ニュース 2002年12月13日 04:18 AM 更新

そもそもホームサーバって……?

なんとなく「こんなキカイ」というイメージはあるものの、具体的に「ホームサーバって何?」という疑問に対するストレートな答えというのは、なかなかない。今回は、ホームサーバとは何なのか? について話をしてみたい

 先週、先々週と紹介した富士通ファミリーネットワークステーションの例を挙げるまでもなく、最近は“ホームサーバ”と呼ばれる新しいジャンルの製品が各社から発売されている。

 その数は、今後も増えていく見込みだ。さらに富士通とソニーは、PCにホームサーバとしての機能を組み込んでいると宣伝。しかし、なんとなく「こんなキカイ」というイメージはあるものの、具体的に「そもそもホームサーバって何だろう?」という疑問に対するストレートな答えというのは、なかなか見つからない。なぜならホームサーバがどのようなものなのか、その定義は非常に曖昧なものだからだ。

 ホームサーバが何なのかは、これから市場が熟成するに従って決まっていくものになるだろう。しかし“雲をつかむようなもの”というほどに形のないもの、というわけでもない。今回は、ホームサーバとは何なのか? について話をしてみたい。

家庭内で機能/サービスを提供する装置

 “ホームサーバ”は特定の製品を指し示す言葉ではない。というところから出発することにしよう。ホームサーバは製品ジャンルを指し示す言葉だ。従って、狭い範囲を示す言葉でホームサーバを定義してしまうと、その可能性を見過ごしてしまう。敢えて説明的に書けば“家庭内ネットワークを通じて機能やサービスを提供する”ジャンルのネットワーク装置がホームサーバだ。

 ある雑誌の特集では、ホームサーバを「インターネットゲートウェイ型」、「HDDレコーダー型」、「ネットワークプレーヤー型」の3つに分類していたが、僕はあえてこれに異議を唱えたい。このように特定機能を中心にした分類を行うと、ホームサーバの本質を見逃してしまうと思うからだ(そもそもネットワークプレーヤーはサーバではなく、クライアントだ)。

 では、ホームサーバが“家庭内ネットワークを通じて機能やサービスを提供する”ものだとして、それはどのような機能を指すのだろうか? この疑問に対する正確な答えはない。どのような機能やサービスをネットワーク経由で提供するかは限定されていないからだ。

 たとえば、MPEG2ビデオデータを管理/ネットワーク配信する機能は、間違いなくホームサーバの機能だし、音楽配信やライブテレビ放送のネットワークへの中継機能、ファイルサーバ、Webサーバ、カレンダサーバ、掲示板、ルータなどなど、すべてネットワークを通じて利用する機能やサービスを提供していれば、それはホームサーバなのだ。テクノロジのバックボーンは必ずしも家庭向けではなく、既存のサーバと呼ばれるものが持つ機能も多い。しかし、家庭内ネットワークで楽しく、簡単に利用できるようになっていれば、それはホームサーバといっていいだろう。

 実際のホームサーバは、これらの機能のうち必要と考えられるものを組み合わせ、ひとつの製品としてくみ上げられたものだ。そしてそれは、1カ所に固まっている必要はない。

物理的な配置に左右されない

 ホームサーバには、これまでPCがなければ利用できなかった機能を、PCなしでも利用できるようにするという側面がある。ファイル/プリンタの共有やビデオサーバ、音楽サーバなどは、PCさえあればこれまでにもネットワークの中で利用できた。たとえば、本連載の中で紹介したオンキヨー「NC-500」TurtleBeach「AudioTron」などは、PCが動いていればネットワークから音楽を受信できる。しかし、音楽配信のサービスを受けるためにPCの電源が入っていなければならない。ホームサーバさえあれば、そうした問題もないというわけだ。もちろん、PCが起動していない中で、PCの代わりをする機能を持つデバイスはホームサーバの一種に違いない。


米TurtleBeachの「AudioTron」。AVラックサイズで独自のディスプレイも装備したネットワークオーディオプレーヤーだ


オンキヨーの「NC-500」同社が開発したネットワークプロトコル「Net-Tune」に対応したホームネットワークオーディオ製品

 だが、視点を変えるとネットワーク経由で機能が利用できるが故に、物理的な配置に左右されないことこそが、ホームネットワークを構築する最大のメリットではないだろうか。ストレージやプリンタ、テレビチューナーなどの資源を、ネットワークを通じて利用できるということは、それらの資源をクライアント側が持つ必要がないことを意味している。

 テレビチューナーのないPCやPDAでテレビを見たり、ハードディスクを持たないソニー「RoomLink」のようなデバイスがビデオ/オーディオのハードディスクレコーディング機能を活用できたり、インターネットへの直接の出口を持たない機器がゲートウェイを通じてインターネットにアクセスできるのも、そこにネットワーク経由で機能を提供するものがあるからこそだ。

 そして実際の配置に左右されないということは、“ホームサーバ”に統合される機能に決まった形がないことも意味している。たとえば現在発売されている、あるいは発売が予定されているホームサーバには、例外なくハードディスクが搭載されており、交換や増設をサポートしていない。しかし、ハードディスク……すなわちストレージは(速度や遅延などの問題は別として)内蔵である必要性はない。たとえばUniversal Plug&Playに対応したネットワークエリアストレージ(NAS)デバイスがあれば、家庭内ネットワークの任意の場所にデバイスをプラグしておけば、UPnPストレージに対応するすべての機器が、そのデバイスが持つディスクスペースを活用できる。

たとえばゲートウェイひとつ取り上げても

 もう少し身近な例を挙げてみよう。上のNASでの例は、そのままインターネットへのゲートウェイにも当てはまる。UPnP対応ゲートウェイ(ルータ)は、UPnP対応クライアントからの要求でインターネットと家庭内LANの仲介を、アプリケーションが望む通りに行ってくれるため、きちんと動作すればゲートウェイの存在を意識しなくても良くなる。たとえば(セキュリティ上の配慮からはそうなっていないが)、PC上で動作しているWebサーバソフトがUPnPゲートウェイに対応していれば、サーバ機能が起動された時点でゲートウェイを探し、必要なTCPポートをフォワードするようにゲートウェイに対して指示を出しておけばいい。

 先週、富士通のファミリーネットワークステーションが、インターネットへのゲートウェイとしてしか動作しないと書いた。これはインターネット側からサーバを利用する場合の機能を実現するためと思われるが、UPnPルータとともに利用した場合の相互運用性が高ければ、別の場所にあるゲートウェイとネットワークで繋がっていればいいだけだ。

 このような、ネットワークを通じて相互の機能を運用していくという考え方は、今後とても重要になるだろう。たとえば今後登場するあるホームサーバは、ハードディスクビデオレコーダーとしての機能に加え、ファイルサーバやインターネット向けのアプリケーションサーバの機能も備えている。しかし、インターネットと家庭内ネットワークの両方にサービスを提供するため、必ずインターネットゲートウェイとして動作しなければならない設計になっていた。

 実際に利用する場合は、ハードディスクビデオレコーダーを利用する場所(おそらく大型テレビが置かれている部屋)に、インターネットへのゲートウェイがあるとは限らない。ホームサーバのハードウェアとしての実態は省電力の小型コンピュータなだけに、ソフトウェアによって機能をいくらでも増やせてしまう。それ自身は悪いことではないが、単に統合するだけでなく、ネットワークを通じて他のホームサーバ的機能と有機的に結びつけなければ柔軟性を失ってしまう。

最終的には

 まだホームサーバ市場は、立ち上がってもいない段階だ。実際にユーザーがどのようなホームサーバを求めているのか、そしてそれにどれほどの“バリュー”を提供できるかも、ハッキリと実態をつかめていないというのが、メーカー側の本音だろう。

 ネットワーク上でのサービスは、ネットワーク透過で統合できるようにアプリケーションを組めば、いくらでも機能を統合あるいは分割できる。しかし、実際にはいくつかの形態へと収斂し、その中から選択する形になっていくのではないだろうか。ただし、ゲートウェイ機能とストレージ機能は、ホームネットワーク全体を強化するために単体の製品としても流通するはずだ(もちろん、すべてのデバイスがプラグするだけで動作することが前提だが)。

 中でもUPnP対応の家庭向けNASデバイスは重要なものになるだろう。この手のデバイスが一般的になれば、たとえばハードディスクビデオレコーダーの中にあるハードディスクが足りなくなったとき、“レコーダ側から”特定のビデオデータを別のNASデバイスやNASサーバが動作しているPCに掃き出すことができる。または、容量に余裕のあるストレージを探して、そこに録画するといった機能も提供できる。

 これらが実用的な機能になるかどうかは、ネットワークにプラグした時にどれだけ機能同士をシームレスに結びつけられるかにかかっている。第1世代からすべてを望むのは難しいが、ホームサーバに興味を持つ読者は、今後、ネットワークを通じた機能の統合度について注意深く行く末を見ていくといいだろう。単に表面上の機能を見ているだけでは、家庭内ネットワークが成長していく課程で、すぐに使い物にならなくなった……なんて話になりかねない。

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[本田雅一, ITmedia]

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