ニュース	2002年12月17日　11:17 PM 更新

「ソフト電池」ってなに？――ソフト販売に新工夫

ソフト電池という、ユニークな名前のシステムが一部業界で活躍し始めている。ソフトウェア、および映像コンテンツを従量課金で販売できるというが、その仕組みとは？

　「ソフト電池」という、ユニークな名前のシステムがソフトウェア販売で活躍し始めた。東京ケーブルネットワークは12月6日から、ソフト電池を利用したPCソフト、コンテンツのダウンロードサービスを開始した。

　ソフト電池とは、ソフトウェアの使用許諾を管理するシステム。ソフト電池に対応したソフトウェアは、利用期間や利用時間に応じて“電池が減る”ため、ユーザーがこれを使い切った場合、電池だけ改めて購入し“充電”する必要がある。

　これにより、ソフトウェアベンダーは売り切りでなく、従量課金でソフトウェアを販売できる。一定量の電池をセットにして「試用版」をダウンロードしてもらうことも可能。ソフト電池なしではソフトを使えないため、“違法コピーによる使い回し”の対策にもなる。

技術上のポイントは？

　ソフト電池の技術上の要点は、主に「ソフト電池マネージャ」「ソフト電池対応コード」の2つ。

　ユーザーはまず、クライアントPCにソフト電池マネージャをインストールする必要がある。これは3Mバイト弱のプログラムファイル（こちらを参照）で、“ソフト電池発行サーバ”と通信を行うために必要だ。

　次に、“ソフト電池対応ソフト”をダウンロードする。既存ソフトをソフト電池に対応させるには、ソースコードに10−100行程度を書き加えるだけでよい。このソフト電池対応コードが、前述のソフト電池マネージャとローカル上でデータをやり取りして、ソフトの利用状況を把握する。

　このように、電池管理の仕組みを「対応コード」と「管理マネージャ」の2つのモジュールに分けたのがポイント。ソフト電池発行サーバとは、ソフト電池を追加購入する際のみ通信すればよく、オフライン時のソフト利用も管理できる。「この仕組みに関しては、特許もおさえてある」（パルティオソフト）という。

映像コンテンツに応用も？

　ソフト電池を採用した東京ケーブルネットワークの通信事業推進室室長、遠藤昌男氏は、ソフト電池をさまざまなジャンルのソフトに利用したいと話す。

左から、パルティオソフトのシステム開発部部長、山本啓一氏、東京ケーブルネットワークの遠藤昌男氏

　「よく言われるのは、複数人数が同時参加するネットワーク対戦ゲームソフトに、従量課金が向いているのではないかということ」（遠藤氏）。ゲームセンターのコインのように、ソフト電池を消費する利用を考えているようだ。

　遠藤氏はまた、「ソフト電池を、ブロードバンド映像コンテンツに利用することも視野に入っている」と話す。

　パルティオソフトの山本啓一氏によれば、「技術上は、WMP（Windows Media Player）に適用できることを確認している」。WMPが対応するファイル形式として“ソフト電池版”のファイル形式を用意すれば、従量課金で映像を視聴させられるという。

　もっとも、映像コンテンツの視聴制限といえば、WMT（Windows Media Technologies）のDRM（Digital Rights management）技術で既に実現されている。同技術では、ダウンロードコンテンツを、一定時間経過後に視聴不可能にするなどの処理が可能だ。

　パルティオソフトの山本氏は、ソフト電池がWMTより優れる点として、運用の柔軟性を挙げる。ソフト電池は、利用期間／利用時間／特定のコマンド入力回数などに応じて利用を制限できる。また、ソフト電池だけをPC間で移動させることも可能だ。

　さらに、複数のコンテンツに対して、ソフト電池単位で課金することもできる。

　たとえば「アイドルのコンサート」を見ると電池を3消費し、「サッカー欧州リーグ」を見ると電池を5消費するといった具合。こうなると、ソフト電池は一種の課金インフラのようになる。

　とはいえ、こうしたサービスは多くの事業者に採用されることが普及の条件。山本氏は、現在大手ISPと交渉を進めているほか、未発表だが採用を予定するISPもあると話す。今年12月10日には、日本IBMがClub IBM上での採用を発表した。対応を表明するソフトウェアベンダーも、徐々に増えてきている、とした。

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関連リンク
そふと便利蔵（ソフト電池採用サイト）

[杉浦正武, ITmedia]

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