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2002年8月29日 02:13 AM 更新
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Big Pipe
ブロードバンド・アクセス回線普及予測(パート3)
2002年7月に出した最新の「ブロードバンドアクセス回線の普及予測」。市場の変化により、若干だが数字を上方修正した
DSE戦略マーケティング研究所は、2002年7月に最新の「ブロードバンドアクセス回線の普及予測」を出した。ブロードバンド加入世帯数は、2005年時点で前回の予測に比べて110万世帯多い、1860.5万世帯。これは、現在までのマーケットの成長を分析すると、若干だが上方修正せざるを得ないためだ。
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上方修正の理由は、環境の変化に合わせて条件設定を変更したことによる。その変化と合わせ、各アクセス回線の傾向を解説していきたい。
なお、今回は昨年に算出した予測値を修正し、かつ2010年まで予測している。また、前回までは無線LANサービスとして一括りにしていた品目を、NWA(Nomadic Wireless Access:いわゆるホットスポットサービス)と、FWA(Fixed Wireless Access:家庭向けの固定無線アクセスサービス) の2種類に分類した。
ブロードバンド加入世帯の増加
ブロードバンド・アクセス回線全体の予測加入者数は、2005年で1860.5万世帯。ADSLの加入者予測を大幅に引き上げ、2003年以降のFTTH加入者推移を大幅に上方修正した。これは、ISDNユーザーのADSLへの乗り換えが加速し、NTTもそれを容認したこと(関連記事1、2)にくわえ、ADSL市場はいまだ需要超過の状況にあるためだ。今後もISDNからADSLへのシフトは加速する。
ADSLは2004年まで拡大
ADSLは、月間約30万件のペースで加入者が増加している。とくに一般家庭向けだけではなく、企業で専用線から安価なADSLへの移行が進んでいる。また、上位サービスとして登場する12M ADSLが、事業者間の価格競争によって、“数百円”という小幅な料金アップにしかならなかった点も大きい。各社の12M ADSLには長距離化技術が盛り込まれているため、ここ2-3年の間は、対応するNTT局の拡大に伴ってユーザー数も速いペースで増えていくだろう。
ただし、スピードに対するユーザーの“飢え”は無視できない。FTTHの回線工事料金が下がり、かつ月額5000円台を下回るような事態になれば、FTTHへのシフトが起こってADSLの伸びは鈍化するはずだ。
今のところ、ADSLとFTTHでは提供エリアと展開スピードに大きな差があるため、シフトは大都市部などに限られるだろう。しばらくは現在ADSL未開通エリアのインターネットユーザーのADSL新規加入が見込まれ、2004年まではユーザー加入者数は拡大するものと思われる。筆者はADSLユーザーの最大値を616.2万世帯(2004年9月末)と予測している。
CATVインターネットは伸びるか?
CATVは、前回予測に比べて若干だが上方修正し、2005年末で367.5万世帯とした。ADSLが開通していない地方でCATVインターネットサービスが提供されている点は大きい。
しかしながら、ADSLサービスの価格と比較した場合や、FTTHサービスの伝送速度と比較した場合の競争力は低い。また、もともと事業基盤が弱く、ブロードバンドサービスにどこまで投資できるのか疑わしい事業者も多い。10Mbps以上の高速インターネットサービスは一部のCATV事業者に限られると思われるため、CATVインターネットの需要は放送サービスに加入するユーザーを中心に増加して行くにとどまるだろう。
FTTHは本命?
東京電力など電力会社が本格的にFTTH事業に参入してくれば、NTTとの価格競争が加速し、FTTH需要が急速に高まる可能性は高い。エリア展開の速度にもよるが、仮にNTTが早めにFTTH利用者を確保することを選択し、エリア拡大と価格競争を推進するならば、FTTHサービスは2003年以降に本格化してくるだろう。既築マンションやビルなどを対象としたFTTC/FTTBもこれを後押しするものと思われる。
FTTHサービスは、2005年末時点で521.0万人が加入すると予測する。
NWAとFWAの台頭
ホットスポットは、エリアが拡大すれば需要が拡大する。また、PDAや携帯電話で安価な通話を可能にする“モバイルVoIP”のサービスが需要に大きく影響するだろう。
一方のFWAも既築マンションやビルでは有力な選択肢となる。近くの電柱まで光ファイバーを敷設し、その先を無線LAN化するサービスが本格化し、マンション向けを中心に市場が拡大すると予想される。
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[根本昌彦, ITmedia]
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