ニュース 2002年6月27日 00:09 AM 更新

文化庁が語る「あるべき著作権契約システムとは」

ブロードバンドコンテンツの流通を阻害しているともいわれる、著作権問題。文化庁では打開策として、あるシステムを提案する

 ブロードバンドコンテンツを制作する上で、なにかと障害になるのが「著作権」の問題。オンライン配信の際、著作権者の合意を取り付ける作業が煩雑に過ぎると不満の声も上がっている(記事参照)。モバイル・コンテンツ・フォーラムが主催する「ブロードバンド&モバイルセミナー」で、文化庁の著作権課課長、岡本薫氏がこの問題に言及した。


著作権課の岡本氏。「『権利処理』という言葉を使う人は、著作権がよく分かっていない人。何も難しい『処理』をする必要はない、ルールを決めて契約を結べばいいだけのことだ」

 岡本氏はまず、著作権者と利用者の関係がスムーズだと言われる、携帯電話の着信メロディ(いわゆる「着メロ」)の仕組みを紹介する。

 「あれは本来なら、着メロをダウンロードしたユーザー1人1人が、いちいち著作権料をJASRACに払う必要がある。しかし、その支払い部分を通信キャリアが一括して代行することでうまくいった」。

 それが実現したのは、通信キャリアが顧客のデータを把握できるシステムを持っており、また自動課金のインフラを持っていたためだ。また、着信メロディが構造上、容易にコピーされる性質のものでなかったことも大きい。

 これにより、作曲家などから権利委託を受けたJASRACと、ユーザーの着メロ利用を集約する通信キャリアによる“1対1”の関係が成立した。結果、2001年度の年間ビジネス規模は、約850億円に上っており、国際的にも注目される成功例になったわけだ。

これからは「N対Nの権利関係」をつくれる基盤を

 もっとも、岡本氏はこれは特殊なケースだと強調する。

 「そもそもJASRACというのは、音楽権利者の一括した窓口であり、“カルテル”の考え方。売れているアーティストの着メロもマイナーなアーティストの着メロも一律料金で扱うわけで、市場原理を阻害するに決まっている」。

 そうした“権利を集中した機関”をつくるのでなく、利用者と権利者が直接つながるシステムを構築することが、重要との考え方のようだ。コンテンツ制作などでライツクリアランスに悩む企業がよく、「JASRACのように権利を集中してくれる機関があれば……」と話しているが、これは見当違いだという。

 岡本氏はそもそも、「インターネットの本質は“出会い系”だ」とコメント。多くのユーザー同士がn対nで出会うことができる以上、それに見合った体勢を整えるべきだとした。

エル・ネットの場合

 岡本氏の考える、あるべき著作権契約システムとはどのようなものだろうか。同氏が例にあげたのは、文部科学省が取り組んでいる教育情報衛星通信ネットワーク「エル・ネット」のシステムだ。

 エル・ネットではコンテンツを制作する際に、必ずその「著作権ランク」がABCで画面に表示される。たとえば「A」ならネット配信可能、「B」ならビデオ化まで可能、「C」なら2次利用は不可、といった具合だ。

 コンテンツを利用したい側には、あらかじめ2次利用について分かり易くまとめた図を示してある。正式な契約条項は別に用意するが、利用にあたって最低限必要な情報をカタログ形式で示すというわけだ。

 岡本氏は同様の観点から、コンテンツにメタ・データを付与するcIDfなどの取り組みも、プラスアルファの工夫が必要だと話す。

 「たとえばコンテンツに『A-365』というメタデータが付与されていたとする。すると、別に権利契約について“これはOK、これはNG”とまとめたマトリックスを用意する必要があるだろう。利用者はその表の『A-365』にあたる部分を確認して、2次利用がどこまで可能か判断するわけだ」。

 こうした、権利者と利用者を結ぶインタフェースを作ることが、市場で柔軟にコンテンツを運用する上で欠かせないとした。

 「もちろん、JASRAC型の著作権契約を否定するわけではない。ただ、まとまりようがない場合もある。その場合、1対1にこだわりすぎないほうがいいだろう」

関連記事
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▼ 著作権ドタバタ・ケーススタディ 〜イーライセンス
▼ JASRACがかみつく著作権の「競争原理」論

関連リンク
▼ 文化庁のホームページ
▼ エル・ネットのインデックスページ
▼ モバイル・コンテンツ・フォーラム

[杉浦正武, ITmedia]

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