ニュース 2002年6月21日 00:12 AM 更新

RIAAも憤慨、米ネットラジオの著作権料率

ネット陣営は「半額でも高すぎる」と落胆、音楽業界側は「これでは低すぎる。文化差別だ」と憤慨している。上告は必至か

 米連邦著作権管理当局が6月20日、オンラインラジオ局に対する音楽著作権料率を設定した。ネット各社から猛反発が出た先の提案の半分の料金となっている。

 ネット放送各社は、ユーザーがオンライン上で音楽を再生するたび、1曲当たり0.07セント――つまり1セントの約14分の1――を著作権料として支払うことになった。従来ラジオ局が音楽番組をオンライン化する場合も同額の著作権料を支払う必要がある。

 提案と比べ劇的に低い料率にはなったが、それでも米ネット放送各社は、この決定で多くの会社が破綻する可能性があるとしている。

 「この料率でもかなりつらくなりそうだ」と語るのは、サンフランシスコのエレクトロニカ専門局の集合体として人気の高いSomaFMの運営者、Rusty Hodge氏だ。SomaFM傘下の局が支払うことになる著作権料は「収入をはるかに上回る」ものになるだろうと同氏。

 ストリーミングメディア会社RealNetworksの関係者も失望を隠せない。

 RealNetworksは多くのオンラインラジオ局が採用するソフトの開発元。同社のAlex Alben副社長は、「これは正しい方向に向かう第1歩。しかし正直言って、Web放送業界にとってはかなり失望させられる結論だ」としている。

 一方、音楽メジャーレーベルを代表する全米レコード協会(RIAA)も、今回定められた料率を「低すぎる」と非難している。

 RIAAのCary Sherman理事は声明文の中で次のように述べている。「この決定の意味するところは、Yahoo!、AOL、RealNetworks、Viacomといった数十億ドル規模の会社のWeb放送ビジネスのコストの一部を、アーティストとレコードレーベルが負担しなければならない、ということだ。この料率は法で守られるはずの、音楽の公正市場価値を反映していない」

激しい論争の末の結論

 当局による20日の決定は、音楽レーベル、ネット企業、伝統的ラジオ局を巻き込んだ数年に及ぶ激しい論争の末に出された結論だった。これにより、ついにネット音楽放送の基本原則が設定されたわけだ。しかしネット音楽放送各社の大半は今、1日に数百万人ものリスナーを集めながら財政が苦しい状態にある。

 もっとも、今回の決定をめぐって今後も論議が続く可能性は高い。レコードレーベル側は、これよりずっと高い料率を望んでいた。また、Web放送事業を手がける会社の中でもAmerica Online(AOL)のような大手なら今回の料率でも支払い可能だろうが、小規模なガレージオペレーションのWeb放送局にとっては、おそらく財務上の重荷になる。

 米国議会は1998年に新デジタル著作権法を可決する際、ネット放送局はオンライン上での音楽再生に際しレーベルとアーティストに相応の支払いをしなければならないと決めた。結果、新たな著作権料率を設ける必要が生まれた。米ラジオ局は、ネット時代以前から長年にわたって作曲者に少額の著作権料を支払っている。だがこれらラジオ局がレーベルやアーティストに対して著作権料を支払ったことはかつてない。

 米国議会は、ネット各社が1曲当たりいくら支払うべきかという具体的な額については見解を示さなかった。そこでレコードレーベルと最大手のネット企業が、適切な料率を決定するため数年間交渉を続け、実にさまざまな提案が出されたが、両者は妥協点を見いだせなかった。

 数社の企業――有名どころではYahoo!など――は個別交渉でレーベルとの合意に至った。だが大半の企業は、「米著作権局が公式な料率を設定するまでは、著作権料の支払いを免れることができる」という法の規定を利用する形で様子見の態勢に入った。

 昨年の夏、この論争はとうとう、米著作権局が任命した調停委員会へと委ねられた。調停委員会は、かなり懐疑的な姿勢を取りつつレーベルとネット放送業界の双方から意見聴取した。そして今年2月、レーベル側の提案と大手ストリーミング企業側の提案との間に割り込む形で、調停委員会の手による著作権料率案が提出された。

 調停委員会が提案した料率は「1曲当たり0.14セント」というものだった。小規模なネット放送局はこれに猛反発。1曲当たりの額は微々たるものでも、総額の支払い義務は、小さな会社の年間売上を軽く超えてしまうからだ。そうなったら廃業するしかないではないかと彼らは反発した。

「上告は確実だろう」と弁護士

 だが先月、予想外の動きが起きた。著作権管理当局が、調停委員会の提案を却下すると明らかにしたのだ。6月20日の発表に際し、当局は「(調停委員会の勧告は)かなりの部分が恣意的あるいは法に背く内容だった」と説明している。

 一部のネット放送局は、売上に対する割合で料率を決めた方が公正ではないかと主張していたが、当局は今回の決定で、この提案も退けた。

 当局の報告書には次のように記されている。「多くのネット放送局が、現状、ほとんど売上を上げていない。売上に対する割合で料率を決めたら、著作権保有者に対し『ほとんど、あるいは全く見返りなしに、(第三者による)広範囲にわたる財産の使用を許可せよ』と求めることになってしまう」

 音楽をオンライン上で再生する企業は、今年11月から(9月分の)支払い義務を負うことになる。1998年10月28日以降、オンライン上で再生された音楽についての過去にさかのぼっての支払いは今年10月が期限となる。

 今回の決定がネット上で伝えられるや、小規模なラジオ局の一部はすぐさまサービスを打ち切っている。

 レイブスタイルの放送局「Tag's Trance Trip」のサイトには「放送中止」を伝えるお別れのメッセージが掲載された。

 同サイトの運営者、Stephen "Tag" Loomis氏は次のように記している。「残念ながら本日午後5時から新しい知らせがあるまで停止することをお伝えしなければなりません。この料率では支払いは不可能です。RIAAとロビイストの皆さん、夢をぶち壊してくれてありがとう。リスナーの皆さんには感謝します。皆さんは私の人生を充実したものにしてくれました。皆さんにも私の存在がそうであったら幸いです」

 だが、音楽業界の代表者も、これと同じくらい憤慨している。

 レコードレーベルがネット放送料金の徴収と分配のために設立した組織、SoundExchangeのエグゼクティブディレクター、John Simson氏は次のように語る。「英語に“for a song”(「二束三文で」の意)という慣用表現があるのには理由がある。それは人々がアーティストの創造物に対し、その文化としての価値を見下しているためだ。新著作権料率は、こうした文化差別の新たな例証だ」

 いずれの陣営にも、今回の決定をワシントンD.C.の連邦控訴裁に上告する権利がある。RIAAは、今回の報告書をよく読んで「すべての選択肢を検討する」としている。

 調停プロセスで20社以上のネット放送局の代理人を務めたニューヨークの法律事務所Weil Gotshal & Mangesのパートナー、Adam Cohen氏は「レコード業界が上告するのは確実」とする。同氏も今回の決定には失望したとしている。「もし賭けをするなら、私は今回の決定に対して上告がある方に賭ける」

[ITmedia]

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