ニュース 2002年10月1日 02:22 AM 更新

CEATEC基調講演
「e社会」の光と影

ブロードバンドインフラが整備された社会は、どうなるのか。沖電気の篠塚社長は、いい面も悪い面もあるとして、こんな未来図を描く

 家庭にはネットワークインフラが整備され、人々はカフェや公園のホットスポットから気軽にインターネットに接続する。そんな便利な世の中が、近いうちにやってくるが、少々の用心も必要だ――。

 こう話すのは、沖電気工業の篠塚勝正社長。同氏は10月1日に開幕した映像、通信の複合展示会「CEATEC JAPAN 2002」の基調講演で、同社の考える未来像を描いて見せた。

e社会は「いい社会」

 篠塚氏は、政府が主導するブロードバンド推進プロジェクト「e-Japan戦略」にふれながら、今の社会はネットワークインフラが整備されつつある状況だと話す。

 「e-Japan戦略の成果として、公立学校のインターネット接続率は81.1%(2001年3月)から100%(2002年3月)になり、オンライン化された行政機関の申請、届け出手続きは、124手続き(2001年3月)から590手続き(2002年3月)に増加している」。

 同氏はこうした流れの先にある世の中を“e社会”と呼んで、住民の利便性が向上すると評価する。「e社会は、いい社会。1人1人がグローバルネットワークを介して、いろいろなことを行えるようになる」。

e社会の影

 しかし、同氏はまた、ネットワーク環境が整備された社会には、負の側面も存在すると認める。

 「ネットワークを利用するサービスは、セキュリティ面を重視しなければならない。安ければいいというわけではない」(同)。ネットワーク/プラットフォームの運用、管理、および利用者のモラルによって、不正アクセスや情報漏洩を防がなくてはならないと指摘した。

 同氏は講演で、指紋、DNA、ICチップ、虹彩などを認証に利用するシステムが活用されることを予想。実際、沖電気工業としても虹彩を用いた認証システムを開発していることに触れながら(記事参照)、その必要性を強調した。

 もう1つ同氏が言及したのは、肖像権の保護。デジタルデータのコピー、流通が容易なe社会では、個人の顔写真などをきちんと管理することが重要となる。篠塚氏は、沖電気が現在、プライバシーを守るためのコミュニケーションツールを開発中だと話す。

 下写真は、テレビ電話などの際、ユーザーの顔からまゆ毛、口などの位置をトラッキングして、同様の表情を持つデジタルキャラクターを作成してくれる「フェースコミュニケ―ター」(仮称)だ。


会場では篠塚社長を模したキャラクターが登場。篠塚社長は「テレビ会議も、これでやったらどうだろう」と上機嫌


キャラクターは本人の表情に似せられる。あらかじめ用意した「怒る」「笑う」「慌てる」などの感情を表現することも可能

 篠塚氏はこのように、デフォルメしたキャラクター同士で会話をすることで、ネットワーク社会の円滑なコミュニケーションが実現すると想像した。

 「初めて会う人には、これでプライバシーを守ればいい。仮想現実の中で変身願望を満たすために、利用することも考えられる」。なお、システムは「今後実用、応用を目指す。もう少しいい名前をつけた方がいいかもしれない」として、詳細を明らかにしなかった。

 長引く不況の中、日本産業の弱体化が言われて久しい。しかし篠塚氏は、現在をe社会へ向けた構造改革の過程にあると位置付ける。「各企業が、ブロードバンド化という明確な方向感を持っている」として、日本がe-Japan戦略で元気を取り戻せると話した。

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[杉浦正武, ITmedia]

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