ニュース 2002年6月4日 10:19 PM 更新

「3Gは幻滅期を過ぎ、そろそろ普及期に」〜ガートナー

期待を一心に集めたNTTドコモのFOMAが思うように契約者数を伸ばせない中、公衆無線LANサービスの発表が相次いでいる。しかしガートナーは、「3Gはそろそろ普及期に。公衆無線LANはビジネスとして成り立つか疑問」と分析する

 ガートナージャパンは6月4日、都内でブロードバンドとモバイル・ワイヤレスの市場展望についてのセミナー「Gartner IT Summit 2002」を開催。「3Gは幻滅期を過ぎ、そろそろ普及期に」、逆に新サービスの発表が相次ぐ公衆無線LANサービスについては「技術的には問題はないが、普及するかサービスが沈下するかの分かれ道」だと語った。

新サービスの幻滅の谷

 新技術は、黎明期を過ぎたあと過度な期待が起こり、人々は実際の内容に幻滅する。その後、啓蒙活動期を経て普及。安定期に入る──。ガートナーは新技術の普及までの流れをこのように見る。

 FOMAに代表される3G(第3世代携帯電話)や公衆無線LANサービス、そしてもっと大きなくくりである「ブロードバンド&モバイル・ワイヤレス」は、過度な期待を抱かれたのち幻滅期に入った。「あまりに期待が大きいため幻滅が起きる。本当にビジネスとしてやっていけるのか、を考える時期」(ガートナージャパン データクエストアナリスト部門マネージング・ディレクター兼主席アナリストの田崎堅志氏)


 幻滅期を過ぎたサービスは、インフラの充実と共に確実に普及が進む。「FOMAは2004年でかなりの伸びが期待される。これはインフラの全国カバーが完了するのと、端末価格が下がってくるからだ。2006年になって(現行のPDCと)世代交代する」(ガートナージャパン データクエストアナリスト部門テレコミュニケーション産業分析部シニアアナリストの石渡昭好氏)

 また、好調なスタートを切ったKDDIのCDMA2000 1xについては(5月9日の記事参照)現行のcdmaOneから順調に乗り換えが進むと見ている。こちらも2004年あたりから安定期に入るという見方だ。


ガートナーが予測する国内携帯市場動向。2004年から第3世代方式であるW-CDMAが急速に立ち上がると推測している

公衆無線LANサービスの位置づけ

 ガートナーでは、公衆無線LAN(ホットスポット)の市場動向を明確には分析していないが、「無線LANカードのインストール台数の10%程度がホットスポットユーザーではないか」(石渡氏)と見ている。

 無線LANカードのインストール台数は、ガートナーの調査によると2001年時点で100数十万。2002年は300万台程度、2004年には800万台を超えると予測している。仮にその10%が公衆無線LANサービスに利用されたとしても80万台程度であり、携帯電話などのモバイル通信サービスに比べると規模は小さいという計算になる。


ガートナーは、無線LAN内蔵PCの比率が向上していくと見ている

 公衆無線LANの位置づけは、収益構造を探ってみるとさらに明確になる。ユーザー1人当たりの月額利用料金であるARPUと、キャリアの設備投資額をグラフにすると以下のようになる。


データのARPUを縦軸、設備投資額を横軸に取った、各移動体通信方式の位置づけ

 データ通信のARPUと設備投資額で見ると、モバイル通信は大きく3つのグループに分かれる。1つは、設備投資額も大きいが高ARPUが期待できる広域3Gサービス。2つ目は、設備投資額もARPUもそこそこの広域2Gサービスだ。そして、公衆無線LANは設備投資額が小さい、PHSなどと同じエリア限定のグループに含まれる。

 このエリア限定のグループは、通信キャリアの戦略として設備投資額を抑え収益性重視で行くとガートナーでは見ている。

 実際のところ、「公衆無線LANが本当に商売になるのか。接続のサポートには人員が必要だ。ビジネスとして成り立つのはちょっと難しいのではないか」(ガートナージャパン ジャパンリサーチセンターリサーチディレクターの丹羽正邦氏)という考えのようだ。

今後のモバイル通信の課題

 石渡氏は、今後のモバイル通信の課題として(1)IP処理の高速化 (2)リアルタイムサービス (3)高度なQoS制御によるサービスレベルアグリーメントの提供 (4)ローコストオペレーション を挙げる。

 リアルタイム処理やQoS制御の重要性を挙げるのは、1つにはモバイル通信でのインスタントメッセージング(IM)への要求が高まってきたことを受けてのことだ。石渡氏はIMを代表的な次世代アプリケーションだと見ている。「IMの基本は、リアルタイムのチャットだ」(石渡氏)。そして、IMが頻繁に利用されるネットワークでは「状況確認(プレゼンス)のためのパケットと、普通のメールのパケットが混在するので、QoS別の効率的な処理が必要」(石渡氏)だと説く。

 ネットワークの技術面では、(1)エッジデバイスの高速化・高度化 (2)ネットワーク制御の高度化 (3)ネットワーク管理の高度化 (4)ネットワークのIP統合 を課題として挙げる。

 無線LANや携帯電話など多様なアクセス方式が混在していく中では、コアネットワークと無線通信部のネットワークをつなぐエッジ部のルータや交換機がボトルネックになる可能性があるためだ。また、今後IP化が進む中では、インターオペラビリティ(相互接続性)の重要性が増すと見ている。4〜5年後にはコアネットワーク部分がIPで統合され、まずネットワーク間のインターオペラビリティが必要になる。その後すべてのネットワークがIPで統合されるに当たり「アプリケーション間のインターオペラビリティが重要になる」(石渡氏)

 全体として見た場合、現在のブロードバンド、モバイル市場は「話題はあるが、売り上げが上がってこない」と田崎氏は語る。現状の市場規模も、まだまだ小さい。過度な期待が覚めつつあるともいえるだろう。しかし利用人数は着実に増えつつあり、受け入れられつつあるのも事実だ。

 田崎氏は、ブロードバンドとモバイル・ワイヤレスは既成事実になるという意味で「ブロードバンド、モバイル・ワイヤレスという言葉は、今年後半は聞かれなくなるだろう」と語る。そろそろ地に足が着いたビジネスの実現が重要になってきそうだ。

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▼ ガートナージャパン

[斎藤健二, ITmedia]

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