ニュース 2002年11月13日 09:03 PM 更新

UPnPの応用範囲を広げる“SCP” その仕組みは?

マイクロソフトの電灯線ネットワーク規格「SCP」(Simple Control Protocol)。「UPnP Forum Asia Summit」に合わせて開催された「SCPセミナー」では、マイクロソフト、三菱電機などの担当者がSCPの現状と展望を語った

 PCユーザーにとって、既に馴染み深い言葉となったUPnP(Universal Plug&Play)。その応用範囲をホームオートメーションの分野にまで広げるマイクロソフトの電灯線ネットワーク規格「SCP」(Simple Control Protocol)が動き出した。11月11日〜12日の「Universal Plug and Play(UPnP) Forum Asia Summit」にあわせ、「SCPセミナー」を開催。マイクロソフト、三菱電機などの担当者がSCPの仕組みと現状を語った。


10月の「CEATEC JAPAN」でも展示されていたデモシステム。無線LANカードを挿したPDAで照明を操作する

 SCPは、室内照明や時計、コーヒーメーカーなど、ネットワーク化にコストをかけられないデバイスを想定して開発されたシンプルなホームネットワーク規格だ。デバイス自体はTCP/IPスタックを持たないが、UPnP/SCPブリッジを介してUPnPネットワークに接続することで、アプリケーションレベルでは1つのネットワークとして扱える。

 「UPnPは、“枯れた”IP技術を使うメリットがあるが、それなりのリソースを要求する。照明やコーヒーメーカーにCPUやメモリを載せるのは現実的ではない」(マイクロソフトWindows eHomeグループビジネスディベロップメントマネジャーの川内雅彦氏)。

 SCPデバイス側に必要なのは、8ビットクラスのプロセッサと512バイト(最小)のシリアルEEPROM、そしてイスラエルITRAN Communicationsの電灯線ネットワークチップ「IT800」だ。「5ドル程度の追加コストで家電製品をネットワーク対応にすることが当面の目標だ」。

 三菱電機は、自社の16ビットマイコン「M16C」にSCPを移植し、IT800を統合した「M306S」を開発。評価ボードを使ったデモンストレーションを「CEATEC JAPAN 2002」などで披露している。M306Sは、今年度末の量産出荷が開始される予定だ。


デジタルストリームが開発したSCP対応のDVDプレーヤー。PCで操作できる


リモコンを模した操作画面。「開発は比較的容易だった」と同社

SCPの仕組み

 SCPは、デバイスモデルの記述方法にUPnPと同じXMLを採用しており、UPnPネットワーク内のPCやPDAからは、UPnPデバイスとして扱うことができる。例えば、無線LANカードを接続したノートPCやPDAを照明のリモコンとして使う。外出先からインターネット経由でエアコンを動かし、帰宅時には部屋が暖まっているというような使い方も可能だ。


ホームネットワーク内にあるパソコンはSCPデバイスの照明器具をUPnPデバイスとして認識している

 ただし、SCP自体はシンプルな構造であり、実際の動作はUPnPとは大きく異なる。まず、SCPはIPベースではないため、UPnPのようにDHCPを使ったIPアドレス取得は行わない。その代わり、ブリッジにASA(Address Space Arbitrator:アドレス空間調停)と呼ばれるDHCPに似た機能を実装する。

 ASAは論理ネットワークIDを自動生成し、デバイス側が通知してきた情報(予めデバイスメーカーが割り当てたノードID)と合わせてユニークなアドレスを生成し、デバイスに付与する。アドレスはSCPデバイスのEEPROMに「記憶」され、例え停電があってもデバイスは決められた論理ネットワークに復帰できる。

 ネットワークに参加したSCPデバイスを利用するには、事前に人の手による「ルート」設定の作業が必要だ。ルート設定を一言でいえば、デバイス同士の関係を構築する作業。UPnPとの親和性が高いSCPだが、そのセットアップはまだ「プラグ&プレイ」とは言い難い。

 ルートには、片方向と双方向の設定があり、例えば照明とスイッチなら片方向でいい。照明側がスイッチの状態を知るため、“プロパティの購読を申し込む”(状態に変化があったら通知してもらう)という設定を行う。

 こうしておけば、スイッチが入る(=プロパティに変化が生じる)とスイッチ側はそれを照明側に通知し(イベント通知)、照明が点灯する(アクションを起こす)。照明のステータス表示が可能な双方向リモコンをスイッチとして使う場合は、双方向のルート設定が必要になる。


ルート設定のデモ

 ルートは1対多の設定も可能だ。1台の時計を「マスタークロック」として、エアコンやコーヒーメーカーとルートを設定しておく。すると「6時45分にエアコンとコーヒーメーカーが動き出し、7時になったら目覚ましが鳴るといったスケジュールが可能になる。起きた時には部屋は暖かく、モーニングコーヒーの準備もできている」(川内氏)。


シミュレーターによる「マスタークロック」のデモ。6時45分にエアコンとコーヒーメーカーが動き出すが、ユーザーはあと15分寝ていられる

 ルート設定ツールは、現在のところマイクロソフトの開発キットに含まれるWindows XP用のアプリケーションのみ。開発者向けということもあり、見た目はかなりシンプルだ。「将来的には、簡単なGUIやウィザード形式のセットアップツールが出てくるだろう」。

 もっとも、これではターゲットユーザーがPCユーザーに限られてしまい、家電ユースを狙う三菱電機には少々具合が悪い。上記の通り、アドレス取得とルートが終わっていれば、SCPの家電同士はピア・ツー・ピアで動作可能だ。そこで、PCのない環境にも導入できるよう、「導入時に専門技能を持つ業者がルート設定を行う形を想定している」(三菱電機システムLSI事業化推進センターの古村高氏)という。

年内にも業界団体設立へ

 開発キットの出荷や三菱電機の対応チップ発表により、徐々に離陸体制が整ってきたSCP。だが、新しいホームネットワーク規格にはデバイス間の相互接続検証が不可欠だ。

 セミナーに同席したデジタルストリームの青柳哲次会長はこの点に触れ、関係企業各社によるコンソーシアムを設立して検証作業を行うことを明らかにした。マイクロソフトをはじめ、三菱電機、松下電工、デジタルストリームなどが中心となり、参加企業を集める予定だという。

 「使い勝手を向上させる要件やデバイス開発側の要望などをまとめ、またユーザーの不利益にならないよう、互換性の検証を行う機関が必要だ。具体的な内容は今後の検討になるが、スピードを重視して年内にもコンソーシアムを立ち上げたい」(青柳氏)。

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関連リンク
▼ ITRAN
▼ 米MicrosoftのSCP関連ページ
▼ 三菱電機

[芹澤隆徳, ITmedia]

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