ニュース 2002年7月1日 02:51 AM 更新

“国内初” P2Pグループウェアの可能性とは?

企業でもP2Pソフトウェアが活用される日は来るのだろうか? 先日P2Pグループウェアを発表した、アリエル・ネットワークに聞いた

 国内でも、P2Pグループウェア市場の胎動が始まった。アリエル・ネットワークは6月20日、国内企業としてはユーザー同士でP2Pネットワークを構築できるコラボレーションソフトウェア「ArielAirOne」を発表した(発表記事参照)。9月から1万円前後で販売する予定で、これは国内企業としては初めての試みという。同社の営業部マネージャ、須山浩克氏と執行役員方式担当、日高孝寛氏にその可能性を聞いた。


左が営業部マネージャの須山氏、右が執行役員方式担当の日高氏

 P2Pテクノロジーのプロトコルといえば、P2PコミュニティJnutellaによって提唱された「JPPP」などが既に存在する。だがアリエル・ネットワークは独自の「SOMAプロトコル」を昨年、開発しており、今回のソフトウェアにもこれを採用している。

 「理由としては、自分で開発したい社員が多かったというのもあるが……(笑)、既存のプロトコルはアプリケーションを動作させられるレベルに達していなかったということ」(須山氏)。SOMAプロトコルは、特にセキュリティ面に配慮した仕様になっているという。

 具体的には、SSLにより通信を暗号化できるほか、PKIに基づきノードのリソースに署名を入れられる。また、リビジョン管理機能を用いて不正な書き換えをトラッキングできるほか、ユーザーごと、グループごとのACL(アクセスコントロール)が可能。これらを組み合わせて、アプリケーションごとにセキュリティレベルを設定できる。

 「企業ユースで考えると、セキュリティ管理はやはり重要。今回の発表でもいろいろ問い合わせをいただいたが、やはり一番気にされるのは『セキュリティは大丈夫か』という部分だった」(須山氏)。

アリエルのサーバから“P2Pネットワーク”へ

 利用手順をみてみよう。ユーザーはまず、アリエルの用意したサーバから2.5Mバイトほどの専用ソフトウェアをダウンロードする。この際、自分のIPアドレスがアリエルのサーバに自動で通知される。

 インストール直後のユーザーは、ノード同士で構成されるP2Pネットワークに参加していない。これは、IPネットワーク上のどこにP2Pのノードが存在するか把握できないためだ。このため、ユーザーはいったんアリエルのサーバに接続し、そこに登録された位置情報から近傍にあるノードを認識する。

 「ブロードキャストであてずっぽうに探すのではなく、最初だけはアリエルのサーバにつないでもらう」(日高氏)。いわば、P2Pネットワークへの入り口としてアリエルのサーバを利用するわけだ。

 ユーザーは、P2Pネットワーク内の特定のノード同士、グループを形成することが可能。このグループ内でなら、ソフトウェアに含まれる独自のスケジュールアプリケーション「AirCalendar」や、プロジェクト管理アプリケーション「AirPIM」など、複数の機能を共有できる。

 グループ分けには、ACL IDを利用する。ArielAirOneをインストールしたノードのリソースには、表形式のACL IDリストが用意されている。これによって、各ノードごと、自分のデータへのアクセスを認めるか認めないか定義できる。たとえば「オールユーザー(*)」のアクセスを拒否し、特定の3人のユーザーのアクセスを認める設定にすれば、そのユーザーを含めた4人でグループを形成することになる。

*ここでは「アクセスを認めたユーザーを除く全てのユーザー」を指している

特殊なノードを設定できるバージョンも

 今回発表された「ArielAirOne」は、一般ユーザーも対象にした製品だが、年末には企業向けに管理機能を強化した“エンタープライズ版”も販売する予定。エンタープライズ版では、グループ内のノードを管理する権限を持つような、特殊なノードも設定可能にするという。

 「たとえばノードの管理では、LDAPを利用することになるだろう。企業内にLDAPのサーバを用意してもらい、ユーザー情報をLDAPに格納する。管理者ノードがLDAP上のデータを削除すれば、そのユーザーをグループから削除できるようにすればいい」(日高氏)。

 企業ユースでは、アプリケーションで扱うデータのバックアップも要求されるもの。これも、“バックアップ専用ノード”を設定可能にして、対応する予定だ。

 このようにノード間の役割が固定されてしまうと、一見、サーバ/クライアントモデルの利用形態と変わらないような印象も受ける。しかし、重要なのはノードがその役割を柔軟に変更できること。須山氏は「複数の企業が参加するネットワークを構築する場合、どの企業がサーバを管理するかで悩むことがある。P2Pネットワークなら、手軽に役割を変更できる」と話した。

 「企業内の情報を、なんでもかんでもサーバで管理していたのでは、いずれ破綻する。重要なものだけサーバでしっかり管理して、日常扱う情報はP2Pでノードに保管するといった運用が、今後求められるだろう」(同)。

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[杉浦正武, ITmedia]

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