パイオニアが模索する“デジタルライブラリ”の姿パイオニアは、ネットワークAV家電「DigitalLibrary」を来春にも北米で発売する。PCのHDDから動画や音楽を移し、宅内のライブラリを作るというものだ
ネットワーク家電と呼ばれる製品カテゴリには、今のところ決まった形がない。AV機器も例外ではなく、EPGを搭載したHDDレコーダーからAVサーバをうたうものまで、各社はそれぞれネット家電の姿と利用法を模索している。そんな状況のなか、CATV用のSTBで世界的に高いシェアを持つパイオニアが提案しているのが「DigitalLibrary」だ。
DigitalLibraryは、1月の「Consumer Electronics Show」(CES)で発表された「インターネットのためのセットトップボックス」(パイオニアホームエンタテインメントカンパニーAV事業統括部の王丸克彦氏)。国内でも10月の「CEATEC JAPAN 2002」に展示され、Coronaこと「Windows Media 9」に対応予定のSTBとして注目を集めた。 現在は、2003年3月の北米出荷を目指し、米国内で実証実験を行っている段階だ。王丸氏は、先週開催された「情報家電産業総合会議」の席上、実験の経過を交えてDigitalLibraryのコンセプトと機能を語った。
主な機能は4つ。デジタルカメラなどの画像再生、MPEG-2/WMT対応の動画再生、MP-3音楽の再生、そして提携サイトを使った音楽ダウンロード。サーバ本体にCDドライブがあり、ここでCDをリッピングすることも可能だ。画像や動画はPCで取得したものをDigitalLibraryに内蔵されたHDD(現在は80Gバイト)にコピーし、イーサネット経由で各部屋に配信する。各種のコンテンツをサーバで一括管理し、“ライブラリ化”する仕組みだ。 「PCの中にある音楽や動画をサーバに取り込み、各部屋に配信するのが目的だ。ただし、著作権保護の観点からPCにコンテンツを送信する機能はない」(王丸氏)。 DigitalLibraryでダウンロードした楽曲をPCに送信できると、PC上でコピーされる恐れがある。PCユーザーは物足りない印象も受けるが、製品が出荷できるかどうかを左右するだけに、この著作権管理は各家電メーカーが最も頭を悩ませる部分だ。パイオニアでは、開発前に「パイオニア ネットワーク憲章」(案)を策定し、その筆頭に「著作権保護を全面に打ち出し、コンテンツサイドの支持を得る」と謳っているという。
同社は、今年9月から2003年1月までの予定で「DigitalLibrary」のフィールドテストを北米で行っている。モニターは公募によって集めた一般家庭80世帯。しかし王丸氏によると、機材を持ち込み、すぐに利用できたのは「ほんの数件だった」という。 「ブロードバンド環境があることを前提に募集をかけたにも関わらず、実は通信事業者と未契約であったケースもあり、(ユーザーと)認識に大きなギャップを感じた」。 民生機として販売する以上、スイッチ1つですぐに起動し、接続できなければならない。PCであれば、状況に応じて設定などを変更することも容易だが、民生機ではそうはいかない。個々の環境に左右され、またユーザーのスキルにも差がある。これを吸収するのがネット家電の難しいところだ。また、検証ではルータを経由すると繋がらない、といった技術的な問題も報告されたという。
現在のところ、パイオニアが国内でDigitalLibraryを販売する予定はない。理由として王丸氏は、実証実験の進捗状況にくわえ、国内に音楽や映像を提供できる魅力的なコンテンツサイトがないこと(無料サイト)。そして国内のコンテンツホルダーが納得する形の著作権保護や認証・課金システムの準備ができていない点を挙げている。 もちろん、将来的にDigitalLibraryを国内投入することについて、パイオニアが否定的な意見を出したことはない。ただし、それには海外での成功が前提になりそうだ。「まずは、北米でDigitalLibraryを3月に発売し、突破口を開きたい」(王丸氏)。 関連記事 特集:CEATEC JAPAN 2002 関連リンク パイオニア [芹澤隆徳, ITmedia] Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved. モバイルショップ
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