ニュース 2002年7月12日 03:05 AM 更新

イー・アクセスが語る「ADSLプラス」の詳細

イー・アクセスは、先月19日に発表した「ADSLプラス」の詳細を明らかにした。ADSLプラスは、複数の技術を組み合わせ、下り速度は最大12Mbpsになり、伝送距離はISDN並みの7キロを実現するという新サービス。 申込み受付は8月初旬より開始される

 イー・アクセスは、先月19日に発表した「ADSLプラス」の技術説明会を催した。ADSLプラスは、複数の技術を組み合わせ、下り速度は最大12Mbpsになり、伝送距離はISDN並みの7キロを実現するという新サービス。「C.xやAnnex A.exのように、上り速度を犠牲にしたり、他社回線に影響を及ぼすこともない」(イー・アクセスCTOの小畑至弘氏)というのもウリだ。


米Centillium CommunicationsのProduct Marketing Manager、Richard Lin氏が「ADSLプラス」のベースとなった「eXtremeDSL」技術を解説した


米Centilliumによるシミュレーション結果

 今回は、発表時にはハッキリしなかった部分を含め、機能別に解説してみよう。

最大速度向上の仕組み

 最大速度向上の仕組みは、搬送波あたりの伝送効率を上げることだ。周知の通り、G.dmt(8Mサービス)では26KHz〜1.1MHzの周波数帯域の中で、4KHzおきに計255本(理論値)の搬送波を作り出す。この搬送波1つ1つは最大15bitの伝送能力を持っているのだが、今のところ、この能力を使いきることはできていない。

 「従来は、状態の良い場合でも搬送波あたり11〜12bitしか搭載できなかった。ADSLプラスでは、最新のアナログ-デジタル変換技術により、搭載ビット数を上限の15bitに近付くよう最適化している」(Lin氏)。


スペクトラムマスクの上端・下端を中心として、上限の15bitに近づくよう最適化された(図は理論値)

 また、リード・ソロモン符号に使うシンボルサイズを半分にする「S=1/2技術」により、搭載bit数を向上。さらに、新しいエラー訂正技術としてトレリス符号を採用した。

 トレリス符号は、G.992.2のオプションとして規定されていたもので、リード・ソロモン符号よりも符号化利得が高い。その分、伝送フレームにおけるペイロード(実データ)の割合を増やすことができる。

 個々のビンに載る伝送フレームには、ATMヘッダ(イー・アクセスはPPPoAを使用)や誤り訂正符号などのオーバーヘッドがあるが、イー・アクセス技術本部の諸橋知雄マネジャーによると、「ATMヘッダを除き、ペイロードは伝送フレームの90%程度になる」と話している。

 個々の搬送波をスペック上限の15bitに近付け、その中に占める実データの割合を増やす。これにより、G.dmtのスペクトルマスクからはみ出すことなく、最大12Mbpsを実現するという。

長距離化の仕組み

 ADSLでは、モデムの電源を投入した際に回線状況を調べ、「トレーニング」という作業を行う。トレーニングにより、ISDNのピンポン伝送方式に同期するための各種パラメータ設定が行われる。

 イー・アクセスでは、トレーニングに使うTTR信号とパイロット信号を207KHzと276KHzの周波数帯で伝送していたが、「ここにノイズが生じるユーザーはリンクアップできない」(同社)のがネックだった。また、とくに目立ったノイズのない環境でも、既存のADSLモデムがTTR信号を確実に検出できるのは5.7キロが限界。同様に、パイロット信号は5.7キロまでしか届かないという。

 ADSLプラスでは、従来よりも低い(減衰しにくい)周波数帯を使い、これらの制御用信号を2重化する。これにより、線路長が7キロを超える場合でも安定したトレーニングとリンクアップが可能になるという。

 「2重化により、ISDN信号に対する同期補足と追従性を強化した。SN比も10db以上改善している」(Lin氏)。


TTR信号とパイロット信号を2重化することで、伝達距離を伸ばした

自己干渉しないオーバーラップ

 制御用の信号の2重化により、遠距離でも接続できるようになった。しかし、NTT収容局から離れていれば、搬送波は高い周波数の部分から減衰し、下り速度が低下する(上りは25.875KHz〜138KHz、下りは138KHz〜1.104MHzを使う)。そこで、本来は上りに使う低い周波数帯に、下り信号を流す「オーバーラップ方式」に注目が集まっている。

 イー・アクセスも「オーバーラップ以外に(長距離化に)効果のある技術はない」(小畑氏)として採用を決めた。

 しかし、C.xやAnnex A.exのように、上り・下りの信号を重ねる方式では、自分の上り速度に影響を与える“自己干渉”(Self Crosstalk)や、他の回線への影響も懸念されている。

 そこで同社では、上りと下りのタイミングをずらす方法を採用した。また、状態の良い回線ではオーバーラップを使用しない(接続時にADSLモデムが選択する)。

 イー・アクセスの「FBMオーバーラップ」は、いわば「C.xのサブセット」(小畑氏)だ。ISDNの1周期(1.25ミリ秒)の最初の37%に全搬送波(6〜255bin)を使ってダウンストリームを伝送。最後の37%でアップストリームを伝送する(6〜31bin)。このため、「下り/上りとも全体の37%しか使わないため、最大速度は遅くなる。しかし、上りと下りの伝送タイミングが異なり、自己干渉はおこらない」(Lin氏)。

 下は、アッカ・ネットワークスのC.xを模式化したものだが、この図から、色の濃い部分(Bit Map2)をすべて除くと、イー・アクセスの方式とほぼ同じ形になる。


上に浮いているように見える部分がアップストリーム、下がダウンストリームを表す。tの軸は時間。ISDNの1.25ミリ秒という単位が100%だ。f軸は、255までの搬送波(bin)と周波数(右へいくほど高い)を示している。「Bit Map1」がFBM(FEXT Bit Map、4月の記事を参照

 唯一、干渉する可能性があるのは、Annex CのDBM時の上り方向。しかし、「線路長が長い場合、ISDNのノイズでDBMのNEXT伝送がかき消される。このため、FBMに優位性がある(=FBMのほうが長距離伝送可能)」としている。

 イー・アクセスでは、「ADSLプラス」を新しいサービスメニューと位置付け、10月から563のNTT収容局で提供を開始する。 申込み受付は8月初旬より。

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[芹澤隆徳, ITmedia]

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