ニュース 2002年10月9日 10:38 PM 更新

“ホットスポット相互乗り入れ”の動きは広まるか

1事業者と契約するだけで、あらゆるホットスポットを利用可能に? アクセスポイントに複数事業者が相互乗り入れする動きは、はたして広まるのだろうか

 無線LAN通信を必要とする、緊急の事態が発生した。すぐ目の前には、ホットスポットがある。ところが、自分の契約する事業者が設置したアクセスポイントでないので、サービスを利用できない……。こんなもどかしい思いから、ユーザーが解放される可能性がある。

 公衆無線LANサービス「ホットスポット」を提供するNTTコミュニケーションズは、同じく公衆無線LANサービス「無線LAN倶楽部」を試験提供するNTT-BPとの間で、アクセスポイント相互乗り入れ(ローミング)の共同実験を行っている(記事参照)。NTTコミュニケーションズはまた、北海道でホットスポット事業を展開するワイコムとも、同様の実験を行っている(記事参照)。

 多くの事業者がアクセスポイントの相互乗り入れを進めるようなら、ユーザーが利用できるアクセスポイントの数が増え、各サービスの利便性が向上する。業界としてこの動きが広まるのかどうか、NTTコミュニケーションズの担当者に聞いた。


左から、NTTコミュニケーションズユーザアクセス部の担当課長代理、加納貴司氏、ユーザアクセス部の太田直木氏

認証システム間を接続

 NTTコミュニケーションズユーザアクセス部の加納氏は、アクセスポイントの相互乗り入れには積極的に取り組むと話す。

 「ホットスポット事業への取り組み当初から、将来的に海外の事業者ともローミングすることがあるだろうと考えていた。まずは国内で、ほかの事業者とエリア展開を補完する」(同)。

 相互接続実験では、両社の認証システム間をVPNで結ぶという構成をとった。たとえば、札幌にあるワイコムのアクセスポイントにNTTコミュニケーションズのユーザーがアクセスしようとした場合、その情報はまずワイコムの認証センターに伝送される。

 ワイコムの認証センターはNTTコミュニケーションズの認証センターに問い合わせを行い、ここで認証をパスすれば、アクセスポイント側でアクセスを許可する。ユーザーは、ワイコムのネットワークを通じて、インターネットに接続できるわけだ。この時、「バックボーンを相互接続する必要もなければ、アクセスポイント側で設定を行う必要もない」(太田氏)。


ワイコムのホットスポット認証画面。NTTコミュニケーションズのユーザーは、通常どおりIDとパスワードを入力するだけでサービスを利用できる。いたって分かりやすい

課題は2つ

 相互接続にあたっては、各事業者が採用する認証方式の違いがポイントとなる。NTTコミュニケーションズは、個別の認証IDとパスワード、およびESSIDとWEP暗号化といった標準的な方式を組み合わせてユーザー管理を行っている。MISなど独自技術を認証に利用する事業者(記事参照)とは相互接続が困難だが、接続実験に参加した事業者は、いずれもWEPやESSIDを利用しており、仕様が近い。

 一方で、標準化作業が進むIEEE 802.1xの採用を表明する事業者も多い。NTT-MEやNTT東日本といった事業者がそうだ。

 「802.1xでは、認証カギの交換方式など細かい面も含めると、3、4種類の規格があって統一されていない。来年、802.1xを包含するかたちでIEEE 802.11i(記事参照)が明確に策定されるまでは、相互接続は難しいだろう」(加納氏)。

 また、インフラを相互接続する際につきものの、“利用者料金をどう配分するか”というルール策定も課題。

 「極端な話、アクセスポイントを1個設置して大手と相互接続してしまえば、非常に楽にサービスを全国展開できる」(加納氏)。接続する両社の事業規模に差があった場合、いかに不公平感のないよう、配分ルールを設定するかがポイントだ。

 今回の実験では、まだ具体的な料金体系を規定していない。今後事業者間で、定額の設定を行うのか、“ユーザーが何回ログインしたか”などから従量設定にするのか、はたまたローミングの専門事業者を介して、料金算定をまかせるのか。この点は「当面の課題」とされた。

ホットスポットの起爆剤になるか?

 とはいえ、こうしたローミングサービスはユーザーメリットにつながることは確か。ホットスポット市場は現在、まだ試験サービスを提供する段階の事業者もいるなど「立ち上がりが遅れている状況」(加納氏)だが、相互乗り入れの動きが本格化すれば、この状況を打破する起爆剤にもなりうるだろう。



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関連リンク
▼ NTTコミュニケーションズ

[杉浦正武, ITmedia]

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