連載 2002年6月14日 09:41 PM 更新

Streaming Now!〜流れをつかめ!
時代はCoronaか?

「Streaming Media Japan 2002」は、Coronaのイベントであった。きっと、多くの人は「これからはCoronaか」と思い込んでしまっただろう。でも、MPEG-4がダメかというとそうではない

 「Streaming Media Japan 2002」は、一言でいうとCoronaのイベントであったということができる。マイクロソフトが本気で取り組むと、やはりかなり迫力があるものだ。一方でMPEG-4陣営にも動きがみられたし、コンファレンスの中でもなかなか興味深い話を聞く事ができた……ということで、今回はStreaming Media Japanのレポートである。

Coronaで一歩リードしたマイクロソフト

 御存じの方も多いかとは思うが、私はどちらかというと、アンチWindows Mediaである。その主な理由は

  • MPEG-4という規格を混乱させたから。動画圧縮をサポートしただけで、それがMPEG-4ファイルであるかのような誤解を与えた。
  • そのくせ、独自路線を突っ走り、「標準」という考え方をしないから

という点にある。私がMPEG-4を支持するのは、将来的にも有望な標準のファイルフォーマットだからである。コーデックの品質がズバ抜けているとか、そういう話をしたことはない。が、その持論を展開しても、マイクロソフトは「MPEG-4の動画コーデックは古い」という一言で終わらせてしまう。あえて、ファイルフォーマットとコーデックを誤解させようとしているのではないかとすら思えたことが度々あった。

 だが、マイクロソフトはもはやそんな姑息な手は使わない。Streaming Media Japanでの記者発表で、米MicrosoftのWindowsデジタルメディア事業部のDave Fester氏は実に正直に質問に答えていた。


米Microsoft、Windowsデジタルメディア事業部ジェネラルマネージャのDave Fester氏

 「Windows Mediaを標準とする動きはないのか」という質問に対して「この1年で4回アップデートするような技術を標準とするのは難しいだろう」と答えた。つまり、我が道を行くという意味である。さらに、「デファクトスタンダードである」という自信が窺えた。

 さらに、「他の技術と比較した場合のアドバンテージは?」と聞かれると、「スティーブ・ジョブズは『QuickTime 6のMPEG-4はCorona以上』と言っていたが、われわれのテストでは、今のバージョンでもMPEG-4よりクオリティが高い。現在のアップルのMPEG-4の実装と比べても2倍のクオリティだ」と答えた。ジョブズの発言を正確に読まなければなんとも言えないのだが(探したが、見つからなかった……)、「2倍」という点の根拠がわからないことを除けば、基本的にFester氏の言い分が正しいように感じられる。新しいコーデックのほうが良好な画質を得られるというのは世の常なのである。

 これらの発言を受けて(別に驚くようなことは言っていないが)、私の中でのマイクロソフトの好感度は上昇した。また、他社との協業体制の話なども含めて、かなり本気で取り組んでいることが窺えた。きっと、多くの人は「これからはCoronaか」と思い込んでしまっただろう。

三菱電機にEnvivioのツールが

 ではMPEG-4はダメなのか? とんでもない。こちらは「標準」である。アップデートせずに、あらゆるエンコーダ、プレーヤーで互換性がとれるし、その用途はストリーミングからスタジオワークまで及ぶのだ。あまり知られていないが、MPEG-4には2Gbpsにも及ぶスタジオ用プロファイルが用意されている。そして何と言っても、アップデートのことを考えずに扱えるフォーマットなのだ。

 そこで展示会場でMPEG-4についてチェックしたところ、それなりに新しい動きはあった。

 まず、沖電気ではASP(Advanced Streaming Profile)に対応したコーデックを使い、Oki Media Serverを展示していた。画質はかなり良いようだ。三菱電機はEnvivioのオーサリングツールを展示、自社のストリーミングシステムで採用することを明らかにした。そしてiVASTはいつものようにMPEG-4を使ったインタラクティブなデモを展開していた。

 いずれもマイクロソフトのブースのような集客はなかったものの、来場者の関心を集めていた。

STBはどのように普及するのか……

 そんな中で私が注目したテーマは、「STBってどうなの?」。そろそろ、セットトップボックスの日本国内での展開も噂されている時期なので、展示もあるのではないかと思ったのだ。

 で、探した結果、沖電気では韓国のDTVRoのSTBを、三菱電機では英PACEのSTBを、それぞれ展示していた。これらは、いずれも大々的に展示されていたワケではない。質問する人がいれば答えるというものであった。マイクロソフトの基調講演ではパナソニックのSTBが大々的に取り上げられていたが……。

 で、問題は「このようなテレビ接続型の技術はどうやって成り立っていくのか?」ということ。まず、普通のコンシューマー向け販売で盛り上がるものではない。別にそうであってもよいのだが、すでにPCを持っている人は買わないだろう。

 となると、ホテルで使うとか、地域で使うとか、そういうことになるのだろうか? それから、ブロードバンドISPが配付するというケースもいろいろと考えられ始めている。特に老人などをターゲットとすれば、パソコンよりもテレビのほうが扱いやすいだろう。さらに、コンテンツも含めて「うちのプロバイダに入ればこのSTBでこんな素晴らしいコンテンツを見ることができます」という展開ができれば、ISPにとっては非常に素晴らしいツールと成り得る。

 ということで、行き着くところはやはりコンテンツの魅力なのである。展示するにしても、単独で機器を置いただけではその魅力が伝わりにくい。今後、STBが表舞台に出る事があるとすれば、それはインフラとコンテンツも含んだシステムとして準備が整った時ということになるだろう。

興味深かった「主要ISPブロードバンド広告実験結果」

 自分が講演などしたために、あまり多くのコンファレンスには参加できなかった。そんんな中で興味ぶかかったのは、ニューメディアの吉井氏による「ブロードバンドの動画広告事業の提案」。代表的な動画CM配信会社の担当者を集めてのパネルディスカッションであった。

「ネットCMはテレビと同じではいけない」

「いや、同じでもいい」

「どっちもアリ」

といった本質的な議論も面白かったが、私にとって面白かったのは、サイバーウイングの広屋氏が示してくれた「主要ISPブロードバンド広告実験結果」である。広告実験に参加したユーザーからのアンケートのデータがやたらに面白いのだ。

 例えば、インターネットでの視聴形態についてのアンケートに対して、「テレビを見ながら」という答えた人が35%にも及んでいる。意外な結果だ。おそらくは茶の間でストリーミング画像を見ている人がそんなにいるのだ。これは先のSTBの話と絡めて考えることはできないだろうか? いや、STBをテレビにつないで見てしまったらテレビを見ることができないか……。

 そして、やはり広屋氏が、あるISPのデータとして、サッカーW杯の「日本対ベルギー」が行われたときのアクセスログを示してくれた。ハーフタイムにアクセス数がグンと上がり、後半開始でまたダウン、試合終了と同時にアクセス数が凄まじいものとなっていたのだ。この統計を見ると、「ながら族」はそんなにいないような気もするし……どうとらえるかは難しいところだ。

 いずれにしても、面白いデータである。これまでライバルと思われていたテレビとインターネットとの間にしっかりとした関係が築かれつつあることを意味している。コンテンツを作る人、サービスを提供する人は、これからは、この関係をうまくとらえれば成功することができるだろう。何をするにも、あらゆるメディアをひっくるめて考えなくてはならない時期に差し掛かっているのだ。

 そういうことを全部考えていくと、ストリーミングだけでなく、あらゆるメディアでの使用を考えた互換性の高いフォーマットであるMPEG-4、まだまだいろいろと可能性があると思うのだが、いかがだろうか?

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[姉歯康, ITmedia]

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