ニュース 2002年6月13日 07:49 AM 更新

ケーブルテレビ2002
CATVはどこまで“光化”する?

CATVといえば同軸ケーブル。しかし、IP通信の高速化に対する要求は、光化への流れを作りつつあるようだ。「ケーブルテレビ2002」の展示会場では、CATVの光化を促すデモンストレーションやハードウェアを見ることができる

 CATVといえば同軸ケーブル。しかし、HFC化の先に、“放送にも対応した光アクセス”という道が見えてきたようだ。「ケーブルテレビ2002」の展示会場では、複数のベンダーがCATVの光化を進めるハードウェアを展示している。

 NECケーブルメディアでは、「アドバンストHFC」と呼ばれるHFCの拡張版、同軸ケーブルと光ファイバーが混在する「GbE over HFC」、PDS方式を使った「ハイブリッドFTTH」といった将来のアクセスサービスを提案。関連機器を展示している。同社のスタンスは、通信系をなるべくエッジに近い部分まで段階的に光化していき、最終的にはFTTHとすることだ。

アドバンストHFC

 現在のHFCは、幹線部分だけを光ファイバーで伝送し、分岐点(光ノード)で光と電気信号の変換を行い、支線部分は同軸ケーブルを利用する形だ。同軸ケーブルに変わってからも何度か分岐があり、最終的には1カ所の光ノードが1000〜2000世帯へサービスを提供している。また、電気信号が劣化する同軸ケーブルでは、経路の途中に複数のアンプを設置する必要がある。

 これに対して、アドバンストHFCは、よりユーザー宅に近い場所まで光ファイバーを使う。従来の光ノードを「光中継ハブノード」に変え、WDM技術で上り/下りを重畳。ここで16分岐された光ファイバーは、その先の「ミニセルノード」で電気信号への変換を行い、最終的に同軸ケーブルで最大64世帯につながるという形だ。通信の高速化にくわえ、TV放送のRF信号もミニセルノードまで光ファイバーで伝送されるため、アンプの数を大幅に削減できる。

 同社では、ミニセルノード「N-750 OPT M-C」を年内には出荷する予定だ。ただし、光中継ハブノード「N-75 ORC-H-D」の出荷は「年度内」になる見込みという。


アドバンストHFCによるミニセル化(クリックで拡大)。1つのノードで16分岐×64の計1024世帯までカバーするスケーラビリティを持つ

光ファイバーと同軸ケーブルを併用

 またNECケーブルメディアは、IP通信とTV放送を1台でまかなう宅内端末「Optical Home Node」とイーサネットPON端末「SpectralWave ME100R」を参考出展している。

 Optical Home Nodeは、前述のGbE over HFCに利用する宅内機器で、一言でいうと「メディアコンバータとSTBを1台にしたもの」だ。2芯の光ファイバーで上り/下り100Mbpsの通信を行い、同軸ケーブルを使って放送を受信する。もちろん、実際のサービスでは新たに光ファイバーを敷設する必要があるが、既存のインフラを活かし、IP通信の高速化要求に対応できるという。


Optical Home Node。下のイーサネットPON端末が出荷されれば、メディアコンバータの代わりにONUを内蔵したバージョンも登場する可能性があるという


イーサネットPON端末は、同社初のONUだ。PONシステムを採用し、通信と放送をオール光化する「ハイブリッドFTTH」向け端末という位置付け。秋頃の出荷を予定している。PON型FTTHには、QoSの実現にくわえ、分岐に使う光カプラーには電源が不要で、保守が容易というメリットがある


「GbE over HFC」と「ハイブリッドFTTH」の概要(クリックで拡大)

3本の光ファイバーで通信&放送

 センター装置から宅内端末までのシステム一式を持ち込んでデモンストレーションを行っているのはブロードネットマックスのブースだ。こちらは、CATVからイーサネット型FTTH への移行を促進するソリューションといえる。


ブロードネットマックスのデモシステム。TV放送とストリーミング動画を伝送していた

 移行促進のポイントは、同社が発売予定のノード「BN3400」。このノードには、光スイッチモジュールを収容するスペースが用意されている。つまり、当初はHFCのノードとして利用しておき、IP通信のさらなる高速化が必要になったとき、モジュールを追加すればいいという仕組みだ。


ノードに収まったスイッチモジュール

 デモシステムは、センター内のGbEスイッチ〜ノード間を1Gbpsでつなぎ、さらに「Carbスイッチ」と呼ばれる分岐点を経由してユーザー宅に光ファイバーが届くという構成だ。ノードとCarbスイッチでそれぞれ24分岐するため、1ノードあたり最大576世帯に光サービスを提供できる。

 一方、放送映像(RF)は、センター内で光信号に変換され、IP通信とは別の光ファイバーで宅内のメディアコンバーターに至る。IP通信の上り・下りとRFにそれぞれ1本の光ファイバーを使うため、計3本の光ファイバーが使用されていた。


デモシステムの構成図。宅内は上り/下りとも最大100Mbps(ベストエフォート)になる

 NTTのように、WDM技術を使って1本の光ファイバーにTV放送を重畳する「サービス多重」の研究を進めている(昨年11月の記事を参照)企業もあるが、ブロードネットマックスの技術開発本部次世代ネットワーク開発室の矢野貴志課長は、アクセス系光ファイバーに複数の波長を重畳するのはまだ難しいという。

「光学的に複雑になってシステムコストが上がるうえ、通信用の1.3マイクロメートル(の波長)とRF伝送に使う1.55マイクロメートルの両方に対応した光アンプがまだない」(矢野氏)。ただし、将来的には同社でも1本もしくは2本のファイバーに集約する方針だという。

 なお、ブロードネットマックスのFTTHシステムは、既にJ-COM西東京でフィールドテストが行われている。本格展開の時期については、「IP通信部分は2003年初めを目途に販売を開始する。ただし、RFを含めた形のシステム販売は、まだ具体的なスケジュールが立っていない」という。

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[芹澤隆徳, ITmedia]

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