連載 2002年11月1日 08:01 PM 更新

Streaming Now!〜流れをつかめ!
「ストリーミングの常識」を覆せ!(1/2)

インターネットの世界では、さまざまな定説がある。今回は、「そういった定説を疑ってみよう!」ということを訴えたい

 ストリーミングの世界、インターネットの世界では、しっかりした根拠がないまま定説と化してしまった事柄が実に多い。そしてそれらは「定説だから」ということで疑いも持たれずに既成事実となってしまい、ますますゆるぎのない定説となってしまう(笑)。今回は、「そういった定説を疑ってみよう!」ということを訴えたい。「普段、私が唱えていることも含めて」である。

定説1:「ストリーミングは短時間モノじゃないと見られない」のウソ

 先日、Broadbandにテレビ番組をブロードバンド配信するサービス、「Chance!@トレソーラ」の記事が載った。詳しくはここを読んでいただきたいが、たぶん、この記事を読んだ方の多くは、ストリーミングビジネスに対して否定的な感想を持ったのではないかと思う。「ああ、ストリーミングってダメなのか」「ふーん。やっぱりテレビってストリーミングに向かないのね」と。だが、この記事を注意深く読んでいると、まったく別の感想を持つことができる。そこまで膨らませてストリーミング全体のことと考えずに、単なる一つの事例として、「注意深く」読むのである。

 まず、普通に読んでもスゴい点がある。原田社長の言葉にもあるように、トレソーラは、「ブロードバンドではショートコンテンツしか視聴されない」という定説を打ち破ったのだ。これはストリーミングの今後のことを考えると非常に心強いデータである。

 「長時間ものがあまり見られない」という何らかのデータと、「誰があんなちっちゃい画面で長い間PCの前にいるの?」という、多くの人の勝手な思い込みからできあがった定説であったが、何のことはない、コンテンツが魅力的であればそんなことはなかったという話である。きちんとファンがつくようなコンテンツであれば、ファンは少々苦労しても視聴するのだ。だから、コアなユーザー層に対して良質なコンテンツを提供すれば、必ず道は開けるという話である。まあ、そのコンテンツの制作費をどうやって捻出するかというのはまた難しい問題なのだが……。

定説2:「世の中のPCのほとんどがWindows」の落とし穴

 さて、私が非常に気になったのは、「サイトのトップを訪れた人のうち、40%以上があきらめて、引き返してしまった」という部分である。これについてはDRMなどによる操作の煩わしさが問題視されているようだ。だが、私の考えは違う(このあたりについては、どういったデータが元になっているかを知らないまま解釈するのは危険なのだが、言葉通りに受け止めた上での解釈だ)。

 このサービスではMacのユーザーがターゲットとなっていない。だから、もしかすると、ひょっとすると20%くらいはMacのユーザーで、トップページに行ってから「なーんだ、見られないのか」と引き返したという可能性もあるのだ。

 「そんなこといったって、シェアが1割にも満たないようなPCでしょ?」と思う業界関係者がいるとすれば、相当に鈍い人だと言わざるを得ない。

 3年ほど前、「とあるサイトの話」を聞いたことがある。そのサイトにアクセスするユーザーは、月〜金のデイタイムは、ほとんどがWindowsからのアクセスなのだが、夜と土日は3〜4割まで跳ね上がるという話である。つまり、「会社はWindowsでも自宅の趣味ではMac」という人が結構存在するというデータである。が、平均データとしてならしてしまえば、「8〜9割がWindows」なのである。

 この現象がもし、世の中のあらゆるところにあるとすれば、「ヨシ、ターゲットは8割だ!」といって、Windowsでしか見る事のできない個人向けのエンターテインメントサイトをセッセと構築しても、実は6〜7割のユーザーしかターゲットにしていないことになるということもあり得るのだ。

 今現在、この割合がどうなっているのかはわからない。想像するに、Mac比率は下がりつつも、そういう傾向はしっかり継続しているのではないかと思う(だれか、きっちりとデータをとってください!)。そこまで見極めた上で対象プラットフォームを選んだほうがいいと思うのである。

 また、主な視聴者層は「30〜40代」とのことだが、世代別に見れば、Macユーザー比率がいちばん高いのはここだ。放送しているコンテンツを見ても、結構Macユーザーにウケるのではないかと、私は見ている。

 この「アクセス数比率」も興味深いものだが、他に、「ユーザーサポートに費やすコストはどちらのプラットフォームが高くつくか」「課金コンテンツに対してお金を払いやすいのはどちらのユーザーか」といったことも、丁寧に見ていくと、面白い結果が出るのではないかと思う。

 例えば、ある両プラットフォーム対応の魅力的な有料コンテンツの入り口で、購入するかしないかという「購入比率」をプラットフォーム別にチェックする。ここでMac側の購入比率が高ければ、Macユーザーを相手にしたほうが効率よく販売できると言えるだろう。「視聴率よりもお金が入るかどうかが問題だ」という会社にとっては、あるいはMacだけをターゲットにしたほうがいいということも考えられる。

 とにかく、そういう細かなデータが見たい。みんな、安易にシェアを信用し過ぎているのではないだろうか。

定説3:「デジタルものはコピーされるから気をつけろ」のマヌケさ

 さて、もう一つは著作権、肖像権保護のお話である。トレソーラの場合、画面キャプチャまでされないように配慮している。そして、その操作の複雑さがアダになった部分があると分析されている。それはそうなのであろう。世の中にウルサい人たちが多いから、準備せざるを得なかったワケだ。

 だけど……いきなり基本的なところに戻るが、そのウルサい人達に聞きたい。「なんでアナログの録画は良くてデジタルはダメなの?」

[姉歯康, ITmedia]

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