ニュース 2002年10月11日 07:17 PM 更新

“PCとAVデバイスの共存”を実現する「RoomLink」

今回のテーマは「RoomLink」。「VAIO Media」で提供される映像、音楽、写真をネットワーク経由でAVデバイスに出力できる、小型ネットワークアプライアンスだ。ネットワーク経由でメディア再生と聞くと「きっと、イライラするような操作レスポンスに違いない」と思う人もいるだろうが、決してそうではない

 先週に引き続き、「VAIO Media」に関するレポートを続けることにしよう。先週はVAIO側のソフトウェアプラットフォームとWindows上で動作するVAIO Mediaクライアント(プレーヤー)ソフトウェアを紹介したが、今回はVAIO Mediaとイーサネットを通じて繋がる「RoomLink」についてだ。

あらゆるテレビ/オーディオ機器をVAIO Media対応に

 RoomLink(正式名は、ネットワークメディアレシーバー:PCNA-MR1)は、VAIO Mediaで提供される映像、音楽、写真といったネットワーク経由のオンデマンドアクセスサービスに接続可能な、厚さ29ミリの小型ネットワークアプライアンスだ。VAIO Meiaは先週紹介した新バージョン(VAIO Media 2.0)はもちろん、VAIO Media 2.0がインストールされていない以前の機種でも利用できる(ただし、RoomLinkに付属するCD-ROMで新仕様のソフトウェアをインストールする必要がある)。


製品名ネットワークメディアレシーバー「PCNA-MR1」
再生ファイル形式MPEG2、MPEG1(GigaPocket搭載VAIOをサーバとする場合)、ATRAC3、ATRAC3plus、WAVE、MP3、BMP、TIFF、GIF、JPEG、PNG
映像出力Sビデオ、コンポジットビデオ
音声出力ライン(ピンジャックL/R×1)、光デジタル(角形光ジャック)
ネットワークポート100BASE-TX
電源AC100ボルト(ACアダプタ使用)
本体サイズ29(幅)×141(高さ)×155(奥行き)ミリ
重量約600グラム

 RoomLinkは、ハードウェアのMPEG2デコーダを内蔵しており、MPEG1はもちろん最大8MbpsのMPEG2を再生する能力を持つ。またSonicStageに登録されたATRAC3、ATRAC3plus、WAV、MP3の再生をサポートしている(SonicStageではWMAを扱うことも可能だが、RoomLinkではサポートされていない点に注意)。ATRAC3plusという名称は耳慣れないかもしれないが、これはATRACの半分程度のビットレートに最適化したATRAC3に対して、より低いビットレート(64Kbps以下)での音質を重視したフォーマットとのことである。

 出力端子はアナログステレオ音声、コンポジットビデオ、Sビデオ、光デジタル出力(SP/DIFフォーマット、TOS-Link端子)で、ネットワークとの接続は100BASE-TXによる。本体に操作ボタンは電源スイッチ以外ないが、代わりに専用の赤外線リモコンが添付されており、すべての操作はリモコンから行うようになっている。加えてオプション製品として、802.11a対応の高速ワイヤレスLANコンバータPCWA-DE50が用意されているため、RoomLinkを最大54Mbpsの高速無線LANに対応させることもできる。

 再生可能なビデオフォーマットが、最大720×480ピクセルの解像度を持つだけに、D2端子が付いていれば……と残念には思うが、あらゆるテレビ、オーディオ機器と接続し、PCの無い場所でVAIO Mediaの提供するメディアサービスを利用できる点は本当に便利、いやそれ以上だ。

PCのパワーを家電製品で楽しめる心地よさ

 単純に便利である“以上”というのは、PCでメディアデータを管理/再生するときのストレスと、家電製品でデジタルメディアを扱うときのストレスの両方を、すべてではないにしろ、解決してくれるからだ。


「RoomLink」のメインメニュー。PC版クライアントとユーザーインタフェースはほぼ同じ

 PCでメディアデータを管理/再生するストレスとは、(当然ではあるが)PCが存在するところでしか利用できないこと。PCのハードディスクとリッチなGUI、検索性などはPCの世界でしか利用できない。もちろん、PCからビデオ出力機能などを用いてテレビに接続したり、PCのオーディオ出力をオーディオ装置に接続して楽しむことも可能だが、ワンルームマンションならいざ知らず、一般的な人間の生活パターンにマッチしていない。

 1台のPCを複数の家族で利用することも可能だが、実際にはまだ“リビングで楽しむみんなのパソコン”は偶像にしか過ぎない。多くの場合、PCは個人の所有物で、巨大なストレージやテレビチューナーを持つデスクトップPCは、個人の部屋の中にある。

 その部屋の中だけで話が完結すればいいが、リビングにある大型テレビでGigaPocketの映像を見たり、本格的なオーディオシステムでSonicStageの音楽を聴きたいといった欲求は出てくる。しかし、そこで“リビングにも、もう1台のPCを!”というアイディアは、ちょっとリアリティが低い。

 ならば、家電製品だけで完結しても良いのでは? そういう考え方ももちろんある。ハードディスク内蔵DVDレコーダーは、今や珍しい家電製品ではなくなりつつあるし、将来的にはIPネットワークで透過的にAV家電が結びつき、そこにPCが介在する必要はなくなるかもしれない。しかし、現在のハードディスク容量は(大きくなったとはいえ)、まだまだ容量に不満が出なくなるほどのサイズには達していない。また、管理性や検索性などを考えると、家電製品だけで日々蓄積するメディアをやりくりするのも大変な作業になる。

 たとえば、音楽好きの人であれば、トータルで1000枚ぐらいのCDを持っている人も少なくないと思うが、1000枚のCDを管理するのは至難の業。それをたとえばハードディスクに記録したとして、およそ1万曲にも上るだろう楽曲を効率よくネット家電で扱えるのか? というと疑問だ。

 デジタルカメラの画像にしても、400万画素以上の高画素カメラのデータを、メモリカードからアプライアンスで表示しようとしても、レスポンスや展開速度はPCにはかなわない。ならばPCに解像度変換などを行わせ、テレビに見合ったフォーマットで送ってもらう方がいいはずだ。今年はJPEGファイル入りのCD-Rをテレビ画面で再生できるDVDプレーヤーが増えたが、それらで高画素の画像を表示させると処理時間が長く、非常にイライラさせられる。

 柔軟性が高く高解像度のディスプレイがあり、強大なプロセッシングパワーと巨大ストレージデバイスを備えるPCが活躍する場面、使いやすい場面があれば、半面でシンプルな家電的インタフェースとリモコン操作、小型で安価なネット家電の方が使いやすい場面、ふさわしい場面もある。PCも家電もネットワークになり、同じIPネットワークで結ばれているならば、透過的に互いの特徴を利用しあい、価値を高める方が有益だ。

 VAIO Mediaが目指しているのは、そうしたPCとAVデバイスが共存し、互いを高め合うネットワークだ。RoomLinkとVAIO Mediaを使っているとそう感じる。

意外にレスポンシブかつ高機能

 ネットワーク経由でメディア再生、しかも端末が小さな箱と聞くと「きっと、イライラするような操作レスポンスに違いない」と思う人もいるだろう。しかし、録画済みビデオに関しては、8Mbpsの高品質なMPEG2ビデオでも、十分に満足できる遅延時間で再生を開始できた。なお、以下はVAIO MXと無線LANを使わず、100BASE-TXで接続した場合の数字だ。

 まず再生したいビデオファイルを選択してから再生が開始されるまでの時間だが、およそ3秒程度。さらに任意の場所まで移動して再生させると、約2秒で指定の場所までジャンプする。なお、早送り/巻き戻し位置の指定は、GigaPocket得意のフィルムロールによるサムネイル表示が使えるなど、ユーザーインタフェースはなかなか凝ったものになっている。


ビデオ再生時はGigaPocketのプレーヤーと同様にサムネイル表示を行える

 ただし、ライブのテレビを見る場合は、もう少しレスポンスが落ちてしまう。たとえばチャンネルを切り替えてから、実際に映像が切り替わるまでには5秒ほどのタイムラグがある。

 このあたり、わずかな差ではあるが、操作性に大きな影響がある。この問題はVAIO Mediaに限った話ではない。マイクロソフトのWindows Media Series 9では、バッファサイズを可変コントロールすることで、バッファリングによる時間差を吸収する技術が盛り込まれているが、同様の仕組みがVAIO Mediaにも必要だろう。

 ビデオでさえ、それほどストレスを感じないのだから、当然ながら音楽再生のレスポンスには全く問題ない。AVマニアなら音質面で不満を感じるかも知れないが、デジタル出力を用いてAVアンプやオーディオDACに音の再生を任せれば問題ない。

 ただ、SonicStageで作成したプレイリストしか再生できない点は改善してほしいところだ。たとえば、ジャンルごと、アーティストごとに分類して再生するなどの機能はあっても良さそうだ(SonicStageには分類する機能があるが、プレイリストとして扱えない)。RoomLink側でそうした音楽ファイルの管理を行うには技術的、能力的問題があるというなら、SonicStage側にRoomLink用のジャンルやアーティスト名などの属性で分類したプレイリストを自動生成する機能を付ければいい。音楽ファイルは膨大な数になるだけに、もう一工夫が欲しいと感じる。


もちろん音楽再生も可能。ただし音楽を再生しながら写真を見るなどの操作はできない

 一方、フォトサーバへのアクセスは非常に快適。PC側であらかじめ適した解像度に変換しているようで、サムネイル表示、フル画面表示ともに高速で待たされることがない。たとえ600万画素級のデジタルカメラ画像であっても、PCの強大なパワーが解像度差を吸収してRoomLink側の演算能力の低さをカバーしてくれる。


フォトサーバは解像度変換をPCで行うため快適な速度でインデックスも表示


フル画面に表示する場合もNTSCに最適化したサイズへ自動変換

 ひとつ残念なのは、本機からTVの録画予約を行う際、時間とチャンネルをひとつひとつ指定して入力する方法しか用意されていないこと。時間を指定しての録画や、見ているテレビをその場で録画開始することは可能だが、番組表にはアクセスできない。これはRoomLinkのシンプルなハードウェア構成を考えれば納得もできるが、なぜかGコードにも対応していない。また、一時停止させてしばらくしてから追っかけ再生させる、いわゆるタイムシフト再生もRoomLinkからは行えない。


録画予約も可能だが、GコードやEPGは利用できない

さまざまなバリエーションの登場を期待

 RoomLinkは、VAIO Mediaで扱うすべてのメディアを再生させる、テレビの脇に置くネットアプライアンスだった。しかし、場所によってはテレビではなくオーディオ機器にだけ接続したい場合もある。現在のRoomLinkは、本体にユーザーインタフェースとなるディスプレイを持たないため、オーディオ機器に繋いだだけでは音楽だけを楽しむためのデバイスとしては利用できない。

 今後は、テレビを前提としたものだけでなく、ブラウン管にメニューを映し出さなくとも、機器単体で再生コントロールを行えるようなネットオーディオレシーバなども欲しいところ。もちろん、昨年から開発意向表明されているネットワーク対応の「WEGA」をはじめとする、VAIO Media対応AV家電にも期待したいところだ。

 先週の段階では、VAIO Mediaが独自プロトコルと考えていたため、そうしたネットAV家電にはあまり興味がわかなかった。しかし、相互運用可能な方向でオープンスタンダードが決まっていくならば話は別だ。ソニーはユーザーの疑問を解決するためにも、他ベンダーとの相互運用やプロトコルのオープン性などを明らかにしていくべきだろう。それを明らかにしないうちは、せっかく大幅に改良された「VAIO Media 2.0」もその本質を理解してもらえないのではないだろうか?

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[本田雅一, ITmedia]

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