ニュース 2002年12月5日 11:23 PM 更新

ブロードバンドを密かにうかがうNHK

民放テレビ局がブロードバンドの事業展開を試みる一方で、放送業界の“巨人”も虎視眈々とチャンスをうかがっているようだ

 民放3局のブロードバンド配信実験を例に出すまでもなく(記事参照)、放送業界のブロードバンドに対する関心は高まりつつある。公共放送として強力なコンテンツを揃える日本放送協会(NHK)も、通信インフラとの距離のとり方を検討しているようす。

 12月5日の「Streaming Media Asia 2002」では、NHK総合企画室兼マルチメディア局副部長、元橋圭哉氏が登場。同社のブロードバンドインフラに対する姿勢を明らかにした。


NHKの元橋氏。ブロードバンド事業の積極展開を主張するゆえに「放送業界から嫌われ、ブロードバンド業界からも煙たがられている」と笑う

 元橋氏は、基本的にブロードバンド事業は「やりたいのはやまやまだが、残念ながらできないでいる」と説明する。

 「たかだかニュース配信を行っただけで、『NHKの肥大化ではないか』とご指摘いただく。研究はしているが、表に見えるかたちではブロードバンド事業に取り組んでいない」。

 もっとも同社は、2000年7月に、米大統領選挙の民主共和両党の党大会を300Kbpsでストミーミング配信している。2001年には、BSデジタル放送の宣伝目的で、ハイビジョン番組のスポット素材を500K/1Mbpsで配信。さらに、2002年10月には「アリー・myラブ5」でアフレコを担当する俳優たちの記者発表(NHKのページ参照)を300Kbps/1Mbpsで配信するなど、各種取り組みを進めている。アリー・myラブ5の記者発表では、技術研究所の開発した電子透かしを活用したという。

 同氏はまた、光波長多重により、1本の光ファイバーに放送用のデータと通信用のデータを乗せる技術に興味があるようす。

 光ファイバー内に多重した波長のうち、1波長を下り専用として“CATV放送的”に利用すれば、HDTV110チャンネルぶんのデータを伝送することが可能。別の波長を上下双方向の通信用に利用すれば、1本のファイバー内で放送と通信の融合が実現するというわけだ。同技術は、NTTとスカイパーフェクト・コミュニケーションズが実証実験を行っている(記事参照)。

 同氏は、アクセス系の光波長多重が普及すれば、放送の補完的な伝送路として可能性が広がるとコメント。「この方式なら“放送”として扱えるので、権利処理も比較的楽。ビル影にある住宅の難視聴対策としても有効だろう」。

 同氏はもはや、放送と通信のどちらが“勝つ”とか“負ける”とか言ってる場合ではない、として、放送と通信が共存できる道を模索すべきと提言した。

IT戦略会議は“非PC”にシフトを

 元橋氏は講演中、IT戦略会議が進めるブロードバンド普及構想にも触れて「国として立派、大切なこと」と話す。

 「ただし官僚の方には、これは“IT戦略会議”じゃなく“IP戦略会議”じゃないかと申し上げている」とチクリ。テレビを中心に考える放送業界の人間としては、インターネットに接続されたPCばかりがもてはやされるのには不満だったようだ。

 「そんなことを言い続けていたら、IT戦略本部が来年5−6月に向け、e-Japan基本戦略を見なおす方針を発表した」(IT戦略本部のホームページ参照)。TV、モバイル、情報家電など、日本の得意分野を活かす方向にブロードバンド戦略にかじが取られているとして、これを歓迎した。

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▼ NHKオンライン

[杉浦正武, ITmedia]

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