ニュース 2002年12月25日 09:16 PM 更新

年末企画
「IP電話」ゆく年くる年 〜ISPに聞く(1/2)

2002年は、まさに「IP電話元年」と位置付けるにふさわしい年だった。IP電話の現状と今後を、BIGLOBE、So-net、Yahoo! BBの3つのISPに聞いた

 2002年は、「IP電話元年」と位置付けるにふさわしい年だった。4月にサービスを開始したBB Phoneの登場に端を発し、総務省の「050」番号付与を追い風に、各ISPとも次々と新しいIP電話の試験サービスを開始した。ISP間の提携交渉の話題も憶測を呼んで、通信業界をにぎわせた。

予想を上回るIP電話サービスの浸透度

 IP電話サービスは、昨年の段階でも既にいくつかのサービスが存在していた。たとえば、インターネット経由の電話なら、@niftyやBIGLOBEなどのISPがそれぞれ「Go2Call」「dialpadインターネット電話」のようにPCインタフェースから加入者電話に発信できるサービスを提供していたし、NTT東日本が地域IP網を利用して提供する「フレッツ・コネクト」に代表される、PC to PCで通話するサービス、またNTT-MEの「i-See」のように、LANケーブルに接続するIP電話専用端末も発表されていた。

 しかし、当時からIP電話には、いくつかの弱点が指摘されていた。1つが、一般の加入者電話からの着信が行えないこと。また、形態によっては利用の都度PCを立ち上げなければならず、手軽に利用できないという点などだ(PC to PC、PC to PSTN)。

 これを解決したのが、Yahoo! BBが提供するBB Phoneに代表される、「加入者電話にVoIPアダプタを接続するIP電話」だった。この形式のメリットは、通常の市外局番を利用できること。着信時、および対携帯電話発信時は、通常の加入者電話網を経由することで、加入者電話と変わらない操作感でIP電話を利用することを可能にした。

 また、VoIPアダプタの電源さえ入っていれば「通話の度にPCを立ち上げる」といった手間も必要ない。BB Phoneではさらに、7.5円/3分という従来のどのIP電話サービスより低廉な価格を打ち出し、サービスの魅力を高めた。これにより、BB Phoneは利用可能回線数ベースで100万を突破(記事参照)。IP電話市場の牽引役となった。

 So-netのネットワークサービスプラッツサービス企画セクション、早苗智幸氏は、年初からIP電話サービスの市場リサーチを行っていたと話す。しかし、「ここまでIP電話が普及するとは、個人的には予想していなかった」と率直なコメント。6−7月頃には、もはや「IP電話はISPにとって基本サービス」との方針を固めるに至ったという。

 現在、So-netはホームページ上で、「So-netフォン」の試験サービスの受け付けを行っている(So-netホームページ参照)。サービスではBB Phone同様、VoIPアダプタを加入者電話に接続する形態を採用。アッカ・ネットワークスの8M/12Mユーザーなど、一部接続検証が済んでいるサービス利用者に関してはVoIPアダプタ・モデム一体型端末も提供している。

 BIGLOBEも同様に、12月から固定電話+VoIPターミナルアダプタタイプの試験サービスを開始している(記事参照)。同社は上述のとおり、PCにヘッドセットなどを接続して通話する形式の「dialpadインターネット電話」を提供していた。しかし、現在はVoIPアダプタ形式を中心に、サービスを展開する考えのようだ。


BIGLOBEが試験サービスで提供している、ADSLモデム一体型VoIPアダプタ(右)。左は通常の加入者電話端末

 「ヘッドセットを用いての通話は、やはり一般的ではないし、最初からそれは分かっていた。これからは、固定電話端末を利用したIP電話サービスに力を入れる」(NECソリューションズパーソナルBIGLOBEサービス事業本部、BIGLOBEサービス事業部部長代理の古関義幸氏)。

「合従連衡」の成否は……

 利用者数で先行したYahoo! BBを追随すべく、秋頃から各ISPの提携交渉が表面化してきた。11月14日にはSo-net、@nifty、OCNも相互接続を発表(記事参照)したほか、翌15日にはBIGLOBE、hi-ho、KDDI、ODNを中心とするメガコンソーシアムがIP電話サービス相互接続を発表。11月27日にはイー・アクセスのADSLユーザーを対象とする、12社連合も結成された(記事参照)。

 相互接続のメリットは、各ISP会員間での無料通話が実現すること。たとえばSo-net、@nifty、OCN連合なら、ブロードバンド会員総数130万人をうたっている。こうしたユーザー間で無料通話が実現するようなら、先行するYahoo! BBにとっても脅威となることは間違いない。


手をとりあうSo-net、@nifty、OCN(11月14日の記事より)。左からNTTコミュニケーションズコンシューマ&オフィス事業部の前田幸一部長、ニフティのシステム事業部長の加藤雄一常務、ソニーコミュニケーションネットワークCOOの近藤幸直専務

 ISP間の提携に、当初から最も積極的な企業の1つが、BIGLOBEだった。同社は今年4月10日に行われた事業説明会で、「Yahoo! BBのようにクローズドなネットワークサービスを提供するのでなく、複数ISP間でネットワークを共有する方向性を打ち出していた(記事参照)。この姿勢はIP電話事業に関しても同様で、古関氏は「複数事業者と組み、網を仲介してエンドユーザーに届ける、というポリシーで、1年も前からやってきた」(古関氏)と話す。

 ただし、BIGLOBEの場合は、多くの事業者と提携交渉を進めるがゆえの悩みもある。現状、手を組む事業者の組み合わせで見ても、少なくとも3つのIP電話のサービスメニューが用意されることになる。そして、その料金体系は「複数になる可能性はある。キャリアという相手があってのことなので、こちらがコントロールできる話ではない」。

 つまり、同じBIGLOBEユーザー同士でも、サービスメニューが違えば有料通話になる、という可能性がないと言い切れない。BIGLOBE古関氏は「この点は、一番の争点になっている」と包み隠さず話す。

 「もちろん、(会員同士の通話は)無料になるのが当たり前だし、そうする方向で話を進めている。技術的な問題もない。しかし、インフラを負担するキャリアにも、キャリアの立場がある。現時点では決まっていない、としか答えられない」。

 Yahoo! BB対策である「連携」という手法が真価を発揮するには、キャリア間の合意という乗り越えなければならない壁があるといったところだろうか。

IP電話の採算性は

 各ISPが参入を続けるIP電話事業だが、その採算性はというとやや疑問も残る。

[杉浦正武, ITmedia]

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