ニュース 2002年5月30日 00:35 AM 更新

「C.x」のメリットとデメリット

アッカ・ネットワークスが採用を表明した「C.x」。オーバーラップ技術により、下りプラス500Kbpsを実現するADSLの高速化&長距離化技術だが、デメリットもあるようだ

 米GlobespanVirataの新しいADSL技術「C.x」。採用を決めたアッカ・ネットワークスは、電信電話技術委員会(TTC)の標準化を待っている状況だ。しかし、上りと同じ周波数帯に下り信号をオーバーラップするという手法は、上り方向の速度に影響を与える可能性がある。

 C.xは、DSLAMがISDNからの干渉を受けにくい時間を狙い、上り用の25本の搬送波を下りにも割り当てることで下りスピードを向上させる仕組みだ。オーバーラップした電気信号は、エコーキャンセラ技術を使い、ADSLモデム内で分離する(4月15日の記事を参照)。これにより、「距離に関わらず下り速度を500Kbps上乗せする」という。

 ただし、競合する米Centillium Communicationsのコーポレートコミュニケーション担当ディレクター、Laurie Falcorner氏は、「NTT収容局から距離があるC.xユーザーの場合、上り方向は従来のAnnex Cよりもスピードが落ちる可能性が高い」と指摘する。CO(局側装置)が受け取るアップストリーム信号が距離によって減衰しているため、同じDSLAMにC.xのポートがあると、同一の周波数に強い下り信号が流れ、影響を受けるという。「影響が大きい場合は、約20%低下すると予測される」(Falcorner氏)。

 これに対してGlobespan側は、Centilliunの主張を一部認めながらも、C.xユーザー同士が影響を及ぼすという点を否定した。「確かに、上り方向のスピードが落ちるケースもあり得る。しかし、原因は“自己干渉”であり、他ユーザーからの影響ではない」。

 自己干渉とは、DSLAMに近い場所で長い距離をされて弱っている上り信号が、周波数帯にある下り信号の影響を受けるというもの。Globespanのシミュレーションでは、アップストリームに平均10〜20Kbpsの速度低下が見られたという。

 「上りは影響が出る可能性があるが、下りはプラス500Kbpsが見込める。プラスとマイナスの割合は30対1程度であり、C.xがユーザーに利益をもたらすことは間違いない」(Globespan)。

 自己干渉の可能性は、イー・アクセスのCTO、小畑至弘氏も指摘している(5月13日の記事を参照)。同社がC.xの採用を見送ったのも、ここに起因するという。確かに、P2Pアプリケーションの流行などで上り方向の重要性が見直されている今、ユーザーによってはスピード低下を嫌うケースもあるだろう。

 しかし、下り方向はプラス500Kbps、NTT収容局から約6.9キロの地点でも200Kbps程度でリンクするという高速化&長距離化のメリットは捨てがたい(こちらもGlobespanの検証結果)。判断はユーザー次第だが、今は標準化の推移を見守りつつ、アッカのフィールドテストを待ちたいところだ。

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[芹澤隆徳, ITmedia]

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