LifeStyle：有明がお笑い発信地？　吉本興業と松下の新ライブ構想

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2002年8月1日　09:08 PM 更新

有明がお笑い発信地？　吉本興業と松下の新ライブ構想

9月にオープンする「パナソニックセンター有明スタジオ」が日本の新しい「お笑い発信地」になる。松下電器産業と吉本興業は8月1日、双方向通信を使ったライブエンタテインメントの実験プロジェクトを発表した

　松下電器産業と吉本興業は8月1日、双方向通信を使った新しいライブエンタテインメントの実験プロジェクトを発表した。松下が9月にオープンする「パナソニックセンター有明スタジオ」で吉本芸人がコンサートや講演会を行い、全国の公営ホールなどに中継するというもの。通信の双方向性を活かし、「臨場感あふれる参加型サービスに育てたい」（吉本興業の林裕章社長）という。

松下電器産業の田中宰専務（左）と吉本興業の林裕章社長

　パナソニックセンターは、松下電器産業が有明の国際展示場近くに建設しているショウルーム。中には放送設備の整った3つのスタジオが併設されており、ここと地方の公営ホールなどを大容量の専用線で結び、6Mbps程度のMPEG-2動画を双方向伝送する計画だ。

　各ホールでは、DLPプロジェクターなどを用いた大画面でライブを視聴できるうえ、逆にセンター側でもホール内の映像を大画面で上映。つまり、「出演者は、画面の観客に向かってネタを披露する」（吉本興業）。観客の反応はダイレクトにタレントに返るうえ、双方向通信によって観客との“絡み”も可能だ。

パナソニックセンター

パナソニックセンターには3つのスタジオがある。写真のAスタジオは、150坪の広さとSD/HD放送の収録・生放送設備を備える

ライブのタイムシフト？

　これだけなら、単なる大規模なTV電話と同じだが、ユニークなのはサービス時にはPVR（Personal Video Recorder）などでお馴染みの「追っかけ再生」の要素を盛り込むという点。例えば、1時間のコントと10分間の双方向トークライブがセットになっているとき、1つの会場はリアルタイムで上映を開始し、別の会場は10分遅れで開演する。

　1つめの会場でトークライブが終わったとき、2つめの会場はちょうどコントが終了、トークライブに移る仕組みだ。視聴者に時間のずれを意識させることなく、複数の会場に向けてコンテンツを配信することができる。

追っかけ再生（タイムシフト）のイメージ。多地点との双方向サービスを一度に行うことが可能になる

　吉本興業アミューズメント＆エンタテインメント部の比企啓之チーフプロデューサーは、「ITは物理的な距離の問題は解決してくれたが、一方でタレントの時間とスケジュールが（ライブなどの）コストを引き上げている」と話す。しかし、追っかけ再生を使うと、20カ所の会場に4時間30分でタレントが出演できることになり、料金の引き下げにも繋がるという。「簡単に言うと、20カ所でタレントのギャラをシェアするということだ」（同氏）。

商用化は2003年以降

　もっとも、パナソニックセンターは9月にオープンするが、配信先の地域センターなどにブロードバンド回線や上映設備を設置するのは容易ではない。そこで、「松下は、ホールに対するソリューション提供を新しいビジネス領域にする」（松下電器産業の田中宰専務）。新しいサービスを開発し、松下は新市場の開拓、吉本興業は公演機会の増大に繋げるのが目的だ。

　商用化の時期は明確にしていないが、「年内にシステム開発を進め、2003年春には20件ほどのホールを対象とした実験サービスを開始したい」（吉本）。講演会や音楽ライブ、スポーツ観戦などへの応用をにらみ、両社は実験に参加するパートナー企業を募集する。

　既に、市をあげてIT化に取り組んでいる岡山市の「3丁目劇場」やコンベンションセンター「ママカリフォーラム」などが実験サービスに参加する意思を表明したほか、音楽ライブを手がけるエイベックス、電通、キャスティなどがパートナー企業として名乗りを上げているという。松下の田中専務は「幅広いコラボレーションにより、実験を展開していきたい」と話している。

　両社では、将来的にはADSLやFTTHを導入した視聴者宅とのダイレクトコミュニケーションを実現し、視聴者参加型の番組なども展開していく方針だという。ITの進展は、ライブの視聴方法をも変えてしまいそうだ。

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