ニュース 2002年11月1日 08:44 PM 更新

「TV-Anytime Forum」が目指すもの

従来とは異なる新しい視聴スタイルを提案するホームサーバ構想。「TV-Anytime Forum」は、ホームサーバを前提としたコンテンツ配信の国際標準の策定を急いでいる

 ホームサーバでは、コンテンツ配信の経路として、現在主流の“テレビ放送”のみをターゲットにしているわけではなく、インターネットなどの“通信”世界をもターゲットにしている。もっと言えば、パッケージメディアを含めることもできる。

 このため、ホームサーバを使用したコンテンツの視聴スタイルは、従来のテレビ番組を録画するというスタイルだけでなく、睡眠中や会社/学校に行っている時間など、空き時間に自分の嗜好にあったコンテンツをまとめてダウンロード。後から視聴するといったことが考えられる。つまり、新しいコンテンツ視聴の姿は、好きな“時”に好きな“番組”をどこでも“自由”に視聴するというスタイルでするというわけだ。

 こういった通信や放送が融合したホームサーバ構想では、「PDR(Personal Digital/Disc Recorder)」や「PVR(Personal Video Recorder)」といった蓄積型のAV機器を使用し、コンテンツを視聴する。この時に重要なのが、コンテンツの情報に関する“標準的”な仕様だ。現状では、これが確立されていないため、インターネットでは、標準的な番組表などがない。そこで、この新しい視聴スタイルの標準仕様の確立を目指しているのが、「TV-Anytime Forum」である。

TV-Anytime Forumの標準化ステップ

 TV-Anytime Forumは、放送事業者や通信事業者、家電メーカー、コンテンツプロバイダーなどからなる約80社で構成される。PDR/PVRがあることを“前提”に、新しいAVコンテンツの視聴を実現するために必要となる「Key Technology」の国際標準を策定することが目標だ。

 同団体では、Phase1とPhase2という2つのステップによって、これを実現する計画で、現在、放送を中心としたアプリケーションの標準化を定めたPhase1と呼ばれる仕様の詰めが行われている。2003年3月には、ヨーロッパの「ETSI(European Telecommunication Standards Institute)」に提出される予定である。

 TV-Anytime Forumが策定したPhaese1の柱となる仕様は、番組の検索などに使用できるメタデータやコンテンツの権利保護(Rights Management and Protection)」、IP Network上でメタデータを検索・取得できるAPIの規定などの標準化である。

 中でもメタデータは、TV-Anytime Forumの策定した仕様の「鍵」とも言えるものだ。MPEG7をベースに開発され、コンテンツの検索を行ったり、機器側に登録しておいたユーザーの嗜好情報などを参考にして、それに即したコンテンツを自動的にダウンロードし、蓄積するといった機能を提供するために必要となる情報を提供する。また、番組表などのデータも準備され、ホームサーバに蓄積されたコンテンツとリアルタイムのコンテンツの同期再生などを実現することも可能だ。

 Phase1では、上記の機能を実現するために、コンテンツがどういったものなのかを「特定」するCRID(Content Reference Identifier)」と呼ばれる「ID」情報が策定され、基本的にコンテンツそのものに対してこのID情報が付加される。さらにLocationと呼ばれる情報も準備されており、Location Resolverによって、両者は結び付けられるように設計されている。


CRIDを使ったコンテンツとの関連付けのイメージ

 権利保護では、コンテンツの権利を保護することはもちろんのこと、メタデータの保護も視野に入れているという点が、最大の特徴だ。現在のPhase1では、主にメタデータの保護に関しての規定の策定がなされており、Phase2では、より高度な権利処理を「XrML(Extensible Rights Management Language)」を利用して実現する予定だ。

 TV-Anytime Forumが、メタデータの保護を視野に入れているのは、P2PやB2B/B2Cなどによって、メタデータそのものを広く流通させ、コンテンツの普及に実際のデータそのものではなく、メタデータという"情報"をもって行うことを考えているからだ。つまり、コンテンツがどこにあるか、また、どういったコンテンツなのかといった情報を普及させることによって、ユーザーが必要なコンテンツを簡単に探し出せるようにするのと同時に、簡単に入手できるようにする仕組みを用意しようというわけだ。

 さらに、次なるステップとなるPhase2では、AVデータ以外のデータのPDR/PVRに保存させる、蓄積された情報とAV情報を同期させて表示させる、PDR/PVRの一般的な機能の標準化などの新しいコンテンツへの対応が図られる予定だ。

 他にも、視聴者の思考に応じて広告を差し替える機能は視聴する場所によって広告の内容を変えたり、受信機の機能に応じたコンテンツの蓄積などの機能も追加され、2次利用や3次利用なども考慮したPhase1よりも複雑な権利処理への対応が図られる。

ホームサーバではビジネスモデルも変わる

 TV-Anytime Forumが描くコンテンツ配信は、大変自由度が高く、現在とは全く異なったビジネスモデルを提案している。というのは、蓄積型のAV機器を使用すると、CMは、無理に見る必要はなくなるばかりか、ダウンロード主体で考えると、CMが介在する余地すらなくなってしまうからだ。

 つまり、最初からCMがないコンテンツが流通することになる可能性もある。このため、現在のテレビ放送に見られるようなCMにより広告収入主体のビジネスモデルというのは成り立たなくなる可能性が高い。加えて、インターネットを使用したコンテンツ配信は、現状では、“タダ”というイメージがあり、これを払拭する必要も出てくる。

 しかし、新しいコンテンツ配信の仕組みは、同時に新しいビジネスのチャンスでもある。今までサービスを提供していたメーカーだけでなく、新しく参入するメーカーの増加も期待でき、新しいビジネスモデルができ上がっていくことになるはずだ。現状では、いったいどのようなビジネスモデルが作られていくのか分からないが、少なくとも、柔軟な機能を生かした便利なサービスが提供されることになるだろう。

 サーバとしてだけでなく再生機としても使用されるホームサーバの役割も見逃せない。従来の家庭用機器では購入後に新しい機能を追加することはまずできなかったが、こういった機器では、ダウンローダブルな機能を搭載しておくことで、新規機能の追加などが簡単に行えるようになっているだろう。

 TV-Anytime Forumにはさまざまなメーカーが参加しており、すでにTV-Anytime Forum仕様による放送を一部始めているところも出てきている。日本国内でもARIB(社団法人電波産業会)がTV-Anytime Forum準拠の仕様を決めている。ホームサーバなどの次世代のAV機器は、TV-Anytime Forum仕様にそった製品が、主流になる可能性が高いだろう。

関連リンク
▼ TV-Anytime Forum

[北川達也, ITmedia]

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