ニュース 2002年8月2日 00:20 AM 更新

MISが答申に反論、勝算は?

電気通信事業紛争処理委員会の答申により、「認可は相当ではない」と結論付けられたMIS。最終的な判断は総務大臣が下すことになるが、同社の勝算もゼロではなさそうだ

 電気通信事業紛争処理委員会の答申(7月の記事を参照)を受け、モバイルインターネットサービス(MIS)は8月2日、総務省に要望書を提出した。これは、MISがJR東日本の6駅に無線LAN装置を設置するため、電気通信事業法第73条第1項にもとづく協議の認可を求めていたもの。答申の「認可は相当ではない」という部分だけがクローズアップされているが、MISの勝算もゼロではなさそうだ。

 電気通信事業法第73条第1項の内容は、「第一種電気通信事業者が他人の土地などに線路や空中線(一般にアンテナを指す)を設置したいとき、総務大臣の認可を受けて協議を求めることができる」というもの。電気通信事業法が施行されてから17年が経過しているが、実は第73条第1項に基づく認可申請は初めてのケースだ。

“通信”と“線路”を混同?

 答申では、MISの無線LAN設備が、第73条第1項の適用対象とされる「線路」には該当しないと判断されたが、MISによると「通信という、ごく基本的な用語に関して、初歩的な解釈の誤りがあり、それが結論の直接の理由となっている」という。

 MISが誤りと指摘したのは、答申の「電気通信事業法第73条第1項の本件への適否」の部分。MISのアンテナは、伝送距離が100メートルを超えず、射程が駅内部に止まるため、隔地者間の通信を行う“線路”ではないという主旨だ。第73条第1項は線路に関する規定であり、適用するべきではないと結論付けている。

 MIS側の指摘は、基地局は利用者とインターネットを結ぶ中継点の1つであり、無線LANは、離れた場所にあるPCとサーバをつなぐネットワーク、つまり“線路”の末端を担っているということ。インターネット全盛の現在では、さまざまなインフラを経由して隔地者間を結ぶ“通信”のほうが主流であり、閉じた線路の中で行われる通信だけが通信ではないという。

強大な使用権の是非?

 今回の答申については、もう1つの解釈が成り立ちそうだ。

 パブリック化された無線LANは、所有者が意図しない場所をもホットスポット化してしまい、そのためにゲリラ的などと評されることもあるMIS。だが、土地収用法の流れを汲む第73条第1項に基づいて協議認可を得れば、土地所有者の意志とは別に使用権を主張できるという目算が立つだろう。携帯電話網のように大面積を覆う無線LANエリアの構築を目指す同社にとって、これは大きな武器となるはずだ。

 一方、答申では「(設備を)希望するままに私的な場所に設置することが許されるものとすれば、土地等の権利者や利用者の意志に反してでも、際限なく私的な施設を利用することが許されることになる」と指摘している。委員会が「線路には該当しない」と結論付けたのは、あえて論点をずらし「適用外」の烙印を押すことで、法の解釈に枠をはめたとも受け取れる。

 MIS側が要望書の中で、「土地収用法で収用された土地は、事業者により独占的、排他的に使われるが、法(電気通信事業法)による土地使用は、独占性、排他性ともにない」「ある意味で土地収用法以上の強大な使用権が肯定されても、土地所有者に生じる負担が極めて軽微である以上、土地等の利用は適当」と主張していることからも、この部分に焦点があてられていることがうかがえる。

注目は総務大臣?

 MISの協議認可申請は、既に総務省内の政策部局に担当が移されており、総務大臣が最終的な判断を下すことになる。ここでの注目は、総務省側が認可を念頭に置いて話を進めようとしていたことだ。

 事実、第14回会合の冒頭で、審議の内容を説明した総務省の事業政策課長は、「認可要件に該当または適合していると認められることから、認可するために諮問する」と切り出している。e-JAPAN構想を推進する立場の総務省が、MISの申請を突破口として通信事業者の使用権拡大につなげようと考えていたとしても不思議はない。

 結局、総務省と電気通信事業紛争処理委員会の意見は大きく食い違うことになってしまったが、答申の位置付けは、「判断材料ではあるが、方向を決定するものではない」(総務省)。最終的に答申とは正反対の結論が出される可能性も残されており、総務省の最終判断に注目が集まりそうだ。

関連記事
▼ MISのJR駅利用に「ノー」?〜電気通信事業紛争処理委員会

関連リンク
▼ 電気通信事業紛争処理委員会の答申に関する報道資料
▼ 答申書(PDF)

[芹澤隆徳, ITmedia]

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