブロードバンドのキラーコンテンツはアダルト。それも動画である。インターネットが誕生する遥か前から,コンテンツといえば「本能に訴えるものが最強」と相場が決まっている。

 もっとも,単にそれだけを言いたいのなら,こんなコラムを書く意味はない。今回は,ブロードバンドの市場環境がアダルトコンテンツを求めている…のかもしれない,というお話だ。

著作権問題と企業姿勢

 その根拠の1つは,著作権問題にある。動画コンテンツをオンライン配信する場合,制作会社のみならず,監督や出演者など周囲の「著作隣接権者」たちの了承がすべて必要になるという煩雑さだ。また,著作権管理システムにおける確立されたスタンダードがない現状では,ハリウッドの映画会社を筆頭とするコンテンツプロバイダーたちは,違法コピーの懸念を払拭できずにいる。

 しかし,その問題をアダルトビデオメーカーはものともしない。CD-ROMに小さなQuickTime動画を記録していた時代,インターネットの普及期,それ以前のビデオ黎明期から再利用の可能性を重視し,著作権は一括してメーカーが管理。新しいメディアをビジネスに活かす方法を常に模索している。まさに,あっぱれな商魂と言えるだろう。

 こんなエピソードがある。「レンタルビデオ・オンライン」の名称で春からサービスを開始するキュービーは,コンテンツ獲得のためにさまざまな企業に働きかけた。同社の場合,動画そのものをSTBのHDDにダウンロードして1週間あたり数百円で再生できる,まさにレンタルビデオのシステム。1週間経つと,ファイルが自動消去される仕組みだ。

 もちろん,同社はメジャー映画から教育番組まで,多方面のコンテンツを集める方針だ。しかし,最初に集まったのは邦画。それも大部分がアダルトだったという。この話を聞いたのは昨年6月の「NetWorld+Interop 2001 Tokyo」だったのだが,状況の変化を期待したいところだ。

確かなニーズの存在

 オンラインでアダルトビデオをレンタルすることは,いくつかの点でユーザーにメリットがある。ビデオをレンタルショップまで借りにいく手間がない。だから恥ずかしくない。また,家族のいる人なら,自宅にビデオテープを置いておく危険性にも留意しなければならないが,そんな心配もいらない。インターネットに繋がっているのはPCだから,プライベートな書斎で,あたかも仕事をしているように見せかけながら,お気に入りのAVを鑑賞できるだろう。

 FTTHをNTTに先駆けて展開した有線ブロードネットワークスは,現在102タイトルのアダルトコンテンツを用意しているが,やはりこのジャンルが「ダントツで人気がある」という。同社の場合は,さすが光接続というべきか。今日発表された「X CITY」よりも高画質な2Mbpsバージョンだ。ストリーミング形式でダウンロードはできないが,課金後1日は,何度でも再生できる(料金は1本あたり500円)。

 また,X CITYを運営するアルケミアの五十川匡氏は,「X CITYの前身であるTHE CITYでも300Kbps,500Kbpsのストリーミングデータを提供していたが,最近は会員の30〜40%がこうした高画質版を選択するようになった」と話している。ブロードバンドインフラの普及は,ユーザーの画質に対する要求も押し上げたようだ。

コンテンツプロバイダーのメリット

 一方,オンラインAV配信には,コンテンツ提供者にもメリットが多い。なんといっても,高い検索性能を提供できるからだ。五十川氏は,オンライン配信のポイントはAVのデータベースだと言い切る。「ジャンルや女優はもとより,キーワードなどで検索ができる」。

 これにより,ユーザーは,約4000本,総容量で700〜800Gバイトに及ぶという膨大なAVタイトルの中から,お気に入りの女優を探す,あるいはジャンルで選択することができる。つまり,メーカーとしては,ショップであれば在庫管理に頭を悩ませるようなマニアックなタイトルでも,遠慮なく陳列できるわけだ。潜在的な需要を喚起するうえでも,オンラインデータベースの意味は大きいだろう。もちろん,パッケージ化にかかるコストもかからない点も併記しておきたい。

 「X CITY」は,ギガビットクラスのバックボーンを持つ大手CDN事業者(社名は一応非公開らしいので書かない)のインフラを使い,国内5〜6ヵ所のiDC/ISP拠点にキャッシュサーバを置くという。今後は,ISPへのコンテンツ提供やホテルへの配信など,B2B事業にも着手する。

 AVタイトルは,ビデ倫を通すものだけでも毎月400〜500本はリリースされるという(正確な数は誰も知らないらしい)。コンテンツの量とニーズの高さは,数あるブロードバンドコンテンツの中でもピカ一。インターネットとの親和性も非常に高い。そして何より,新しい技術やメディアを,まず「新しい流通手段」として見るAVメーカーの態度は,一般のコンテンツプロバイダーと一線を画すものだ。アダルトというだけで,とかく色眼鏡越しにみられがちだが,既に無視できない市場に育っている。

関連リンク
▼ 有線ブロードネットワークス
▼ キュービー

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[芹澤隆徳,ITmedia]

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