ニュース 2002年10月18日 11:14 PM 更新

朝日放送、番組のネット配信はビジネスにならない

番組のデジタル化、およびブロードバンド配信に興味を示す地上波放送局。しかし、朝日放送の技術担当者は、コンシューマー向け配信は収益性に難があると切り捨てる

 2003年末から地上波デジタル放送が開始されることをうけて、放送各局も番組のデジタル化に取り組んでいる。

 WPC EXPOと併催された「Asia Pacific Broadband Summit 2002 Tokyo」では、朝日放送の情報技術センター、香取啓志氏が登場。同社が試験的に行った、IPv6ネットワーク上での番組配信を紹介した。

甲子園での実証実験

 香取氏は、TV業界がこれまでも度重なる技術革新の波にさらされてきたと話す。

 「白黒TVからカラーTVへ、そして16ミリのフィルムからVTRへと変化してきた。今また、アナログからSD放送、HD放送へと移行中だ」(同)。同社は既に、東名阪の放送設備のデジタル対応を進めている段階。来年夏には、デジタルラジオ放送が行える見込みだという。これに伴い、番組を制作段階からデジタル化するとともに、そのブロードバンド配信も考えているという。

 「2〜3年前、まだIPv6対応の端末も少ない頃から、IPv6でのマルチキャスト配信を想定した実証実験を行ってきた」(同)。


IPv6クライアントにライブ映像を配信したところ

 2001年には「第83回 全国高校野球選手権大会」をIPv6クライアントに配信。CMの部分にはコンピュータグラフィックスを代わりに挿入し、ライブ中継のテストをした。

 また2002年には、IIJのプラットフォームを利用してCDNを構築した。甲子園での高校野球中継を、光ファイバーにより1.5Gbpsの映像として朝日放送まで伝送、大阪(堂島)や東京(大手町)のNOCを経由して、各IX(インターネット・エクスチェンジ)にコンテンツ配信している。

 しかし香取氏は、こうした実験の結果から“ブロードバンド配信には、問題も多い”と考えるようになる。

 「(高校野球の)サイトには、テキストベースのコンテンツだけで常時60Mbpsのトラフィックが生じた。通信事業者なら、これだけのサーバインフラを運営していくのにどれだけのコストがかかるか、想像がつくだろう」(同)。

 同氏はまた、ゴールデンの時間帯では番組製作費が1時間1億円かかること、高校野球の一連の番組を制作する費用も数億円かかったことを紹介。ブロードバンド配信で、これだけの費用を回収できるか疑問視した。

 「ネットでは1万〜10万世帯をカバーするだけでも、多大な設備投資が必要になる。それでなくても放送局は、送信設備にスタジオ、機材を合わせると100億円ほどの設備投資を行っているもの。どうしても、100万、1000万世帯がミニマムターゲットになる」。

 コンシューマー向け番組配信は、収益性の面から“まったく”事業が成立しないというのが、同氏の結論のようだ。その代わりとして、ほかの通信事業者を対象にしたコンテンツのB2B販売を検討しているという。

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[杉浦正武, ITmedia]

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