ニュース 2002年6月28日 02:14 AM 更新

Interview
「IPv6の役割は自由と創造性の基盤」と村井純氏(1/2)

IPv6普及・高度化推進協議会会長を務める村井純氏(慶応大学環境情報学部教授、WIDEプロジェクト代表)に、一連のステップを経て、IPv6はどこまで進んだのか、次の課題は何かを聞いた

 昨年、NetWorld+Interop Tokyoの「IPv6 ShowCase」では、家をテーマにした展示が行われ、多くの来場者の注目を集めた。リビングや台所に置かれた家電、車といった、われわれのの身の回りにあるものを取り上げ、それにIPv6を組み合わせることで何が可能になるかを、さまざまなデモンストレーションを通じて紹介した。

 それから1年。この間、IIJやNTTコミュニケーションズ、ニフティなど国内の大手ISPが相次いでIPv6の接続サービスを開始した。また2001年12月15日、16日の2日間には、横浜パシフィコを会場に「Net.Liferium 2001」が開催された。一般ユーザーを対象に、「ブロードバンドで何ができるのか」「IPv6で何が変わるのか」を体感してもらうためのイベントで、パソコンや携帯電話以外のものがインターネットにつながるとどうなるかを体感する展示が行われた。

 さらにIPv6普及・高度化推進協議会では、800名を超えるモニターを募集しての大規模な実証実験を行った。今年1月から3月にかけての実験期間中、ルータやアプリケーション、さまざまな家電機器やアクセス回線など、IPv6の世界を支える各要素についての検証が行われた。

 こうした一連の動きを経て、今回のIPv6 ShowCaseの内容はさらに広がりを見せる。次のテーマは「町」だ。家を飛び出しての、よりダイナミックなデモンストレーションに期待したい。

 展示会を前に、IPv6普及・高度化推進協議会会長を務める村井純氏(慶応大学環境情報学部教授、WIDEプロジェクト代表)に、一連のステップを経て、IPv6はどこまで進んだのか、次の課題は何かを聞いた。


慶応大学環境情報学部教授、WIDEプロジェクト代表の村井純氏

ZDNet 複数のISPによる実証実験、それにIPv6普及・高度化推進協議会の実証実験を通じて、IPv6の認知度や浸透状況に変化はありましたか?

村井 そうですね。IPv6普及・高度化推進協議会の実証実験では、実際にエンドユーザーがさまざまなIPv6対応機器を使い、回線やIXを提供するISPなども加わりました。

 今回の実証実験において一番大事なことは、どこかに隙はないかという「穴探し」なんです。例えば、ラボや小さな規模ではうまく動くけれど、実際の環境で利用しようとすると、幾つか難しいことが出てきてしまう。やってみなければ分からないことを早いうちに洗い出しておこうというのが目的で、そういう意味では非常に効果的だったと思います。

 かつてとは異なり、今はインターネット接続の提供方法や構造が変わって、ADSLなどのさまざまなバリエーションがあります。つなぐための機器にもさまざまなバリエーションがある。レイヤ2のスイッチだと思っていたら、実際にはIPをちゃんと見てインテリジェントに処理してくれるような機器が多いのですが、意外とこれらが整理されておらず、IPv6にすると問題が起きたりするんです。

 実際にビジネスが始まってからこういう問題が発生しても、困りますよね。ネットワークは24時間365日動くものですから、使う側も作る側も一体になって、こうした実証実験を経て、問題を調整し、解決しておくプロセスが非常に大切です。昨年から今年にかけて、この調整段階に入ってきたこと自体が、大きなステップだと思います。

ZDNet IPv6アドレスの割り当て方法の面では、前進はありましたか?

村井 これもようやく、RIPE、APNIC、ARINでのさまざまな議論を経て、RIR(リージョナルインターネットレジストリ)という、インターネットレジストリにおけるアドレス割り当ての方針がおおむね合意に至りました。この議論においては、日本からの提案が大きな影響力を与えました。

 これで、(レジストリからISPへの)IPv6アドレスの割り当て業務をスムーズに行うための土台はできました。しかしながら、まだ課題はあります。例えば、ISPでは、割り当てられたこの大きな空間を実際にどう使っていくのか、どうすれば適切な割り当てになるのか、また自動的な割り当てを実現するにはどうしたらいいのか、割り当てを組織ごとに管理するためのツールはあるのか……そういう視点から見ると、まだまだいろいろな課題が出てくると思います。このあたりを解決していかないと、管理者の負担がとても大きくなってしまいます。

ZDNet 実際のサービスを考えると、例えば事業者間でモビリティをどう実現するかといったことも決まっていませんよね?

村井 モビリティにしてもマルチホームにしても、モデルはいくらでも考えらます。そうしたモデルの中でアドレスをどう割り当て、使っていけばいいかという方法も、それぞれ適した答えがある。

 ただ、サービスが現実のものになるかどうかは、サプライヤーではなく、あくまでコンシューマーが決めることです。マーケットの中で要求が高まり、そのための最適なアドレス割り当て方法が主流になっていくという形じゃないと、不自然だと思います。

 そういう意味では、従来の経験の蓄積に基づいたアドレスの割り当て方法にも、多少の発展や変更が必要になってくると思うんです。マーケットとともに成長するのが、アドレスの割り当ての業務だと思うし、そうでなくてはいけないと思う。積極的な意味で、(マーケットとともに)走りながら調整をしていく部分は、インターネットに必要なことなのです。

[高橋睦美, ITmedia]

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