ニュース 2002年11月21日 01:37 AM 更新

NTTの考える「無線社会」とは?

“ノマディックカード”“プレゼンス確認ソフトウェア”“無線タグ”……。いくつかのキーワードから、NTTが考える次世代の無線ネットワーク社会が見えてきた

 街には無線ネットワークがあふれ、人々は「ノマディックカード」を利用して仕事をする。友人間で連絡を取り合うには「プレゼンス確認ソフトウェア」を用い、多目的な「無線タグ」が健康管理などに役立てられる……。

 11月21日、ビッグサイトで開催中の「情報家電産業総合会議」で、NTT情報流通プラットフォーム研究所の次世代コミュニケーション基盤プロジェクト担当部長、後藤厚宏工学博士が登場。NTTの想定する“次世代ネットワーク社会”を描いてみせるとともに、それに対するNTTグループの関わり方を話した。

「ノマディックカード」で簡単VPN接続

 後藤氏は、各社が公衆無線LANサービスを提供している現状を振り返り、今でも多少は無線ネットワークインフラを活用できる社会になりつつあると話す。たとえば企業ユーザーが、外出先から自社イントラネット環境にVPN接続して仕事するといった例も、見られるようになった。

 「しかし、今の方法ではいろいろと設定をしなければならず、少々面倒くさい」(同)。

 実際にイントラネットにアクセスするまでには、使用するPCのネットワーク環境を設定し、トンネリング機能や暗号化機能を備えたソフトウェアをインストールし、ワンタイムパスワードを発行するハードウェアトークンを用意し……といった作業が必要になる。これでは、手間がかかりすぎるという。

 同氏が紹介したのは、NTT情報流通プラットフォーム研究所が試作した「ノマディックカード」だ。これは、ノートPCに挿すだけで上記の作業を自動化してくれる、という便利な端末。カード内にはユーザーのID情報、およびIPSecなど必要なソフトウェアが内蔵されている。


ノマディクカードのプロトタイプ(右)。「もし製品化するとすれば、端末メーカーなどと提携するかたちになるのでは」(後藤氏)。

 利用時は、他人が使用できないように各自で4桁のパスワードなどを設定することなどが想定される。万一、カードをなくした時のために、バックアップデータをとってカードを再発行するようなことも考えられるという。

「プレゼンス確認ソフト」で相手の状況を把握

 ネットワークインフラの整備に伴い、ユーザーは携帯電話や無線LAN、有線ネットワークなど各種のアクセス網を使い分けることになる。同研究所が、こうした状況で有効活用できると考えるのが、「Field Cast」技術を用いたプレゼンス管理だ。

 Field Cast技術では、ユーザーはあらかじめ自分の携帯電話、PDA、デスクトップPCなどのネットワークデバイスを、「プレゼンスエンジン」に登録する。その上で、専用ソフトウェアと組み合わせることで“今、このユーザーの携帯電話はネットワーク接続しているが、無線LAN端末はオフラインだ”などの状況が把握できるようになる(下イメージ図参照)。


IMライクなソフトウェアインタフェース

 これにより、相手と連絡を取りたいとき、どのデバイス/アプリケーションを利用するのが適切か判断できる。たとえば、携帯電話しか通信手段がない場合は文字チャットのみ着信できるが、無線LANならVoIP通信も可能、といった具合だ。

「RFタグ」で子供の体調も分かる

 後藤氏はまた、NTTグループとして無線ICチップ(RFタグ)の研究も進めていると紹介。

 RFタグは日常、自動改札、万引き防止などに使われているのをよく目にするが、「暗号回路や認証回路、RAM、ROMを組み込んでいるため、単価が1000円−2万円と高くなっている」。次世代のRFタグは、ネットワークと連動し、各機能をサーバ側に移すことでシンプルな構成にする。単価も5円以下に抑え、使い捨て可能に。その際、スクリプト言語やプロトコルは国際標準化するという。

 これにより、従来なかったような、さまざまな活用法が考えられる。「たとえば、子供の体に小さなタグを貼り付けることで、体温、脈拍などの生体情報をセンシングできる。親はネットワーク経由で子供の体調を把握できる」(同)。

 ほかにも、RFタグに加速度センサを搭載し、先ほどのプレゼンスエンジンと連携させれば、「このユーザーは徒歩で移動中」「このユーザーは止まっている」などの行動状況も分かる。センサ検出情報に応じて、テキスト/音声など適切な形式のコンテンツをプッシュ配信することもできるという。


開発中のRFタグ。大きさは500円玉と同じくらい

 なお、これらの技術はいずれも研究段階で、商用サービス提供の見通しはたっていない。「ノマディックカードなども、論文などで登場しているだけで、特に製品化の予定はない」(後藤氏)という。

 技術がいつ頃に実用化されるか気になるところだが、後藤氏は「ネットワークインフラの整備に加え、IPv6の本格化も必要になる」と指摘。あと1年以上はかかるのでは、と話した。

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▼ NTT情報流通プラットフォーム研究所

[杉浦正武, ITmedia]

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