双方向でWebドラマはこう変わる――NTTサイバー研

映像を見つつ,画面で気になったものをクリックすると情報が表示される。そんな技術の実験を,NTTと角川書店が行っている。

【国内記事】 2002年4月19日更新

 NTTと角川書店は3月30日から5月31日まで,共同でWebドラマの配信実験「Vi! Click」を行っている。その特徴は,画面上で気になったものをクリックすると関連情報が示されるなど,随所に双方向の工夫を凝らしていることだ。


Webドラマ「命日」(原作:小池真理子,出演:山口紗弥加ほか)の1ショット。フレッツユーザーのみ,無料で視聴可能

 まずは,上の写真をみてほしい。映像の下の方に水色のパネルがあり,その中にビデオテープなどのアイコンが見える。このアイコンは,双方向の操作が可能な場面になると自動的に出現(点灯)する。これによってユーザーは「今,クリック(もしくはほかの操作)をするとイベントが起こる」と分かる仕組みだ。

 アイコンは,その機能によって,「DynaVideo」「CyberCoaster」「SyncBook」の3つのタイプがある。

 DynaVideoは,映像の中の特定の被写体をクリックすると別の動画が再生される機能。たとえば登場人物が「昔はよかった……」といったときに“DynaVideoアイコン”が点灯,そこでユーザーが映像をクリックすると回想シーンに飛ぶ,といった使い方だ。


DynaVideoでは,別の映像が再生される(クリックで拡大)

 CyberCoasterは,映像の中の物体をクリックして動かせる。ユーザーの手の動きに連動して映像が切り替わるため,人物を移動させて視点を変えることも可能だ。


矢印の向きに,ものを動かせる(クリックで拡大)

 SyncBookとは,静止画と動画を連動させる機能だ。たとえば,アルバムをめくっているシーンで,このアイコンをクリックすると左上に動画,中央にアルバムが表示された画面に切り替わる。ここで,映像で人物がアルバムをめくると,静止画も次のページに変わる――といった使い方がある。


静止画と動画が同期する(クリックで拡大)

 映像では,シーンによって用意されるアイコンの種類や数は異なる。実験では,どのくらい用意すべきかも含めて調査されるという。

技術には独自の記述言語を使用

 「Vi! Click」で使われているこれらの技術は,NTTサイバーソリューション研究所が開発したもの。「100MbpsのFTTHに備え,双方向のエンターテイメントやeコマースへの実用を目指した」という。

 同研究所主任研究員の阿久津明人氏は「Vi! Clickのユーザーインタフェースでは,映像部分はHTMLで記述し,その外枠部分はXMLで記述した」と話す。ユーザーがWindows Media Playerの画面をクリックすると,そのHTMLファイルからJavaのプログラムを呼び出して,さまざまな操作を実現しているわけだ。

 動画と静止画を連動させる仕組みには,SMIL 2.0(Synchronized Multimedia Integration Language)を意識しつつ,拡張を施した独自の言語を利用しているという。

 「SMILのように,動画と同期してテキスト・静止画を連続提示するにとどまらず,ユーザーが静止画を操作するのに合わせて動画を再生させるといったことも実現している」(阿久津氏)。

 この記述言語用のオーサリングツールも開発済みだという。NTTサイバーソリューション研究所が以前から研究してきたもので,「昨日,今日開発したものではない。完成度は高い」(同)。

 アイコンが表示されるタイミングは,最初に映像を再生する時点で,クライアント側がサーバからイベントのテーブルを取得する。「つまり,クライアントはどのタイミングでイベントが起こるか知っている」(同)。

 双方向の操作が可能な場面になると,クライアントがサーバに問い合わせて,アイコンをダウンロードしてくる。「ユーザーが何もしなくても,勝手にアイコンが表示されるのがポイント」だという。

双方向サービスの可能性は広がるか

 阿久津氏は,これらの技術はさまざまな応用が考えられると話す。「たとえば,SyncBookを使えば,旅行番組でルートに合わせて歩行者から見た映像を展開できる。CyberCoasterを利用すれば,e-コマースの製品紹介などで,ユーザー自身があれこれと動かして確認できる」(同)。

 ただ,実際にサービスやコンテンツへの応用が具体的に決まっているわけではない。「マーケットができるかどうか,NTTがリスクテイクして調査・研究している段階。NTTグループに採用されるかどうかも,まだ分からない」(同)。実験では「おもしろいか」「料金はいくらなら利用するか」といったアンケートのほかに,ユーザーのログをとっていつ双方向操作を行ったかなどのデータも集める。それらのデータを踏まえて,今後の展開を見極める予定だ。

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関連リンク
▼ Vi!Clickの実験サイト

[杉浦正武,ITmedia]

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