Big Pipe:著作権保護技術の動向と近未来

コンテンツの有料配信ビジネスで重要になるのが著作権保護対策だ。対策としては,「不正コピーができない」仕組みを整えることが大前提だが,最近はコンテンツを暗号化して送信するDRMシステムが注目を集めている。

【国内記事】 2002年3月26日更新

 コンテンツの有料配信ビジネスで重要になるのが著作権保護対策だ。対策としては,「不正コピーができない」仕組みを整えることが大前提だが,現在はユーザー認証とコンテンツの配信方法の両面からのアプローチで,実質的な不正コピー防止が図られている。

 まず,「不正への抑止効果」を狙うものとしては,コンテンツ自体にIDや著作権情報を埋め込み,不正検出を可能にするという方法の導入が進んでいる。例えば,コンテンツIDフォーラムは全コンテンツ共通の「コンテンツID」を付け,電子透かしを入れることを提唱した。(2001年12月の記事を参照)。ただし,コンテンツIDに関しては,既に独自のIDを利用している企業などにシステムを変更する必要が生じるため,業界が一致団結するのは難しいという側面もある。


著作権保護技術の分類(クリックで拡大)

 現在の有料配信では,ID/パスワードで認証することが多い。しかし,IDやパスワードを会員が他人に教える危険性もあり,迂回してコンテンツサーバにアクセスすることも不可能ではない。またストリーミングであっても,データを録画してしまうソフトも存在し,不正アクセス,不正コピーの防止策としては万全ではない。こうした懸念から,コンテンツを暗号化して送信する仕組みを持つDRM製品が注目を集めるようになっている。

DRMの仕組み

 最近では,デジタルコンテンツの著作権管理技術を総称してDRM(Digital Rights Management)と呼んでいるようだが,ここではより狭義の,コンテンツを暗号化して送信するシステムをDRMとして話を進めていきたい。

 DRMでは,ユーザーの要求によって暗号化したコンテンツを送信し,決済処理が終了したあとで復号用の暗号鍵を送信する。複合鍵の中に書き込まれたユーザーのPC固有の情報と,再生するPCの情報が一致して初めて復号できる。

 製品としては,マイクロソフトの「Windows Media Technology」(WMT)や,リアルネットワークスの「Media Commerce Suite」に含まれるDRMが有名だが,ほかにエム研の「clavispac」やイージーシステムズジャパン米InterTrustのDRMをカスタマイズ),米SecureMediaなどのDRM製品がある。

 ただし,現状のDRM対応配信サービスでは,Windows Media Technologyを採用していることが多い。理由としては,リリースが早かったことや,再生用の「Windows Media Player」が普及していること,(サーバで儲けるビジネスのため)DRM自体のロイヤリティを徴収しないこと,コンテンツ制作支援ツールが充実していること,などが挙げられる。

 一方,マイクロソフト以外のDRMメーカーの場合は,独自技術を配信事業者に売り込み,ライセンス料を徴収するビジネスモデルだ。配信事業者が採用する判断基準は,価格,プレーヤーの頒布数,DRMの機能などだが,プレーヤーの頒布数ではマイクロソフトやリアルネットワークスにはかなわないため,市場は独自プレーヤーを持ちたい事業者などに限られてしまう。

 リアルネットワークスは,プレーヤーの普及という点では問題ないが,ライセンス料が発生するのがネックだ。マイクロソフトは,OSにプレーヤーをバンドルすることで,ますます強くなっていく。


DRMビジネスの全体像(クリックで拡大)

 結局,PC上での争いはすでにマイクロソフトの優位性を覆せないものとなっているため,日本のメーカーは,ゲーム機,STB,PDA,携帯電話といった情報家電分野に狙いを定めている。ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI)は「Playstation 2」をプラットフォームとするコンテンツ配信ビジネスにおいて,独自の認証システム「DNAS」を発表。プレステ2向けに配信したければ,ゲームメーカーはこれに対応せざるを得ないという意味で,DNASは絶対的な優位性を持っている。

DRM規格を普及させるためには,結局,ほかのコア商品を持っていることが重要になる。どの部分でユーザーを確保できるのかが,自社規格の普及を大きく左右するわけだ。

My Sony IDの効果

 3月13日,ソニーグループは,これまで各社ばらばらだったユーザーIDを統一し,「My Sony ID」を発行することを発表した。

 白物家電など,あらゆる機器がネットワークにつながるユビキタス時代において,統一IDによってコンテンツやサービスを販売する。IDがクローズドでユーザーが多ければ,巨大な課金・認証プラットフォーム,著作権管理体制を構築できるだろう。

 しかし,ソニーグループが持たないジャンルもあり,クローズドであるが故に他社の反発を買うおそれもある。また,顧客に不便さを感じさせる結果にもなりかねない。今後,この辺りの二律背反をどうクリアしていくのか,力量が問われるだろう。

 ほかの事業者にも,例えばISPが自社ユーザー向けには独自専用プレーヤーを提供する,ハードメーカーがアプリケーションをハードに組み込む,というクローズドな環境からデファクト化を図って対抗しようという動きがある。ただし,コンテンツ〜プラットフォーム〜受信端末と揃って持っているという強み,規模の強みを発揮できる企業はなかなかない。

 どちらかといえば,DRMメーカーと通信事業者,コンテンツ配信事業者,機器メーカーなど,水平展開型の企業がアライアンスを組む動きが出てくると予想される。その中で,DRM事業は技術力よりも販売力の差で淘汰・再編されていくだろう。日本にもベンチャー系DRMメーカーは数多くあるが,技術的な優位性ばかりを語り,このような競争を疎かにしていては,生き残ることも難しい。

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[根本昌彦,ITmedia]

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