ニュース 2002年10月25日 00:10 AM 更新

「AudioTron」で感じるホームネットワークの楽しさ

これ1台あれば、自宅のPCで管理する音楽はもちろん、世界中で放送されているインターネットラジオを楽しめる。それもPCの置かれていない部屋で。音楽ファンにとって非常に魅力的な「AudioTron」を紹介しよう

 米国にTurtleBeachという会社がある(日本語でいえば亀浜?)。なんとも奇妙な社名だが、同社は以前から高品質のPC向けサウンドカードを開発することで知られていた。その昔、ISAバスの時代には、まだクリエイティブメディアに買収されていなかった電子楽器メーカー、Emuのシンセサイザーチップを搭載したサウンドカードを発売したり、ウェーブテーブルシンセサイザーが一般的になり始めた頃には細部にこだわった独自音色データのサウンドカードを作ってみたり、あるいはMIDI機能なしでWAV録音再生の品質を追求したサウンドーカードなんてのもあった。筆者も一時、「Tahiti」というカードを使用していたことがある。

 もっとも、PCがマニアのためのキカイから幅広いユーザー層向けの製品になるにつれ、TurtleBeachもごく普通のサウンドカードベンダーになっていった……ように見えたのだが、実際にはなかなか楽しい隠し球を持っていたのだ。

 それが2001年1月の「International CES」で登場した「AudioTron」というデバイスだった。あれから2年近くが経過しているが、AudioTronの楽しさは色あせるどころか、ハードディスク容量増加のおかげでどんどんその価値を高めていると感じるほどだ。

 今回は、僕が私物として米国から持ち帰ったAudioTronについて紹介しよう。


AudioTronはAVラックサイズで独自のディスプレイも装備したネットワークオーディオプレーヤー。表示も見やすく操作性は良好

UPnPではないけれど

 AudioTronは、イーサネットもしくはHomePNA 2.0を通じて、PC内に収められたオーディオデータを再生するネットワークオーディオプレーヤーである。たとえば、自分の部屋に置いてあるPCのハードディスクに音楽ファイルがあるとき、リビングルームまでイーサネットや無線LANで結ばれていれば、その音楽をリビングルームのオーディオ装置で再生できる。PCが持つ巨大なハードディスクをジュークボックス化し、簡単なリモコン操作で音楽を楽しめるわけだ。ソニーの「RoomLink」から音楽プレーヤー機能を取り出したような製品ともいえるが、音楽再生に関してはプラスαの機能を備えている。

 対応ファイルフォーマットはWAV、MP3が当初からサポートされていたが、今年に入ってからのファームウェアアップデートによりWMAにも対応するようになった。Windows Media 9 Seriesで追加されたVBRエンコードのファイルも問題なく再生できる上、MP3も最高320Kbpsまで対応するため、WAVのサポートともに音質にウルサイユーザーも満足できる仕様となっている。音声出力はRCA端子のほか、TOS-LINK形式の光デジタルアウトも備える。


AudioTronの背面。RCAピンジャックと光オーディオ出力を備えている

 さらに新ファームウェアでは、ホームネットワーク内の音楽ファイル再生だけでなく、「icecast」(Apple Darwin Streaming ServerなどがサポートするMP3ストリーミングのスタンダード)や「SHOUTcast」(NullSoftのWinAMPがサポートするMP3ストリーミング形式。icecastとの互換性もある)、それにWindows Media Serverからのインターネットラジオ放送を受信する機能も加わった。

 つまり、これ1台あれば、自宅のPCで管理する音楽はもちろん、世界中で放送されているインターネットラジオを、PCが置かれていない部屋で楽しめるという、音楽ファンにとって非常に魅力的な環境を手に入れることができるのだ。


自身がWebサーバになっており、Webブラウザからリモートコントロールすることもできる

 リビングまでイーサネットが通っていないという人も、各社から発売されている無線LANとイーサネットのメディア変換アダプタを使えばワイヤレスでAudioTronを楽しむことができる(ただし、IEEE 802.11bの環境ではWAV再生はスムースに行えない)。

 RoomLinkと比べたAudioTronの良いところは、テレビを使わなくとも音楽再生を行えるところ。RoomLinkは接続されたテレビをユーザーインタフェースとして利用していたが、本体前面に表示パネルを備えているため、それ単体で音楽を再生できる。

 ただし、この何週かで繰り返し話をしてきたUPnP(Universal Plug&Play)には残念ながら対応していない。AudioTronはUPnPで音楽再生を行うためのプロトコルが決まる前から商品として存在しているためだ。能力的にはUPnPに対応することも可能なため、将来的にはファームウェアアップデートでUPnP対応になる可能性もあるものの、今のところTurtleBeachからは何のアナウンスもない。

 では、AudioTronはどのようにして動作しているのだろう?

Windowsのファイル共有機能を自動検索

 AudioTronはUPnP対応ではないが、設定する項目はほとんどない。IPアドレスはDHCPサーバから取得し、音楽ファイルが保存されている場所やネットワーク上で利用可能な音楽ファイルの属性(曲名、アルバム名、演奏者など)は自動的に検索される。

 このとき、AudioTronが行っているのは、同じTCP/IPサブネット内にあるファイルサーバから利用可能な共有フォルダを検索し、さらにそのフォルダ(あるいはそのさらに仮想のフォルダ)に対応する形式のファイルが存在するかどうかを探し、さらにそのファイルのタグを読みとる処理。すべての共有フォルダを探し、収集したファイルパスや属性などを内蔵メモリに記録する。

 このため、メモリから溢れるほど多くの曲を扱うことはできないが、スペック上は最低でも1000曲以上(属性データのサイズによって変化)を管理可能となっている。実際、わが家では1200曲ほどの音楽データをサーバに放り込んであるが、AudioTronからすべての曲が認識される。


再生待ちの曲リストを表示。各種設定、ステータス表示など、すべての機能にWebブラウザからアクセスできる

 共有フォルダを提供するサーバはSMBでアクセスできさえすれば良いため、LinuxなどでSMBサーバのSambaなどを動かせばWindowsでなくても良い。もちろん、WindowsならばWindows 9x/Me/2000/XPいずれでもかまわないし、ファイルサーバ機能を持ったホームサーバなどのサーバアプライアンスでもかまわない。

 ファイル検索には、共有フォルダの数などにより、ある程度長い時間がかかるものの、そのプロセスは本体後ろにあるメインスイッチが押された場合、もしくはオプション設定メニューからファイル情報の再取得を指示した時だけに動作。通常の電源オン/オフ時には、あらかじめ記憶しておいたデータベースが使われるため、使い勝手の悪さを感じることはない。またサーバ側の設定もWindowsならば専用のインストーラがフォルダ共有の設定やアクセス権の設定を自動的に行ってくれるため、特にネットワーク知識に長けていなくても、簡単に利用することができる(もちろん、自分で設定してもいい)。

 なお、プレイリストはM3U、PLS、ASXの各形式に対応しており、音楽ファイルと一緒に共有フォルダの中に入れておけば自動的に検索し、メニューからプレイリストを選択可能にしてくれる。

 仕組みとしては単純で、UPnPのようなシンプルな仕様でもないが、とりあえずPCのあるネットワークさえあれば、どこでも使えるところはとてもいい。価格もイーサネットのみのモデルならば299.95ドルと安価な点も魅力だ。


曲はタイトル、アルバム、アーティスト、ジャンルなどのカテゴリ別に分類されており、目的の曲を探すのも簡単。本体側でも同様の手法で曲データの絞り込みを行える

Webブラウザからも操作が可能

 操作は、きょう体の操作パネルか赤外線リモコンがメインとなるが、特にリモコンからの操作性は良好だ。ファイル検索方法(アルバム名、アーティスト名、曲名、ジャンル、プレイリスト選択)を指定すると分類項目が表示され、分類項目を選ぶと該当するファイルすべてがAudioTronの再生リストに加わる。さらに本体の操作はジョグダイヤルが効果的に使われている。


お気に入りのプレイリストを一発で呼び出せるキーなど、機能豊富な赤外線リモコンが添付されている

 もっと大画面での操作が行いたい場合は、Webブラウザを使用することも可能だ。AudioTron自身がWebサーバを内蔵しており、アクセスすると再生コントロールや再生曲の選択、本体設定の変更などをPCやPDAから行えるのだ。再生中はトップページに演奏中の「曲名」「アーティスト名」などのステータスを表示。次曲のデータも併記される。無線LANを使って小型ノートPCやPDAをリモコンとして使えるというのはなかなか便利。画面が広い分だけ、多数の曲を管理する場合でも見通しがきく。


インターネットラジオ機能は、専用サイトのturtleradio.comと連携しながら動作する。サイトに登録された局のリストをインターネットからダウンロードして利用する


icecast、SHOUTcast、Windows Mediaに対応したラジオ局を自分で登録することもできる

日本語には対応していないけれど

 さて、このAudioTron。残念ながら日本では扱っている代理店がない。しかし、米国のPC小売店や通信販売サイトなどでは普通に扱っているので、個人輸入の形で発注すれば入手することは可能だ。ただし日本語の表示には対応しないため、音楽ファイルのタグ情報などに日本語を書いても正常に表示することはできない。

 しかし、その点さえ許容できるならば、AudioTronはとても便利な製品だ。今後、インターネットラジオ機能とネットワーク経由でホームサーバ上の音楽再生を行う製品は続々と登場する見込みだが、その前にホームネットワークで遊んでみたいという人にはお勧めの製品である。

 ユーザーとしては、どのようなプロトコルが標準になり、将来、どの製品と繋がるようになるのかといった面が気になると思うが、AudioTronはUPnPほどの手軽さがない代わりに、すでにさまざまなプラットフォームで利用できるSMBベースのファイル共有機能で動作する。AudioTronへの投資は無駄にならないはずだ。

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▼ TurtleBeach

[本田雅一, ITmedia]

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