ニュース 2002年5月14日 08:50 PM 更新

プロバイダー責任法の「発信者情報」について米国政府が意見

プロバイダー責任法第4条第1項で規定する「侵害情報発信者の特定に関する情報」に関して行った意見募集の結果が公開された。IPアドレスの取り扱い方法に付いて、意見が集中している

 今月施行予定の「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(通称:プロバイダー責任法)。10日には、同法第4条第1項で規定する「侵害情報発信者の特定に関する情報」に関して行った意見募集の結果が公開されたので、その内容を見てみよう。

 このアンケートは、名誉毀損やプライバシー侵害に当たる情報を発信したユーザーについて、どのような情報を公開するべきか、総務省が一般に意見を求めたもの。プロバイダー責任法では、権利を侵害されたとするユーザーが、プロバイダーに対して発信者情報の開示を求めることができるとされている。総務省では、「氏名または名称」「住所」「電子メールアドレス」「IPアドレス」の4項目を総務省案として提示していた。

 意見は、ISPや通信事業者のほか、個人、ならびに米国政府などから寄せられた。

グローバルIPアドレスはどうする?

 総務省案に対する意見で最も多かったのが、IPアドレスの扱いについて。

 「IPアドレスが動的に割り当てられている場合、発信者が特定されるためには、秒単位の時刻情報が併せて必要となる。この案がIPアドレス単体の情報のみを想定しているとすれば、発信者特定という目的に対して有意な情報とはならない」(インターネットイニシアティブ)

 「IPアドレスについては、発信者情報としての有用性および確実性に疑問。(中略)通信データのキャッシュ技術や、動的にIPアドレスの割当てを行う技術を利用する場合、実際に発信者が利用した時点と発信者情報を開示する時点でIPアドレスが異なり、一意に発信者を特定できない場合がある」(ケーブル・アンド・ワイヤレス・アイディーシー)

 「IPアドレスは、いまだ一般的な日本語とは言えないため、定義規定を置くべきである」(社団法人 電子情報技術産業協会)

 総務省ではこうした意見に対し、「動的に割り当てられるIPアドレスについてはいわゆるタイムスタンプを含む趣旨であり、省令の策定に当たっては、この点を条文上も明確にする予定である」との考え方を示している。IPアドレスの定義については、「省令の策定に当たっては、IPアドレスについて、定義規定を置く予定」(総務省)だという。

 また、IPアドレスの公開自体に疑問を投げかける意見もあった。

 「IPアドレスは家でいうと“鍵”に相当するようなものであるから、開示にあたっては慎重であるべきである。(中略)これが情報請求者によって不当に悪用される危険性も考慮しなければならない。グローバルIPアドレスでは必ずしも発信者の特定にはつながらない点も考慮が必要である」(個人)

 これについて総務省は、

 「発信者情報の開示は、通信の秘密や表現の自由という重大な権利利益に関する問題である上、ひとたび開示されてしまうと原状回復は不可能であるという性質を有していることから、開示請求の対象となる発信者情報は、訴訟による権利回復を可能にするという制度の趣旨に照らして必要最小限の範囲に予め限定するのが相当である。もっとも、特定電気通信役務提供者の中には、無料の電子掲示板の設置者等、氏名や住所を通常は保有していない者も存在する。このような場合であっても、電子メールアドレスやIPアドレスは記録されていることがあるものと考えられ、これらの情報も発信者を特定するための手掛かりになり得るものである」(総務省)

 と回答している。

 また、米国政府は次のような意見を寄せた。

 「裁判所に命令されない限り、役務提供者が情報開示の要請に応じる義務は法律には記されていないため、情報開示の要請を行う際に著作権保有者が決める事のできる内容である身元特定のデータ要素の一覧を、総務省が発行する理由はない。(中略)基本的に、侵害情報を掲載している発信者を特定するために有用であれば、権利保有者は役務提供者が保有しているいかなる情報をも要求する事ができるはずである」

 総務省に届いた意見は全部で11件(発信者情報に関するもの以外は除く)。そのほとんどが、総務省が挙げた4項目について見直し、または取り扱い方法の確認を申し出たのに対し、米国政府は「DMCA」(デジタルミレニアム著作権法)を例に挙げ、より積極的に「発信者を特定するために有用な情報全て」を公開するべきだと主張している。

 これに対して総務省では上記の「発信者情報の開示は通信の秘密や表現の自由〜」と同じ主張を繰り返している。

 なお、プロバイダー責任法では、プロバイダーが、権利を侵害されたと主張するユーザーからの開示請求を拒否したことで損害が発生しても、プロバイダーに「故意または重大な過失」がなければ免責されることになっている。

関連記事
▼ プロバイダー責任法で何が変わる? 総務省大村氏に聞く

関連リンク
▼ 「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第四条第一項の発信者情報を定める省令(案)」に対する意見募集の結果

[ITmedia]

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