連載 2002年11月15日 04:25 AM 更新

Streaming Now!〜流れをつかめ!
「STBの世界」はストリーミングにどう影響する?

Yahoo!BBがとうとう放送サービスを始める。テレビを使い、ネット経由でコンテンツを配信する「STB接続の世界」は、ストリーミング業界にどういう影響を与えるのだろうか?

 Yahoo!BBがとうとう放送サービスを始める(記事参照)。テレビを使い、ネット経由でコンテンツを配信するという時代が、ようやく到達しようとしているのだ。この「STB接続の世界」は、はたしてストリーミング業界にどういう影響を与えるのだろうか?

 ユーザーの立場として単純に考えれば、「STBによってテレビでストリーミング映像が見られる」というのは喜ばしいことである。トップバッターとなった「BBケーブルTV」を参考に、STB接続の世界のどこがよいのか、考えてみよう。

 まず、PCでのインターネット・ストリーミングと比較すると、

・既存のテレビでコンテンツが見られる
・PCの知識がいらない
・クローズドなネットワーク経由なので、品質が安定する
・ソフトウェアアップデートの心配(?)がいらない

 ということになるだろう。ユーザーは、じっくりと落ち着いて、受動的にコンテンツを見ることができるというわけだ。

 次に、BBケーブルTVと従来のCATV放送とを比較してみよう。

・オンデマンド配信があるから時間を気にしなくて済む

 同社がインタラクティビティ性を抑えた「テレビ型」を指向している以上、本質的にはここに尽きるだろう。

テレビはテレビ、PCはPC

 では、BBケーブルTVがSTB接続の世界で何を得ようとしているのか? いろいろなメリットがあるわけだが、1番の目的は、やはりユーザー数を獲得することである。そこで「ユーザー獲得のための魅力的なコンテンツを集めよう!」ということになる。

 そこで集まるものは、メジャーなタレントによるコンテンツ、地上波放送にはないスポーツなどになるだろうか。ユーザーから見ると、「アレ? オンデマンドだということ以外では、普通のCATVとそんなにかわんないじゃん?」ということになる。

 それはそれでいいのである。普通の人にとっては、映像データがどんな経路で家庭まで流れているかなんて関係ない。IPだろうが電波だろうが、テレビはテレビなのだ。STB接続の世界は、そのことを人々に再認識させるインフラなのかもしれないという気がするのだ(ただ、これに関しては後述する理由で「今のところ」とことわっておこう)。

PCでのストリーミングが変わる?

 もし、上記の私の考えが当たっているとすれば、このSTB接続の世界は、実は逆にPC+インターネットの良さも引き出してくれる可能性が見えてくる。ここでは、従来のストリーミングに対する否定的な意見こそがヒントになる。

・「小さな画面でコンテンツをチマチマと見るのがダメ」
→ひょっとするとチマチマと見ているからこそ“ながら作業”ができるのでは?

・「インタラクティブ性がうざったい」
→芸術作品じゃなければ、機能を重視したコンテンツというのもあり得るんじゃないか?

・「家族そろってみられない」
→アダルト系のコンテンツだったら、PCでひっそりと見たくないか?

結論:将来はこうなる!(なんて言えません……)

 こう考えていくと、業界関係者がしっかりと違いを認識していければ、STB接続の配信と従来のストリーミング配信は「美しい棲み分け」ができるような気がするのだ。

 例えば……

 「PCにおいては、映像だけでなく、テキストなどもフルに活かした『インターネット向けマルチメディア』が完成する。一方で、STB型のネット配信では、テレビの隙間を狙ったコンテンツが数多く販売される。これらはお互いを補完するメディアとして働く。放送局などは、どちらも研究しながら、将来の地上波デジタル放送時代に向けて、『新しいテレビ』のあり方を模索していく。結果として地上波デジタル放送は新しいテレビとしてスムーズに離陸できる」

 ……これなら美しいストーリーである。が、これは「今」の話でしかなく、しかも、無理矢理美しくした話である。PCの家電化、テレビの多様化といった流れを考えたら(そういうデバイスが数多く出現するのは決して悪いことではない)、もう、私は何も語れなくなる。

────

 ちょっと脱線してしまったが、今のところ「STB接続の世界」が成功するか失敗するか、私にはわからない。だが、この試みに注目すれば、STB型接続、従来のストリーミング配信それそれのメディアの特性をしっかりと捉えることができる、ということは言えるのではないだろうか?



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[姉歯康, ITmedia]

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